上 下
4 / 64

【第4話】ウサギが襲ってくる?

しおりを挟む
 犬のような唸り声をあげて、牙をむき出しに睨んでくるウサギ。

「ウサギ……?」

 ウサギにしてはやたらとでかい。

 豚よりは小さいが犬よりは大きく、体重は50Kgほどはありそうだ。

 しかも額に角が生えているうえに牙まであるし、物凄く狂暴そうな顔をしている。


ENEMYエネミー!】

 ウサギの頭の上に敵対者を示す赤い文字が浮かんだ。

ALERTアラートⅠ】

 続けて表示されるのは警戒レベル。

 これはグランゼイトの基本的な能力の一つで、相手の脅威度を網膜に直接表示させるものだが……。

「ちょっと待て、アラートⅠって、ウサギが!?」

 アラートは低い方から成人男性~一般兵士並みのレベル0を基準として、その3倍がアラートⅠ。

 アラートⅡは、アラートⅠの4~6倍。

 更に、アラートⅡの7~12倍がアラートⅢ。

 アラートⅢは所謂敵の怪人で、このレベルになると、通常の兵器で倒すことは不可能であり、グランゼイトに変身する必要がある。

 アラートⅣ、Ⅴ、Ⅵ以上のレベルも存在するらしいが、放送中盤を過ぎたくらいの劇中には未だ登場していない。

 ただ、アラートの判定基準が、単純なパワーなのかエネルギーなのかは、設定に明記されていない。

 分かっているのはこのウサギ、一般兵士より強い。ウサギなのに。

「俺を刺したおっさん、レベル0だぞ、たぶん……」

 漣はこの世界に来て、初めての恐怖を覚えた。

「落ち着け……俺」 

 よく見るとウサギは全部で五匹。どれもこれも剝き出しの牙を光らせて、今にも飛び掛かってきそうな雰囲気だ。

「うん、そうだ……見た目はウサギだ。ちょっとでかいウサギだ」

 ウサギに牙も角もないという事実は、この際無視する。

 漣が躊躇したのを弱気と見たのか、一匹のウサギが猛然と突っ込んできた。

「くっ、このっっ」

 咄嗟に右足で蹴り上げようとしたら、なんとその足に噛み付かれてしまった。

 だが痛みはない。

 グランゼイト=右京の服は、防刃防弾になっているという設定がしっかり生きているらしく、ウサギの牙を通さなかった。

「離れろっ、このっ」

 思い切り足をふり上げたらつま先が腹に当たり、ウサギは勢いよく飛んでいき樹に激突した。

「おおっ」

 自分が発揮した力に、思わず感嘆の声が漏れる。

 グランゼイト=早瀬右京は、ナノマシンによって肉体を強化された超戦士。

 たとえ変身できないままでも、その身体能力は一流アスリートの10倍という設定通りに強化されているようだ。

 ただ、致命傷には程遠かったようで、ウサギはすぐに漣へと向き直り他の個体と並んで唸り声をあげた。

 動きは意外に素早い。一度にかかってこられると少々厄介だ。

 漣はウサギから目を離さないよう注意しながら、右腰の銃へ手を伸ばす。

 銃のグリップに手が触れると、ピッっという小さな音がして、ホルスターのロックが外れた。

 右京の変身前の装備バスターガンは、【100m先の自動車を撃ち抜く】という大雑把なスペックの銃だ。

「頼むぞ……こっちは使えてくれよ……」

 自分自身の力が分からない状態で、アラートⅠという動物かどうかも怪しい生物と、素手でやり合うのは非常に危険だ。

 漣が一瞬目を離した隙に、ウサギたちは一斉に飛び掛かってきた。

 銃を抜き放ち、腰だめのままトリガーを引く。

 グゥォォォォォン!!

