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波乱の影
不穏な影
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「なかなか活気があるな」
「そうですね。治安もよろしいようで」
旅人の格好ではあるも、周囲に溶け込むように歩く2人連れ。
すれ違う町人達の声や笑顔を見聞きしながら歩いていく。
店先に並ぶ新鮮な野菜や果物、精肉などや、串焼きのような食べ物まで売られ、この街の、この国の豊かさを物語っているようだ。
一時期治安が悪いとの噂も聞いていたが……
「お兄さん達、どこから来たんだい?良かったら味見しとくれよ」
そう言って声をかけてくる店主。
店先から美味そうな匂いが漂ってきた。
ちょうど昼過ぎ。
昼食を取るのも良いだろう。
住民憩いの場であろう飲食店。
店の中でも外でも食べれるように座席が置かれている。
天気も良いし、店先の椅子に腰掛けて食べるのも良いだろう。
共を連れて、店先のテーブルにつく。
「今日この街についたんだ。おすすめは何?」
「そうなんだ旅の人。どれもおすすめだけど、今日は特に良い肉が入ったんだ。この串焼きとか、この時間だとサンドもおすすめだ。」
「サンドとは?」
「ふっくら焼けたパンに野菜と焼いた肉の薄切りを挟んだものさ。肉汁がパンにしみて美味いぞ。」
「それじゃ、それを頼もうか。あとエールとかある?」
「昼間から飲むなんて、いける口なんだね。」
ガハハと笑いながら店主が中に入っていった。
店の中でも飲んでいるものはいるが、昼間だからか多くはない。
いつもは昼間っからは飲まないが、たび疲れもある。
気温も少し高めだから、飲みたい気分は許して欲しい。久しぶりだしな…
「殿下…」
「ここではアルバートだろ、クラウス。」
被ったフード付きコートを脱ぎもせずいるのは不審者と思われるかも知れないな…
まぁ、髪を染めているから、大丈夫だとは思うが…
コートを脱ぎ、横に置く。
クラウスもならって置いた。
いつもは燃えるような赤い髪。金の瞳の私だが、今は染めて黒い髪にしている。
側にいるクラウスは元々の地毛だが…
赤い髪の金の瞳は我が一族の証だ。
それだけで、何処のものか知れてしまう。
どちらかだけなら、何処の国にもいる事はいるのだが……
「お待ちどうさま」
そう言って、エールとサンドが運ばれてきた。
何だこれは???
木のコップではない。透明なコップ。しかも冷たい。
「あぁ、これはジョッキって言うんだよ。ジョッキグラス。この国の皇族の方が発案されたんだ。で、ジョッキもエールも冷やして置いて、お出しするときにキンキンに冷えたのを出すと食も進むし、美味いんだ。まぁ騙されたと思って飲んでみな」
言われるままに冷えたジョッキを手に取る。
持ち手も冷えてはいるが……
エールを一口……
す~っと染み渡る感じだ。そのまま一気に飲み干した。
美味い。美味いぞ……
「美味いだろ?」
「すまない、もう一杯もらえるか?」
「まいどあり」
そう言って、店の中に戻り、新たなエールを持ってきた。
今度は食べながら味わうように飲む。
「素晴らしいですね。我が国にも是非」
「あぁ、そうだな。この国には何があるのかも知れん。持ち帰れるなら、持ち帰ろう。国のためにも…」
「皇族の者が発案したと言っていたな」
「そうですね…」
それだけ話し、後は宿で話すことにする。
俄然興味が湧いた。
もしあの者であったなら、是非とも我が国に連れて帰りたい。
何度か国同士の会合で会ったことのある者。
たまたま立ち寄った場所で出会ったことのある者。
あの者が、この国の皇族の1人である事は調べがついている。
私の事を覚えてはいないだろうが……
楽しみが増えた。
お代をテーブルの上に置いて、店のものに声かけ出る。
「行くぞ」
そう言って、街の中を再度散策しながら、目的の宿に足を向けた。
「そうですね。治安もよろしいようで」
旅人の格好ではあるも、周囲に溶け込むように歩く2人連れ。
すれ違う町人達の声や笑顔を見聞きしながら歩いていく。
店先に並ぶ新鮮な野菜や果物、精肉などや、串焼きのような食べ物まで売られ、この街の、この国の豊かさを物語っているようだ。
一時期治安が悪いとの噂も聞いていたが……
「お兄さん達、どこから来たんだい?良かったら味見しとくれよ」
そう言って声をかけてくる店主。
店先から美味そうな匂いが漂ってきた。
ちょうど昼過ぎ。
昼食を取るのも良いだろう。
住民憩いの場であろう飲食店。
店の中でも外でも食べれるように座席が置かれている。
天気も良いし、店先の椅子に腰掛けて食べるのも良いだろう。
共を連れて、店先のテーブルにつく。
「今日この街についたんだ。おすすめは何?」
「そうなんだ旅の人。どれもおすすめだけど、今日は特に良い肉が入ったんだ。この串焼きとか、この時間だとサンドもおすすめだ。」
「サンドとは?」
「ふっくら焼けたパンに野菜と焼いた肉の薄切りを挟んだものさ。肉汁がパンにしみて美味いぞ。」
「それじゃ、それを頼もうか。あとエールとかある?」
「昼間から飲むなんて、いける口なんだね。」
ガハハと笑いながら店主が中に入っていった。
店の中でも飲んでいるものはいるが、昼間だからか多くはない。
いつもは昼間っからは飲まないが、たび疲れもある。
気温も少し高めだから、飲みたい気分は許して欲しい。久しぶりだしな…
「殿下…」
「ここではアルバートだろ、クラウス。」
被ったフード付きコートを脱ぎもせずいるのは不審者と思われるかも知れないな…
まぁ、髪を染めているから、大丈夫だとは思うが…
コートを脱ぎ、横に置く。
クラウスもならって置いた。
いつもは燃えるような赤い髪。金の瞳の私だが、今は染めて黒い髪にしている。
側にいるクラウスは元々の地毛だが…
赤い髪の金の瞳は我が一族の証だ。
それだけで、何処のものか知れてしまう。
どちらかだけなら、何処の国にもいる事はいるのだが……
「お待ちどうさま」
そう言って、エールとサンドが運ばれてきた。
何だこれは???
木のコップではない。透明なコップ。しかも冷たい。
「あぁ、これはジョッキって言うんだよ。ジョッキグラス。この国の皇族の方が発案されたんだ。で、ジョッキもエールも冷やして置いて、お出しするときにキンキンに冷えたのを出すと食も進むし、美味いんだ。まぁ騙されたと思って飲んでみな」
言われるままに冷えたジョッキを手に取る。
持ち手も冷えてはいるが……
エールを一口……
す~っと染み渡る感じだ。そのまま一気に飲み干した。
美味い。美味いぞ……
「美味いだろ?」
「すまない、もう一杯もらえるか?」
「まいどあり」
そう言って、店の中に戻り、新たなエールを持ってきた。
今度は食べながら味わうように飲む。
「素晴らしいですね。我が国にも是非」
「あぁ、そうだな。この国には何があるのかも知れん。持ち帰れるなら、持ち帰ろう。国のためにも…」
「皇族の者が発案したと言っていたな」
「そうですね…」
それだけ話し、後は宿で話すことにする。
俄然興味が湧いた。
もしあの者であったなら、是非とも我が国に連れて帰りたい。
何度か国同士の会合で会ったことのある者。
たまたま立ち寄った場所で出会ったことのある者。
あの者が、この国の皇族の1人である事は調べがついている。
私の事を覚えてはいないだろうが……
楽しみが増えた。
お代をテーブルの上に置いて、店のものに声かけ出る。
「行くぞ」
そう言って、街の中を再度散策しながら、目的の宿に足を向けた。
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