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第2章 ドワーフの国〈イルーヴァタール〉

第23話:額作りの旅【前編】

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オリハルコンを手に入れたことにより、俺の魔法石の額作りが始まった。

集中したいから、と言われ部屋を追い出された俺たちは、ドワーフ国を散歩していた。

とはいえ、ほとんど、ロビンの付き添いみたいなものだ。

「見ろ!タクミ!美味しそうなのがあるぞ」

もう10回くらい聞いたセリフはいい加減聞き飽きた。

別の事を聞きたいよ。

かといって、俺も気になるところが無いために口出しはできなかった。

しかし、俺はとある看板に目が入った。

奴隷商、開催中

その単語に俺は無性に苛立ちを感じていた。

「なあ、ロビン。奴隷制度について教えてくれ」

奴隷とは、犯罪を犯した者やその共犯者、関係者が売り出される人の事を言うらしい。

中には無関係者もいるそうだ。人攫いによって売り出された者もいるそうだ。

酷い世界だ。

「少し見に行ってみようぜ」

見た方が分かりやすいと言ったロビンは開催へ足を運んだ。

沢山の人が賑わう中、俺達は一番後ろの方で前を見る。

目の前には沢山の人が手に縄を、首には鎖が巻かれていた。
女も男も子供も、ボロボロの状態だった。

その人たちは高値で買われたり、誰も買う人がいなかったりだった。

しかし、一際目立つ女の子が一人いた。

茶髪で、やせ細っていて、髪が荒れ伸びた様子。見た目はさほど目立たないだろう。しかし、彼女の瞳は恐怖に汚れていた。

「ロビン。いくら残っている」

「え?953G|《ギガ》残ってるぞ。ま、まさか買うのか⁉」

「ああ」

「ま、タクミのお金だし、文句はないよ」

そして、彼女の番が回ってきた。

100M|《メガ》からスタートした。俺は即座に200Mと叫ぶが、それに知らない者が500Mと叫ぶ。

「ロビン。これを売ってきてくれ」

「おう」

ロビンは守護機の部品を持たせ冒険者協会に行かせる。

俺は600Mと叫ぶ。だがすぐに700Mとかき消される。

俺は思い切って、1Gと叫ぶ。しかし即座に相手が3Gと叫び返してくる。

10Gと叫ぶも相手は2倍の20Gで打ってきやがった。

俺も負けづに25Gと叫ぶが、相手はさらに2倍の50Gで押してくる。まだまだあるとはいえ、極力、安値で買いたいものだ。

宿泊代や食費もある。旅の中ではお金は重要だ。
だから、おれは大きく出ることにした。

「100G!」

Mだと100万Mだ。結構の大金になるだろう。相手の資金も限界を迎え始めたのか110Gで打ってき始めた。

だから俺は150Gで打つ。勝っただろうか。緊張が流れる。鼓動が速くなる。

しかし、相手は200Gで打ってきた。

俺は、相手に止めを刺そうと思い2倍の値を叫ぶ。

「400G!」

しかし、ここからが本番だった。

さっきまでとは違う別のところから声響く。500Gと。

どこかの金持ちボンボンだろうか。

俺も負けずに値を上げていく。そして貴族との戦いが長く続いた結果。

落札値、950G。俺の勝ちで、なんとか今の手持ちのお金で買うことが出来た。

そして、これが最初で最後の大きな買い物だった。

俺はあの奴隷、彼女を迎えに行った。

俺は彼女の手に巻かれてある縄を解く。

そして、奴隷商人から、奴隷契約を彼女と交わした。

今日から新たな仲間が増えたのだ。
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