 エレクトリックサウンドに似た発射音が響き、青い尾を曳いた光弾がウサギたちを射抜いた。

 銃声は一発だが、撃ったのは五発。全ての光弾が、ウサギの眉間を正確に穿っている。

 この間、僅か0.1秒。

 時空騎行グランゼイトの主人公、『早瀬右京』は銀河一の早撃ち。

 さすが子ども向けヒーロー番組といったところか、設定のスケールが謎にでかいのはご愛敬として、今はその設定のおかげで助かったのだから悪くはない。

 バスターガンを指先で回転させ、ホルスターに収める。

 その瞬間。

 
〝レベルアップしました!〟

 特変[特撮変身ヒーロー]
 レベル1➡2

 基礎能力
 攻撃力:5➡10[×10]
 体力:4➡7[×10]
 俊敏:8➡15[×10]
 守備:5➡10[×10]

 スキル
 変身[グランゼイトへ変身 特変レベル5で開放]
 射撃★★★★★
 剣術★★★★★
 格闘★★★★★

 標準装備
 バスターガン
 レッグバック[亜空間収納]
 サバイバルキット


 ピロン、と音が聞こえて、いきなり目の前に画面のような物が開いた。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~

すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》 猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。 不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。 何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。 ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。 人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。 そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。 男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。 そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。 (

最弱クラスからの逆転冒険者ライフ! ~不遇スキルで魔王討伐?! パーティーは奇形・単眼・屍喰鬼(グール)娘のハーレム!?~

司条 圭
ファンタジー
普通の高校2年生、片上勇二は軽トラに轢かれそうになった子犬を助けた……つもりで、肥溜めに落ちて窒息死する。 天国に行くかと思いきや、女神様に出会い、けちょんけちょんにけなされながら異世界へ強制的に転生することに。 しかし、聖剣にも匹敵するであろう「強化」スキルのおまけつき! これなら俺も異世界で無双出来る! ヒャッホウしている勇二に、女神は、ダンジョンの最深部にいる魔王を倒せなければ、次の転生はミジンコだと釘を刺されてしまう。 異世界に着いたのは良いが、貰った「強化」スキルは、自分の能力を増幅させるもの! ……かと思いきや、他者が使ったスキルを強化させるためのスキルでしかなかった。 それでいて、この世界では誰でも使えるが、誰も使わない……というより、使おうともしない最弱スキル。 しかも、ステータスは並以下、クラスは最弱のノービス。 しかもしかも、冒険者ギルドに薦められた仲間は3本目の腕を持つ奇形娘。 それから立て続けに、単眼娘、屍喰鬼(グール)娘が仲間になり、色モノパーティーに…… だが俺は、心底痛感することになる。 仲間の彼女たちの強い心と卓越した能力。 そして何より、俺のスキル「強化」の持つ潜在能力を……!

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

聖なる幼女のお仕事、それは…

咲狛洋々
ファンタジー
とある聖皇国の聖女が、第二皇子と姿を消した。国王と皇太子達が国中を探したが見つからないまま、五年の歳月が過ぎた。魔人が現れ村を襲ったという報告を受けた王宮は、聖騎士団を差し向けるが、すでにその村は魔人に襲われ廃墟と化していた。  村の状況を調べていた聖騎士達はそこである亡骸を見つける事となる。それこそが皇子と聖女であった。長年探していた2人を連れ戻す事は叶わなかったが、そこである者を見つける。  それは皇子と聖女、二人の子供であった。聖女の力を受け継ぎ、高い魔力を持つその子供は、二人を襲った魔人の魔力に当てられ半魔になりかけている。聖魔力の高い師団長アルバートと副団長のハリィは2人で内密に魔力浄化をする事に。しかし、救出したその子の中には別の世界の人間の魂が宿りその肉体を生かしていた。  この世界とは全く異なる考え方に、常識に振り回される聖騎士達。そして次第に広がる魔神の脅威に国は脅かされて行く。

転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)

丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】 深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。 前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。 そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに…… 異世界に転生しても働くのをやめられない! 剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。 ■カクヨムでも連載中です■ 本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。 中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。 いつもありがとうございます。 ◆ 書籍化に伴いタイトルが変更となりました。 剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~ ↓ 転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...