魔王の宝珠

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魔界に連れ込まれ

心配事

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だんだんと大きくなるお腹を擦りながら、ソファーに座る俺の世話をガルシアとアルホスがしてくれていた。

女性でないから、何かとは不自由がある。
本当、世の中の母親達には頭が上がらない。
自分の今はいない母親にも。

「まさか、息子が妊娠なんて、考えられないだろうなぁ…あの世でどう思っていることやら……」

時々腹を蹴る感じがあり、今では母性本能が……
でも、やっぱり出産には心配だ。
どう考えてもあり得ない。
どこから産むんだ?まさか世に言う帝王切開??
腹切りか???切腹ではないけど…

小説とかで、Ωだなんだと言うのはあったが(本屋で見かけただけだが)読んだことないし、実際医学的にもあり得ない。聴いたこともないのはやっぱ不安だ。

「大丈夫ですか?」
ガルシアが心配そうに声をかけてきた。
悩みまくって、表情にでたか?

「なぁ、この世界で、男が妊娠するって言うのも、自分が体験して何だが…どう言えばいいんだ?えっと…」
「あぁ、出産に関して…ですか?」
「そうそれ!!だって俺、男だし、俺がいた世界はあり得なかったから。」
「それで、悩まれていたのですね。大丈夫ですよ。」

ニコニコと答えるガルシア。アルホスも頷いている。
「だから、何処が大丈夫なんだ?」
「もともと私達の種族は長寿で、しかも魔力持ちなので病気にもなりにくいんです。そのため出生率は低いのですが…そのせいか、魔力を使って同姓でも妊娠させることができます。但し、多くの魔力量が必要なので誰でもとは言いませんが…あと、出産に関しても魔力を行使しますので、男性でも出産できますよ。女性のようには産めませんが、魔手術で行うので、痛みもほぼなく、傷痕も残りません。我が君の世界の帝王切開ですか?そんな感じだと思っていいと思いますよ。少し違うんですけどね、その方が理解しやすいです。」

腹切られるのか…でも、産むしかないしな…
やっぱ怖いよ……

蒼白い顔になる…
アルホスが、お茶を入れてくれて、口つける。
温かくて、ほっとする。だけど、恐怖心はぬぐえない…

「私の兄がこの前の出産にしましたから、会ってみますか?実際の体験談を聞いたら安心するかもしれませんよ。」
アルホスの言葉に思わずブンブンと頷く。
「是非聞きたい。聞いてもらえる?」
「わかりました。確認してから我が君にお伝えしますね。」

体験談をきけば、少しは…
楽しみなような怖いような…
逃げれない現実だから、よし、頑張るぞ!!
そう心に決めた。
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