100 / 220
冒険者
ウィルを見つけて(クロ)
しおりを挟む
数日後、ウィルが、銀髪、アイスブルーの瞳の男性と屋敷を出てきた事を確認した。
どうも、ギルドマスターの案でこの屋敷に滞在し、屋敷の主である者とパートナーを組んだようだ。
しかし、あの男は……
見覚えのある顔と雰囲気の男。
そうだ、あれは別れた弟だ……
幼少時、両親の都合で私達兄弟は別れた。
弟は母方に引き取られ、母親は確か再婚していたはず。
私達の国はもう無いし、引き取ってくれた父親ももうこの世にはいないが…
幸せならと、会いに行くこともなかった。
この国だったのか…
あいつがウィルの世話兼パートナーなら、他のものよりは安心できるが……
何故かイライラする。
自分以外がウィルの側にいるのが許せない。
「もう、重症だな…」
思わず苦笑いになる。
ウィル達が馬でどこかに出かけようとしている。
多分ギルド依頼のものだろうが…
乗ってきた馬を急がせ、ウィル達の後を追う。
何かあれば、直ぐにでも助けたいし、見つけたのだから、説教の一つもしないと治らない…
そう考えていた。
様子見だからと、少し離れた場所に隠れるようにし、見つからないよう注意した。
ついた先は、森の中。
そこにはいろんな植物が生えているようだ。
2人の会話に耳をすましながら、魔力を使い、さらに状況把握に努めた。
勿論、察知されないようにだが……
「今日は、この森で、薬草や、魔石などの鉱物の採取だ。全部集めていったら、アイテムに収納。依頼以上取れた場合は、自動でストックされるから、ポーションや、魔道具などを自作しても良いし、作ってもらうために持ち込んでも良い。ギルドに売りつけて、お金に変えても良いんだ。ただ、貴重な物は早朝でないと取れないものもあるから、今日みたいに早く出かける必要もある。ん?ウィル、聞いてる?」
「聞いてますよ~~~」
説明を聞きながら、ウィルは奥に進むようにしてどんどん取っているようだ。
こういう時のウィルは、注意力が散乱するから、注意が必要なんだが…
たぶん、宝探し気分で楽しんでいるだろう……
リリィもいれば、もっと大変なことになっただろうな……
今は考えないでおこう…
「どうした?何か分からないことでもある?それとも苦手な物が側にあるとか?」
「大丈夫です。」
ウィル慌てて首を振る。
「なら良いが、あまり遠くにはいくなよ!」
そう言われ、頑張って見つけてはアイテムボックスに入れているようだ。
適当に見えるが、結構質の良いものを選んで取っているのがわかる。
昼過ぎまで楽しく取っていたウィルが、気になるものが見えたのか、かなり気にしているが……あれは…
まずい……
何やら甘い香りがして、引き寄せられるように、ウィルが大きな花に近づいていく。
「ウィル、それはダメだ!!近づくな!息を止めろ。その香りを吸ったら!!」
弟のナヴィルが大きな声で叫んでいる。
ウィルは催眠がかかっているのだろう…笑顔で手を振っている。
思わずドキッとしたが、そんな事言ってはおれない…
「ナヴィルさん。何か甘い香りがして、ふわふわです。ふふっ…」
ナヴィルも、慌てて口元を布で覆いながらウィルに近づいて行くのが見える。
そして、ウィル側に咲く花から伸びた蔓を剣で突き刺した。
ウィルに目掛けて、触手の様に伸びてきた蔓が、ナヴィルの剣で断ち切られる。
また、別の蔓が伸びてきたが、それを避けるようにして、大輪の花の中心に剣を突き刺した。
花が大きく揺れる。
やがて、萎んで、小さな果実となった。
甘い香りは消えたが、ウィルの様子がおかしい…
「ナヴィルさん。何か暑いですね。水浴びしたいぐらいです。」
頬が火照り、今にも服を脱ぎ出しそうだ…
「完璧に、媚薬樹にやられたか……この樹木の花はフェロモンを出して、動物たちをおびき寄せるんだ。花粉や香りには媚薬成分が含まれて、興奮状態にさせて、そのまま取り込まれる。いわゆる食虫植物と似ている。果実は実際に媚薬を作るのに用いられるが……この香りの厄介なのは、イかないと、発情したままなんだ。場合によっては狂い死ぬ。これをもとに作った媚薬は、も一つ厄介なんだが……何でこんな場所に咲いてるんだ。以前は無かったはず……」
「はぁっ……はぁ……身体が熱い……ん……」
「ウィル…大丈夫か…」
「嫌だ……いやだ……あぁ……」
「ウィル……」
ナヴィルの喉がゴクッとなった。
私も少し離れた場所ではあるが、ウィルの色香に途惑う。
ウィルの身の危険を感じる。
まずい!!
