竜の国のご都合主義?

文字の大きさ
上 下
145 / 269
聖女と巡礼

聖女巡礼メンバーにされてしまったみたいです。

しおりを挟む
体調も戻り、慌てて来てくれた父や兄達。ディや診察で見てくれた医師の許可も降りて、浄化巡礼メンバーとして合流することになった。

合流前夜、ディは準備があるからと、当日に迎えに来てくれることになった。
もちろん、同時期メンバー達から離れていたスレインも一緒にだ。
彼にも、ものすごく心配をかけてしまい、申し訳ない。
明日、しっかり謝罪とお礼を言おうと心に決めている。

父や兄達は、国から呼び戻されて、昨日帰国した。
国の方も色々とあるようで、まぁ仕方ないと思うよ。


僕は今、リハビリも兼ねて城の近くを散策中だ。
城から護衛をと言われたが、僕の侍従がいるから大丈夫だと告げて置いた。
もちろん、侍従はディアブロだ。
そして、ディ個人が僕に護衛をつけてくれた事にして、シェリルとガラの二人が背後に控えていた。
いつもと違う服装のガラに違和感を感じるが、騎士の格好も素敵に見えた。
うん、似合ってるよ。
ガラは厳つい筋肉ではなく、柔軟な筋肉の付け方をしているのか、騎士団独特のマッチョな感じがしなかった。
忍者マスターであったからかも知れない。
顔も厳つい感じではなくて、柔和な感じで、そこは意外だった。

「この向こうが、少しどんよりしてる気がする。」

そう言って、覗くと、小さな窪みに澱みが見えた。
うん、つい最近できた感じだ。そして、向こうに……


「血の跡?それも、ごく最近…」

澱みの方は、アカリを呼んで浄化を頼み、僕は血の跡を追った。
何故だか気になって仕方がない。

「アカリの側にはガラが付いているから大丈夫なはず。だから…」

ガサッと草を掻き分けて見つけたのは、小さくうずくまっている子供。

そっと近づいて、しゃがみ込んで声をかけた。
足や腕から血が滲み出ていて痛そうだ。
自分よりも大きい人に、ケガした子供が声をかけられたら、怖いよね。
そう考えての行動だった。

「どうしたの?痛くない?」
「…!!」

そっと手を伸ばしたら、うん、怖かったか…
威嚇されて、噛みつかれた。

フーフーっと鼻息荒く噛みつかれ、尖った爪が腕に食い込んで痛いけど、うん、我慢だ。
魔人族かな?黒髪をそっと撫でた。

「ごめんね。驚かせて。怖くないよ。足と腕怪我してるね。手当てして良い?」

ブルっと身体を震わせながら、恐々と僕を見る瞳は、ディアブロに似てると思った。

「ディアブロに似てる。小さなディアブロって感じだ。おっとごめんごめん。」

そう言って、今度は背中をそっと撫でてみた。
僕の背後に控える二人に威圧されたのか、噛み締めていた口を開けて、離してくれた。

「マスターに怪我させるなんて。」

そう言って怒っているのは、シェリルの方だ。ディアブロでなくて?
いつもなら、ディアブロの方が怒り狂いそうであるのに??

チラッと背後を振り返ると、シェリルの綺麗なお顔に青筋がたち、ディアブロは何とも言えない表情だ。

「シェリル。大丈夫だから。ディアブロも」

それだけ言って、子供の方に視線を戻す。

「ぼく、ディアブロ…」
「君もディアブロなの?背後の大きいお兄ちゃんと同じ名前なんだ。二人ディアブロだと間違えそうだね。そうだ。君のことディアって呼んでもいい?僕はカルストだよ。」
「カルスト?」
「そう、カルスト。カルって呼ばせてあげたいけど、僕の大切な人が嫌がるかなぁ…」
「カル兄ちゃん」
「うん、それで良いよ。ケガどうしたの?どうしてここに?」

そう言うと、傷が少しずつ塞がって行くようだ。
どういう事だ?

「マスター、そいつはやばい。殺すべきだ。」

そう言って、シェリルが弓を構え出した。
すると、ディアが僕の影に隠れる。もちろん、僕は庇うけど…

「そいつは魔人族でも魔族でもなさそうだ。何と言うか…」

シェリルがそう言いながらも、ジリジリと狙いを定める。

「ん~、大丈夫だと思いますよ。マスター。確かにその子供はこの世界のモノとは異質に感じますが、主従関係が結ばれたみたいですね。いわゆる従魔契約みたいなものですね。流石です。」

ディアブロがパチパチと拍手を送ってくる。
シェリルは目が落ちそうなぐらいに見開き、僕も顎が外れるぐらいに大きく口をぽかんと開けてしまっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

【完結】もっと、孕ませて

ナツキ
BL
3Pのえちえち話です。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾
BL
日本に住む青年九条 翠 (くじょう すい)はナサニエル帝国第3皇子 ルーカスとして、第2の生を受ける。 前世は家族とも疎遠で、あまり良い思い出もない。そんな翠がルーカスとして生き、様々な人に愛され恋をして新しい人生を歩んでいく話。  恋愛はルーカスが学園に入ってから主に進めていこうと思います。 初めて書いたので語彙も少なく、拙いですが、暖かい目で見ていただけると嬉しいです。誤字脱字があれば教えて頂けると嬉しいです!定期的に投稿出来るように頑張ります。 ※強姦表現や虐待表現があります。 ⚠️注意⚠️ この世界の赤子が話し出すのは1歳程ですごく早く、現実とは異なります。 人物紹介の瞳の色の後ろにある( )は、宝石✨️の名前で️す。良ければ調べてみてください!色のイメージがつきやすくなるかも?しれないです!

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

処理中です...