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14章 十四日目 走ったり揉んだり

14-6 いつものじゃれあいをする男たち

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「いてててててててて、いてえっ!」

俺の絶叫が放課後の教室に響き渡った。

「ふっふっふ。日頃の恨みを思い知れ、どうだ!」
「ぐああああああああっ!!!」

椅子に座った俺は悶絶しながら身体を左右にくねらせる。
そんな俺の足を抱え込むようにしながら、近藤が俺の足裏を揉んでいる。
いや、揉むと言うよりは押すと言ったほうが正しいだろう。
ヤツのなかなかに太い親指が、俺のかかと中央あたりをグリグリと押していた。

「やめっ、やめ! いてえっ! いてえからっ!」

俺はバタバタと身体を暴れさせるが、バスケ部で毎日鍛えている近藤は余裕で俺を抑え込み続けた。

「くっ、そっ! ぐわあああああっ!」

教室には俺たちだけではない。
何人ものクラスメイトたちが思い思いの放課後を過ごしている。
なのになぜ、こんなにも苦しんでいる俺を助けてくれないのか。
それは……。

「近藤くんたち楽しそうだね」
「まーたじゃれてるのかアイツら」
「砂川くんがお騒がせするけどごめんねって差し入れ置いていってくれたよ」
「おー、さすがスナ。気が利くよな」
「クリスピークリームいただきー」
「あっ、それ狙ってたのに!」
「はっはっはー。早いもの勝ちなのだ」
「くそー」

と、向こうは向こうで盛り上がっているからであった。

「ほれほれほれ、どうだ! 健康になれ!」
「くっ、ぐおおおっ……って、あれ? そこはなんともないや」
「な、なに!? 俺は超痛かったのに」
「よし、攻守交代だ」
「ちょ、おまっ!」

近藤の一瞬の油断を突き、俺は身体を入れ替える。
ドスンと椅子に尻もちをついた近藤の脚を抱え込み、素早く上履きと靴下を脱がせた。

「ぐああああっ!」

だがしかし、ここでダメージを受けたのはまたしても俺だった。

「く、くせえっ! なんだこれ!」
「はっはっはー。油断したな悦郎。俺の足の臭さはバスケ部一だ」
「自慢になるかー」

たとえるならばドブのニオイ。
なにをどうすればこんなニオイが熟成されるのか、それすらもわからなかった。

「今朝ドブにハマったからな余計に臭うだろ」

純粋にドブのニオイだったらしい。

「っていうか洗えよ。ドブにハマったんなら」
「洗ったよ。足は。靴下がダメだったんだ。生乾きで履いたらニオイ倍増」
「いや履くなよ。せめてちゃんと乾かしてから履けよ」
「しゃーないだろ。校則で決まってんだから」
「そのくらい大目に見てくれるだろ」
「うるさいんだよ、うちの顧問」
「あー」

赤鬼とあだ名されているバスケ部顧問の赤尾先生の顔が思い出される。
ガッチリした大柄で怒ると顔が真っ赤になる赤尾。
見た目はかなり怖いが、話してみるとざっくばらんで生徒たちからは非常に人気がある。
だがしかし、校則違反にだけは非常に厳しい。

「っていっても、この靴下なら無理に履かなくても怒らないだろ」
「赤鬼はな。でも、赤鬼の顔色伺ってそこらへんいろいろ言ってくるめんどくさい先輩がいるんだよ」
「あー」

聞いてるだけでウザくなってくる他人の部活の人間関係。
つくづくそういうのがない部活に入っていてよかったと、こういうのを聞くと思ってしまう。
っていうか、うちの部はそういうのがめんどくさいと思う人間が集まってできてるようなもんだけどな。

「というわけでそろそろ練習行くわ」
「おう。俺も部室顔出すわ」
「またな悦郎」

何事もなかったかのように俺と近藤は廊下で別れ、それぞれの部に向かっていく。
っていってもうちはそろそろ解散の時間で、部室で合流して帰るだけだけどな。
たぶん。

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