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未来に向けて
アカデミーに(ジャディール)
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この頃、私のカルが気落ちしている姿をよくみた。
まだ学生である彼を公の場で『妻』としていないが、既に彼は私の愛しい者。卒業と同時に大々的に挙式を行い名実共に我が妻として共に生きて行く予定だ。
そう、彼はアカデミーの学生であるから、現在は寮生活。
アカデミー内では婚約者である事だけ周知し、教授と生徒の関係になっている。
一人の生徒を特別視する訳にはかないからね。
学業に関しては、そんな事はする必要性は、彼に関してもないのだけれども、贔屓目にしていると勘繰る輩もいるだろうし…
まぁ、講義に対しての資料整理などは手伝ってもらっているが、それは他の生徒もだから…
二人きりの時間が少ないのは残念でならない…
『扉』の脅威も無事に去り、多少の魔物や魔獣の討伐や、その他の雑務も大分と落ち着いて来たから、これから彼が卒業するまでの期間と、アカデミーの仕事を楽しみにしていた。
そんな時、彼の様子が変だと思う報告が上がり、実際もそう感じる場合が多々あった。
側から見れば些細は変化ではあるが…
で、次回使う資料整理を手伝う名目で彼を呼んだんだ。
「どうした?この所浮かない顔をしているが?」
そう声をかけると、手元のある次回資料の整理をしていた彼の手が止まる。
そして、声をかけた私の方を見てニッコリと微笑んだ。
一瞬動揺を見せたが、直ぐにいつもの彼の表情だ。
しっかりと見ていなかったら、見落とすぐらいのほんの一瞬の翳り…
「何でもないよ。それにしても、相変わらずすごい資料だね。次の講義に使うの?」
手に持っている資料を私の方に見せてそう聞いてきた。
今回の資料は、新たな魔法陣と過去の魔法陣に対しての比較検討だ。
過去のもの…そう、大賢者アルストの時代の物が多く現在も残されている。
彼が構築して来た多くに魔法陣に対して、さらなる追求や新たに多くの魔法陣が先人や今代の魔法陣研究家によって現在も多く研究されている。
特に多くの研究者が居るのは、やはりディール帝国の魔塔ではあるけれど、それ以外の魔術師達も研究者は多くいた。
今回は少し趣向を変えてみようと、この内容にしたのだ。カルがアルストと密かに研究していたのも知っていたからね。カル…私の愛しいカルロスのスキルで呼び出された多くの英霊達の中に、大賢者アルストもいた。過去にも英霊召喚者達はいたが、カルロスほどの召喚者はいない。そんな彼は魔法陣やその他の研究をするのも大好きなのだ。
その姿を見守るのも私的には気に入っている。あの子が喜ぶ姿は至上の喜びの一つだから…
そして、彼を守る材料としても利便性が高いと判断してアカデミーの非常勤講師としてアルストを教壇に立たせた。
推薦したのはもちろん私だ。
過去の英雄、大賢者アルストの子孫と言う設定にし、兄上の許可も勿論貰った。
『大賢者であるアルストの講義を、未来を見なう若者が受ける事は多いに歓迎だ!』と言ってもらえた。そこに至るように目論見もしたがな…
大賢者アルストの子孫は現在も居る。
我が国の魔法師団にだ。本来こんなことでは使用しない子飼いに指示して仕事に必要な資料を抜き取らせた。そして、カルに兄の忘れ物を届けるように仕向けた。カルの兄リカルトが王太子である甥の執務室来るようにし、偶然訪れた時に居合わせるように仕向けたのだ。
この計画は兄上も甥にも先に伝えておいた。この国においての重要なスキル持ちであるカルロスは保護対象者になり得るからね。勿論、私の大切な妻であるから、彼らにとっても身内。身内に対しての愛情は、竜人族は他種族以上のものがある。一番は『番』に対してだけれども…
で、その時に私も同席で紹介した。
彼が王太子であるルーズベルトの所に新たな魔法陣の報告をしていて、それに興味を持った大賢者アルストが出て来た。過去の文献にも、そして実際に会ってみた感じでも、彼の探究心は想像以上であったから、きっと食いつくと思っていた。目論見通り…思わず苦笑いしてしまうぐらいだった。
あの時のカルが焦った姿もまた可愛らしく、愛おしかったのだが…
今までも、時々であったが大賢者アルストに意見してもらっていた王太子殿下の執務室であるから、油断したんだろう。で、子孫とご対面だ。子孫である彼はかなり驚いていたけれど、それ以上に目をキラキラさせて喜んでいた。
で、彼からの推薦もあり、計画通りアカデミーの教壇に立つことになったんだ。
名前はそのまま。過去の英雄達の名前を我が子につける事は良くあるからな。ただし、初代聖女の『アカリ』だけは、誰でもつけていい名前ではない。そこは教会からの圧と言っても良い。『神様の名前を勝手に使ってはならない。名乗ることも…』という事だ。
現在、非常勤講師であるアルストの講義は大人気で、いつも教室いっぱいに詰め込まれるように人で溢れていた。カルも時々視聴しに友人と言っていると本人からも、子飼いからも報告は受けている。
「そう言えば、アルスト殿の講義も人気があったな。今度私も覗かせてもらおうと思っているんだ。」
「そうなの?」
「あぁ、カルを通して彼とは何度も話した事はあるけどね。彼の講義は満席だし、私も時間が取れずに視聴できなかったからね。少し国自体も落ち着いて来たから時間が取れるようにもなって来た事だし、大賢者が今の学生にどのように講義をしていくのか興味もある。新たな研究にも参加してるのだろう?本当にカルのスキルがなければこのような体験が出来なかったよ。」
そう言ってクスクス笑った。これで少し油断しただろうか?
追求をやめるつもりはないがな。
「で、何かあった?」
ニヤリと笑って口角を上げてみた。
さぁ。教えてもらおうか…
まだ学生である彼を公の場で『妻』としていないが、既に彼は私の愛しい者。卒業と同時に大々的に挙式を行い名実共に我が妻として共に生きて行く予定だ。
そう、彼はアカデミーの学生であるから、現在は寮生活。
アカデミー内では婚約者である事だけ周知し、教授と生徒の関係になっている。
一人の生徒を特別視する訳にはかないからね。
学業に関しては、そんな事はする必要性は、彼に関してもないのだけれども、贔屓目にしていると勘繰る輩もいるだろうし…
まぁ、講義に対しての資料整理などは手伝ってもらっているが、それは他の生徒もだから…
二人きりの時間が少ないのは残念でならない…
『扉』の脅威も無事に去り、多少の魔物や魔獣の討伐や、その他の雑務も大分と落ち着いて来たから、これから彼が卒業するまでの期間と、アカデミーの仕事を楽しみにしていた。
そんな時、彼の様子が変だと思う報告が上がり、実際もそう感じる場合が多々あった。
側から見れば些細は変化ではあるが…
で、次回使う資料整理を手伝う名目で彼を呼んだんだ。
「どうした?この所浮かない顔をしているが?」
そう声をかけると、手元のある次回資料の整理をしていた彼の手が止まる。
そして、声をかけた私の方を見てニッコリと微笑んだ。
一瞬動揺を見せたが、直ぐにいつもの彼の表情だ。
しっかりと見ていなかったら、見落とすぐらいのほんの一瞬の翳り…
「何でもないよ。それにしても、相変わらずすごい資料だね。次の講義に使うの?」
手に持っている資料を私の方に見せてそう聞いてきた。
今回の資料は、新たな魔法陣と過去の魔法陣に対しての比較検討だ。
過去のもの…そう、大賢者アルストの時代の物が多く現在も残されている。
彼が構築して来た多くに魔法陣に対して、さらなる追求や新たに多くの魔法陣が先人や今代の魔法陣研究家によって現在も多く研究されている。
特に多くの研究者が居るのは、やはりディール帝国の魔塔ではあるけれど、それ以外の魔術師達も研究者は多くいた。
今回は少し趣向を変えてみようと、この内容にしたのだ。カルがアルストと密かに研究していたのも知っていたからね。カル…私の愛しいカルロスのスキルで呼び出された多くの英霊達の中に、大賢者アルストもいた。過去にも英霊召喚者達はいたが、カルロスほどの召喚者はいない。そんな彼は魔法陣やその他の研究をするのも大好きなのだ。
その姿を見守るのも私的には気に入っている。あの子が喜ぶ姿は至上の喜びの一つだから…
そして、彼を守る材料としても利便性が高いと判断してアカデミーの非常勤講師としてアルストを教壇に立たせた。
推薦したのはもちろん私だ。
過去の英雄、大賢者アルストの子孫と言う設定にし、兄上の許可も勿論貰った。
『大賢者であるアルストの講義を、未来を見なう若者が受ける事は多いに歓迎だ!』と言ってもらえた。そこに至るように目論見もしたがな…
大賢者アルストの子孫は現在も居る。
我が国の魔法師団にだ。本来こんなことでは使用しない子飼いに指示して仕事に必要な資料を抜き取らせた。そして、カルに兄の忘れ物を届けるように仕向けた。カルの兄リカルトが王太子である甥の執務室来るようにし、偶然訪れた時に居合わせるように仕向けたのだ。
この計画は兄上も甥にも先に伝えておいた。この国においての重要なスキル持ちであるカルロスは保護対象者になり得るからね。勿論、私の大切な妻であるから、彼らにとっても身内。身内に対しての愛情は、竜人族は他種族以上のものがある。一番は『番』に対してだけれども…
で、その時に私も同席で紹介した。
彼が王太子であるルーズベルトの所に新たな魔法陣の報告をしていて、それに興味を持った大賢者アルストが出て来た。過去の文献にも、そして実際に会ってみた感じでも、彼の探究心は想像以上であったから、きっと食いつくと思っていた。目論見通り…思わず苦笑いしてしまうぐらいだった。
あの時のカルが焦った姿もまた可愛らしく、愛おしかったのだが…
今までも、時々であったが大賢者アルストに意見してもらっていた王太子殿下の執務室であるから、油断したんだろう。で、子孫とご対面だ。子孫である彼はかなり驚いていたけれど、それ以上に目をキラキラさせて喜んでいた。
で、彼からの推薦もあり、計画通りアカデミーの教壇に立つことになったんだ。
名前はそのまま。過去の英雄達の名前を我が子につける事は良くあるからな。ただし、初代聖女の『アカリ』だけは、誰でもつけていい名前ではない。そこは教会からの圧と言っても良い。『神様の名前を勝手に使ってはならない。名乗ることも…』という事だ。
現在、非常勤講師であるアルストの講義は大人気で、いつも教室いっぱいに詰め込まれるように人で溢れていた。カルも時々視聴しに友人と言っていると本人からも、子飼いからも報告は受けている。
「そう言えば、アルスト殿の講義も人気があったな。今度私も覗かせてもらおうと思っているんだ。」
「そうなの?」
「あぁ、カルを通して彼とは何度も話した事はあるけどね。彼の講義は満席だし、私も時間が取れずに視聴できなかったからね。少し国自体も落ち着いて来たから時間が取れるようにもなって来た事だし、大賢者が今の学生にどのように講義をしていくのか興味もある。新たな研究にも参加してるのだろう?本当にカルのスキルがなければこのような体験が出来なかったよ。」
そう言ってクスクス笑った。これで少し油断しただろうか?
追求をやめるつもりはないがな。
「で、何かあった?」
ニヤリと笑って口角を上げてみた。
さぁ。教えてもらおうか…
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