「クロ…………助けて……あぁ…………」
身体が火照り、潤んだ瞳から涙がこぼれている。
ウィル自身も、硬く、熱くなっているようだ。
例え弟でも……
自然と体が動いた。
どうも、ギルドマスターの案でこの屋敷に滞在し、屋敷の主である者とパートナーを組んだようだ。
しかし、あの男は……
見覚えのある顔と雰囲気の男。
そうだ、あれは別れた弟だ……
幼少時、両親の都合で私達兄弟は別れた。
弟は母方に引き取られ、母親は確か再婚していたはず。
私達の国はもう無いし、引き取ってくれた父親ももうこの世にはいないが…
幸せならと、会いに行くこともなかった。
この国だったのか…
あいつがウィルの世話兼パートナーなら、他のものよりは安心できるが……
何故かイライラする。
自分以外がウィルの側にいるのが許せない。
「もう、重症だな…」
思わず苦笑いになる。
ウィル達が馬でどこかに出かけようとしている。
多分ギルド依頼のものだろうが…
乗ってきた馬を急がせ、ウィル達の後を追う。
何かあれば、直ぐにでも助けたいし、見つけたのだから、説教の一つもしないと治らない…
そう考えていた。
様子見だからと、少し離れた場所に隠れるようにし、見つからないよう注意した。
ついた先は、森の中。
そこにはいろんな植物が生えているようだ。
2人の会話に耳をすましながら、魔力を使い、さらに状況把握に努めた。
勿論、察知されないようにだが……
「今日は、この森で、薬草や、魔石などの鉱物の採取だ。全部集めていったら、アイテムに収納。依頼以上取れた場合は、自動でストックされるから、ポーションや、魔道具などを自作しても良いし、作ってもらうために持ち込んでも良い。ギルドに売りつけて、お金に変えても良いんだ。ただ、貴重な物は早朝でないと取れないものもあるから、今日みたいに早く出かける必要もある。ん?ウィル、聞いてる?」
「聞いてますよ~~~」
説明を聞きながら、ウィルは奥に進むようにしてどんどん取っているようだ。
こういう時のウィルは、注意力が散乱するから、注意が必要なんだが…
たぶん、宝探し気分で楽しんでいるだろう……
リリィもいれば、もっと大変なことになっただろうな……
今は考えないでおこう…
「どうした?何か分からないことでもある?それとも苦手な物が側にあるとか?」
「大丈夫です。」
ウィル慌てて首を振る。
「なら良いが、あまり遠くにはいくなよ!」
そう言われ、頑張って見つけてはアイテムボックスに入れているようだ。
適当に見えるが、結構質の良いものを選んで取っているのがわかる。
昼過ぎまで楽しく取っていたウィルが、気になるものが見えたのか、かなり気にしているが……あれは…
まずい……
何やら甘い香りがして、引き寄せられるように、ウィルが大きな花に近づいていく。
「ウィル、それはダメだ!!近づくな!息を止めろ。その香りを吸ったら!!」
弟のナヴィルが大きな声で叫んでいる。
ウィルは催眠がかかっているのだろう…笑顔で手を振っている。
思わずドキッとしたが、そんな事言ってはおれない…
「ナヴィルさん。何か甘い香りがして、ふわふわです。ふふっ…」
ナヴィルも、慌てて口元を布で覆いながらウィルに近づいて行くのが見える。
そして、ウィル側に咲く花から伸びた蔓を剣で突き刺した。
ウィルに目掛けて、触手の様に伸びてきた蔓が、ナヴィルの剣で断ち切られる。
また、別の蔓が伸びてきたが、それを避けるようにして、大輪の花の中心に剣を突き刺した。
花が大きく揺れる。
やがて、萎んで、小さな果実となった。
甘い香りは消えたが、ウィルの様子がおかしい…
「ナヴィルさん。何か暑いですね。水浴びしたいぐらいです。」
頬が火照り、今にも服を脱ぎ出しそうだ…
「完璧に、媚薬樹にやられたか……この樹木の花はフェロモンを出して、動物たちをおびき寄せるんだ。花粉や香りには媚薬成分が含まれて、興奮状態にさせて、そのまま取り込まれる。いわゆる食虫植物と似ている。果実は実際に媚薬を作るのに用いられるが……この香りの厄介なのは、イかないと、発情したままなんだ。場合によっては狂い死ぬ。これをもとに作った媚薬は、も一つ厄介なんだが……何でこんな場所に咲いてるんだ。以前は無かったはず……」
「はぁっ……はぁ……身体が熱い……ん……」
「ウィル…大丈夫か…」
「嫌だ……いやだ……あぁ……」
「ウィル……」
ナヴィルの喉がゴクッとなった。
私も少し離れた場所ではあるが、ウィルの色香に途惑う。
ウィルの身の危険を感じる。
まずい!!
「クロ…………助けて……あぁ…………」
身体が火照り、潤んだ瞳から涙がこぼれている。
ウィル自身も、硬く、熱くなっているようだ。
例え弟でも……
自然と体が動いた。
0
お気に入りに追加
278
あなたにおすすめの小説
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
気付いたら囲われていたという話
空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる!
※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる