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聖女と巡礼
聖女巡礼メンバーにされてしまったみたいです。
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いつの間にか、眠っていたようだ。
だが、ここは何処??
自分にあてがわれていたあの部屋じゃない。
装飾品から、ロザリアン神聖国城内で間違いなさそうなんだけれど…
ゆっくりと身体を起こそうとしたけれど、残念ながら力が入らない。
「えっと……」
ゆっくりと考えを巡らせ思い出す。
聖女様達と一緒に向かった先。
そう、開けた場所に湖があって、その側の岩陰に淀んだ場所を見つけた。
聖女が浄化しようと思ったが、余りの酷さか自分で触れるのを拒否して…
そう、自分を媒介にして浄化したんだ。
その時に、自分の魔力もごっそりと奪われて…
そっか…魔力枯渇で倒れたんだ。
スレインに支えられたとこまでは、何となく覚えているけれど…
静かにドアが開けられた。
そっと入って来たのは…
「ディ?」
この気配は、僕の大切な人だ。
そう感じて呼んでみた。
急足で僕の側に来て、ガバッと抱きしめられた。
「カル…カル…うっ…う…」
抱きしめながら、肩が震えている。
僕の頬に冷たいものが落ちてきた。
「ディ?もしかして、泣いてる?」
「あぁ。無事で良かった。カル。カル。良かった~~~」
何とか手を伸ばして片方はディの背中に。もう片方はディの頭を撫でるように伸ばしてみた。
しばらくされるがままにお互いなる。
僕は抱きしめられ、ディは僕に撫でられる。
ある程度落ち着くと、ディはそっと僕の上から退き、今度は膝上に座らせるようにしてきた。
ベッドから出たいと言ってみたが、これは却下された。
どうせなら、ソファーの方に行きたかったんだけどな…
外が見えたら、もっと安心しそうな気がして…
「五日も意識が戻らなかったんだ。だからまだダメだよ。」
「えっ、五日?」
その間、僕はどうなってた?
特に、生理的なもの…
「俺が全て世話をした。魔力も使ってだ。体内浄化も使ったから大丈夫。」
「そうなんだ…でも、確か魔力枯渇だったよね。僕…」
一瞬何とも言えない表情をしてから、『そうだ』と肯定された。
魔力枯渇状態の場合。軽症に近い場合は一日寝てれば治る事もある。
二、三日眠るぐらいの状態なら、魔力提供か、癒しの力で何とか…
なら、五日も寝てしまっていた僕は??
「力加減もわからず、無理矢理媒体にされ、尚且つ力も奪い取ったんだ。かなり危険な状態だった。だから…」
そう言うと、僕のお腹をそっとさする。
その意味は…まさか…
「ここに直接俺の魔力を注ぎ入れた。それも何度もだ。竜人族の魔力量は膨大だからな。上手くいって良かったよ。」
そう言って、頬から首筋、鎖骨へと唇が、舌が這わされた。
「嘘だろ?意識のない相手を…えっと…」
「あぁ、抱いた。カルは私の『運命の番』であり、愛しい妻だ。私以外に誰がそんな行為をすると?他の者となど許せるとでも??」
「うん、許せないだろうね…僕も嫌だ。ディ以外は…でも、意識がない相手をするなんて…その…大変だよね…」
火照る顔を俯けて、ディから隠すようにしてそう伝えてみた。
本当、申し訳ないと思うよ。
自分から望んでそうなった訳ではないけれど、結果的にディに心配をかけて、迷惑もかけたんだから…
「ごめんなさい。そして、ありがとう。」
「謝罪は要らない。カルが悪い訳ではないことは理解している。だが、心配した。感謝の言葉は受け取る。が、別で礼は求めるがな。」
妖艶な瞳で覗かれた。
うん、これは逃れられない、決定された事なんだね…
「ロザリアン神聖国には、苦言と抗議を呈しておいた。後、聖女の行為をに対しても、それを止めようとしなかった者達にもだ。」
「えっと…」
「どんな状況であったかは理解している。状況証拠もあるから、カルは何も心配しなくていい。それに、良い友人を持ったな。スレイン君もカルの事を案じていたよ。」
そう言えば、スレインが駆けつけてくれて、抱き止められたんだ。
後でしっかりお礼を言いたい。
「カルを、浄化巡礼のメンバーから外させたいと申し出たんだが、それは教会側から強く拒否された。神が選んだ者であるからと。ただ、神聖国側からは、今後、今回のようなことはさせないと…。今までの聖女達のように、直接触れて浄化できないのであればと、特別な錫杖を準備して、お渡しすると言っていた。今度からそれが媒体となる。またカルを媒体にするようであれば、容赦しないとも告げておいた。巡礼メンバーの主な目的は、聖女が魔力枯渇を起こした場合においての魔力提供•譲渡だ。物のように扱うためではない。その事は重々理解させておいたから、安心して良い。」
だが、ここは何処??
自分にあてがわれていたあの部屋じゃない。
装飾品から、ロザリアン神聖国城内で間違いなさそうなんだけれど…
ゆっくりと身体を起こそうとしたけれど、残念ながら力が入らない。
「えっと……」
ゆっくりと考えを巡らせ思い出す。
聖女様達と一緒に向かった先。
そう、開けた場所に湖があって、その側の岩陰に淀んだ場所を見つけた。
聖女が浄化しようと思ったが、余りの酷さか自分で触れるのを拒否して…
そう、自分を媒介にして浄化したんだ。
その時に、自分の魔力もごっそりと奪われて…
そっか…魔力枯渇で倒れたんだ。
スレインに支えられたとこまでは、何となく覚えているけれど…
静かにドアが開けられた。
そっと入って来たのは…
「ディ?」
この気配は、僕の大切な人だ。
そう感じて呼んでみた。
急足で僕の側に来て、ガバッと抱きしめられた。
「カル…カル…うっ…う…」
抱きしめながら、肩が震えている。
僕の頬に冷たいものが落ちてきた。
「ディ?もしかして、泣いてる?」
「あぁ。無事で良かった。カル。カル。良かった~~~」
何とか手を伸ばして片方はディの背中に。もう片方はディの頭を撫でるように伸ばしてみた。
しばらくされるがままにお互いなる。
僕は抱きしめられ、ディは僕に撫でられる。
ある程度落ち着くと、ディはそっと僕の上から退き、今度は膝上に座らせるようにしてきた。
ベッドから出たいと言ってみたが、これは却下された。
どうせなら、ソファーの方に行きたかったんだけどな…
外が見えたら、もっと安心しそうな気がして…
「五日も意識が戻らなかったんだ。だからまだダメだよ。」
「えっ、五日?」
その間、僕はどうなってた?
特に、生理的なもの…
「俺が全て世話をした。魔力も使ってだ。体内浄化も使ったから大丈夫。」
「そうなんだ…でも、確か魔力枯渇だったよね。僕…」
一瞬何とも言えない表情をしてから、『そうだ』と肯定された。
魔力枯渇状態の場合。軽症に近い場合は一日寝てれば治る事もある。
二、三日眠るぐらいの状態なら、魔力提供か、癒しの力で何とか…
なら、五日も寝てしまっていた僕は??
「力加減もわからず、無理矢理媒体にされ、尚且つ力も奪い取ったんだ。かなり危険な状態だった。だから…」
そう言うと、僕のお腹をそっとさする。
その意味は…まさか…
「ここに直接俺の魔力を注ぎ入れた。それも何度もだ。竜人族の魔力量は膨大だからな。上手くいって良かったよ。」
そう言って、頬から首筋、鎖骨へと唇が、舌が這わされた。
「嘘だろ?意識のない相手を…えっと…」
「あぁ、抱いた。カルは私の『運命の番』であり、愛しい妻だ。私以外に誰がそんな行為をすると?他の者となど許せるとでも??」
「うん、許せないだろうね…僕も嫌だ。ディ以外は…でも、意識がない相手をするなんて…その…大変だよね…」
火照る顔を俯けて、ディから隠すようにしてそう伝えてみた。
本当、申し訳ないと思うよ。
自分から望んでそうなった訳ではないけれど、結果的にディに心配をかけて、迷惑もかけたんだから…
「ごめんなさい。そして、ありがとう。」
「謝罪は要らない。カルが悪い訳ではないことは理解している。だが、心配した。感謝の言葉は受け取る。が、別で礼は求めるがな。」
妖艶な瞳で覗かれた。
うん、これは逃れられない、決定された事なんだね…
「ロザリアン神聖国には、苦言と抗議を呈しておいた。後、聖女の行為をに対しても、それを止めようとしなかった者達にもだ。」
「えっと…」
「どんな状況であったかは理解している。状況証拠もあるから、カルは何も心配しなくていい。それに、良い友人を持ったな。スレイン君もカルの事を案じていたよ。」
そう言えば、スレインが駆けつけてくれて、抱き止められたんだ。
後でしっかりお礼を言いたい。
「カルを、浄化巡礼のメンバーから外させたいと申し出たんだが、それは教会側から強く拒否された。神が選んだ者であるからと。ただ、神聖国側からは、今後、今回のようなことはさせないと…。今までの聖女達のように、直接触れて浄化できないのであればと、特別な錫杖を準備して、お渡しすると言っていた。今度からそれが媒体となる。またカルを媒体にするようであれば、容赦しないとも告げておいた。巡礼メンバーの主な目的は、聖女が魔力枯渇を起こした場合においての魔力提供•譲渡だ。物のように扱うためではない。その事は重々理解させておいたから、安心して良い。」
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