番になんてなりたくない!

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冒険者

ウィルを見つけて(クロ)

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数日後、ウィルが、銀髪、アイスブルーの瞳の男性と屋敷を出てきた事を確認した。
どうも、ギルドマスターの案でこの屋敷に滞在し、屋敷の主である者とパートナーを組んだようだ。
しかし、あの男は……

見覚えのある顔と雰囲気の男。
そうだ、あれは別れた弟だ……

幼少時、両親の都合で私達兄弟は別れた。
弟は母方に引き取られ、母親は確か再婚していたはず。
私達の国はもう無いし、引き取ってくれた父親ももうこの世にはいないが…
幸せならと、会いに行くこともなかった。

この国だったのか…
あいつがウィルの世話兼パートナーなら、他のものよりは安心できるが……
何故かイライラする。
自分以外がウィルの側にいるのが許せない。

「もう、重症だな…」

思わず苦笑いになる。

ウィル達が馬でどこかに出かけようとしている。
多分ギルド依頼のものだろうが…

乗ってきた馬を急がせ、ウィル達の後を追う。

何かあれば、直ぐにでも助けたいし、見つけたのだから、説教の一つもしないと治らない…
そう考えていた。
様子見だからと、少し離れた場所に隠れるようにし、見つからないよう注意した。

ついた先は、森の中。
そこにはいろんな植物が生えているようだ。
2人の会話に耳をすましながら、魔力を使い、さらに状況把握に努めた。
勿論、察知されないようにだが……

「今日は、この森で、薬草や、魔石などの鉱物の採取だ。全部集めていったら、アイテムに収納。依頼以上取れた場合は、自動でストックされるから、ポーションや、魔道具などを自作しても良いし、作ってもらうために持ち込んでも良い。ギルドに売りつけて、お金に変えても良いんだ。ただ、貴重な物は早朝でないと取れないものもあるから、今日みたいに早く出かける必要もある。ん?ウィル、聞いてる?」

「聞いてますよ~~~」

説明を聞きながら、ウィルは奥に進むようにしてどんどん取っているようだ。
こういう時のウィルは、注意力が散乱するから、注意が必要なんだが…

たぶん、宝探し気分で楽しんでいるだろう……

リリィもいれば、もっと大変なことになっただろうな……
今は考えないでおこう…


「どうした?何か分からないことでもある?それとも苦手な物が側にあるとか?」
「大丈夫です。」

ウィル慌てて首を振る。

「なら良いが、あまり遠くにはいくなよ!」

そう言われ、頑張って見つけてはアイテムボックスに入れているようだ。
適当に見えるが、結構質の良いものを選んで取っているのがわかる。

昼過ぎまで楽しく取っていたウィルが、気になるものが見えたのか、かなり気にしているが……あれは…
まずい……

何やら甘い香りがして、引き寄せられるように、ウィルが大きな花に近づいていく。


「ウィル、それはダメだ!!近づくな!息を止めろ。その香りを吸ったら!!」

弟のナヴィルが大きな声で叫んでいる。
ウィルは催眠がかかっているのだろう…笑顔で手を振っている。
思わずドキッとしたが、そんな事言ってはおれない…

「ナヴィルさん。何か甘い香りがして、ふわふわです。ふふっ…」


ナヴィルも、慌てて口元を布で覆いながらウィルに近づいて行くのが見える。
そして、ウィル側に咲く花から伸びた蔓を剣で突き刺した。

ウィルに目掛けて、触手の様に伸びてきた蔓が、ナヴィルの剣で断ち切られる。
また、別の蔓が伸びてきたが、それを避けるようにして、大輪の花の中心に剣を突き刺した。

花が大きく揺れる。
やがて、萎んで、小さな果実となった。

甘い香りは消えたが、ウィルの様子がおかしい…

「ナヴィルさん。何か暑いですね。水浴びしたいぐらいです。」

頬が火照り、今にも服を脱ぎ出しそうだ…

「完璧に、媚薬樹にやられたか……この樹木の花はフェロモンを出して、動物たちをおびき寄せるんだ。花粉や香りには媚薬成分が含まれて、興奮状態にさせて、そのまま取り込まれる。いわゆる食虫植物と似ている。果実は実際に媚薬を作るのに用いられるが……この香りの厄介なのは、イかないと、発情したままなんだ。場合によっては狂い死ぬ。これをもとに作った媚薬は、も一つ厄介なんだが……何でこんな場所に咲いてるんだ。以前は無かったはず……」

「はぁっ……はぁ……身体が熱い……ん……」
「ウィル…大丈夫か…」
「嫌だ……いやだ……あぁ……」

「ウィル……」

ナヴィルの喉がゴクッとなった。
私も少し離れた場所ではあるが、ウィルの色香に途惑う。

ウィルの身の危険を感じる。
まずい!!


「クロ…………助けて……あぁ…………」

身体が火照り、潤んだ瞳から涙がこぼれている。
ウィル自身も、硬く、熱くなっているようだ。

例え弟でも……
自然と体が動いた。



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