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14章 十四日目 走ったり揉んだり

14-4 いつもとほんの少しだけ違う弁当

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昼。
俺たちはいつものように机を移動して島を作り、弁当を広げていた。

「あれ? なんか悦郎の弁当ちょっといつもと違ってない?」

モグモグとコロッケを食べながら砂川が俺の弁当を覗き込んでくる。
確かに、今日の俺の弁当はいつものものとは少し違う。
ご飯の量が半分で、その分おかずの量が多いのだ。
しかも、そのおかずはタンパク質中心。
ササミを茹でたものや、ゆで卵。
そこにプラスしていつものような鶏の唐揚げや、肉団子なんかも入っている。

「ぐふふ。悦郎がトレーニングはじめたから、それに適したメニューにしたんだよね」
「あははー、実はそうじゃないんだよね」
「「え!?」」

俺と砂川の驚きの声が重なる。
てっきり食べてる俺の方もそうだと思っていた。
見ると緑青の方も、少しだけ疑問の表情を浮かべていた。
俺たちの島では、麗美だけが理解しているといった表情でいつもどおりに食事を続けていた。

「ああ、そういうことか」

ほとんど間をおかず、緑青がポンと手をうち納得したかのようにウンウンと頷いた。

「悦郎はわからないのか?」

勝手に俺の唐揚げを食べようとして俺に手を叩かれた砂川が、右手をピラピラふりながら俺に尋ねてくる。
俺はさっぱりとした梅味がつけられたササミをモグモグと咀嚼しながら、弁当のメニューがいつもと違う理由をいろいろ考えてみた。
そして、1つの結論に達する。

「ああ、そういうことか」

まるで緑青のセリフをなぞったかのように、俺も同じつぶやきを漏らしてしまった。
だが、それこそがもっともふさわしいセリフだったのだから仕方がない。
なにしろ、この理由というのは驚くほど単純だからだ。

「わかったのか、悦郎」

俺のササミをモグモグとつまみ食いしながら、砂川が尋ねてくる。
今度は俺はヤツの邪魔をしなかった。
そのかわり、ヤツのサンドイッチを一切れもらったからだ。

「理由は簡単だ。昨日からうちのかーちゃんたちが海外にでかけてる」
「……」

砂川は2切れ目のササミをモグモグと食べながら、しばし考える。
そして首を傾げて、俺に説明を求めた。

「つまり、かーちゃんとか美沙さんとかのレスラーさん用の食材が余ってるってこと」
「ああ、なるほどな」

まったく同じではないけれども、俺と緑青とほとんど同じようなつぶやきでその結論に納得する砂川。
そういえば昨夜の晩御飯も、いつもより肉多めだったような気がする。
もちろん俺の気のせいな可能性もなくはないが、たぶんやりくり上手な咲のことだ。
傷みやすいその手の食材からどんどん消費してしまおうという心づもりなのだろう。

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