竜の国のご都合主義?

文字の大きさ
上 下
137 / 269
聖女と巡礼

聖女巡礼メンバーにされてしまったみたいです。

しおりを挟む
その後は、ディは自分の用事があるからと、僕にキスをして出て行った。

「また後で。愛しているよ。」

そう言いながら、名残惜しそうにしながらだ。
浄化巡礼の旅に、各国から代表しての精鋭部隊。そう、護衛としてメンバーの中に入って同行してくれるらしい。
その為の調整が部隊内であるらしい。
一つの国だけの精鋭部隊ならそこまではないのだろうが、大陸全土の問題であるからと、各国から代表者として集められた臨時精鋭部隊であるから、統率などに問題があったりするんだろうなって思った。
お互いが譲れないものとかきっとあるんだろうし…
僕にはよく分からないことではあるけれど、ディは大丈夫だと笑っていた。

僕自身は、巡礼メンバーと探索及び討伐予定だ。
この城から近い場所でとりあえず練習みたいな感じだ。
この城の近くだからと、今回だけメンバー以外の同行者は、この国の第一騎士団の者達だった。
次回からは、各国から集められた精鋭部隊と行く予定なんだとか。
精鋭部隊の調整を今日やってしまうんだと騎士団の団長さんが言っていた。
団長さんは精鋭部隊には選抜されていないらしい。
副団長さんと、他数名。この国の各騎士団から選ばれた者がこの国からの代表として精鋭部隊に入っているらしい。
その者達は、今は抜けてそちらに参加中だとか。

騎士団に連れられて来た場所は、遠くにお城が見えるぐらいの距離だった。
お城から言うと、やや南東に位置する場所。
少しだけ小高い感じがする平原から更に南側に林が見えた。

「この向こう側が予定された場所となります。従来は住民の憩いの場である美しい湖があり、ピクニックやボート遊びなどで楽しんでいた場所です。残念ながら、各地の瘴気による魔獣被害の影響で、ここにも小さな魔素溜まりが頻繁に発生し、小柄ではありますが、魔獣が発生しています。多少、魔物の生息も確認されております。」

そう団長さんが説明してくれた。

聖女であるアイ様が、『魔獣と魔物、一緒じゃないの?凶暴な方が魔獣だよね?』って呟いていたから、それに関しては、ロザリアン神聖国の第二皇子であるルディウス殿下が説明されていた。

「なるほどね。うん、ありがとう。ルディ。」

そう言って飛びついてお礼を言っていた。
本来なら不敬に当たる行為であるが、相手は聖女。誰もその行為を咎める者は居なかった。
逆に、微笑ましい者を見るような感じで見守っていた。

僕とスレイン以外がだ。

スレインがそっと僕に耳打ちしてくる。

「やっぱり、『魅了』の力を使っている。無自覚かどうかは分からないけどね。僕にはとりあえずこれがあるから…」

そう言ってチラッと見せてくれたのはバングルだった。
妖精国のオリクサ王国の特製品だと言っていた。
遥か昔に何かあったのか?
いろんな事を考えて、対策として練られて作られた魔法道具の一つだろうと推測した。
詳しくは国家機密だろうから、聞かないでおこう。
自分から打ち明けてくれた分は別としてだ。

「カルは竜人族特有のモノを贈られてるから大丈夫なんだね。ホント、すごい効果だ。」

そう言いながら、学友であり、親友である彼から、ほんの少し冷やかされた。

「では、行きましょう。」

そう言って、二人一組で必ず行動するようにと注意されてから道を歩き始めた。
元々が憩いの場であった場所であるし、定期的に騎士や魔法師達が討伐や浄化などをしている場所であるから、倒木などで道が塞がれるなどはなかった。

でも、目的地に向かうごとにどんよりとした何とも言えない空気感。
空もその場所だけを雲で覆い隠そうとしているようだった。

湖の近く。そう、大きな岩陰のところに黒い澱んだものが見えた。
そこから、小さな黒い生き物が這いずるように出て来ていた。

「何あれ、気持ち悪~~~~」

うげぇ~っと言いながら舌を出す聖女。
何ともお下品だ。
向こうの女子高生ならでは?
皆んなが皆んなこんな女子高生ではないのは理解できるが…
うん、チャラチャラした感じの子だと思った。

騎士やメンバー達が聖女であるアイ様が側まで行けるように、這い出てくる魔獣を排除しながら道を開ける。
イヤイヤしながら、ルディウス殿下にわざとらしくしがみつき歩いて行った。

「何これ、臭~い。」

そう言って、ポケットからハンカチを取り出して鼻を塞いでいる。
それを苦笑いしながらも見守っているようだ。

「アイ。お願いします。」

そう言って促されるも、触るのも嫌なのか、なかなか動こうとはしなかった。
そして…

「ちょっと、カル、こっち来て!!」

そう言って僕を呼ぶ。
僕はスレインと一緒に魔獣を退かせていたところだった。

「呼んでるよ。」
「呼んでるね。」

二人で目を合わせて、僕は仕方なく側に行く。
スレインは何とも言えない表情で、心配そうに見守っていた。

「どうされましたか?」

呼ばれて側に行き、そう声かけると、ぐいっと掴まれて押された。
思わず両手を淀んだ中に突き入れて倒れ込む。
跪き、両手を突き入れた感じで倒れ込んだから、淀んだモノに触れたのは両手のみ。しかも、肘の近くまで入ってしまった。
そこからゾクゾクと気持ち悪い感じが這い上がる。
一瞬吐きそうになるも、今度は背中から温かいものを感じた。
聖女が僕の背中に触れて、僕を媒介にして浄化の力を流し込んだんだ。
一気に流れ込む感じで、身体がぐわっと反応した。
僕が触れている場所から光輝きだし、一挙に淀みが消えた。

「成功です。さすがだ。」
「聖女様。素晴らしい!!」

僕の背中から手を離し、クルッとみんなの方を見てからルディウス殿下に飛びついてみんなの元にかけて行った。
僕はその場に倒れ込むようにぐったりし、スレインが掛けて来て支えてくれた。

「大丈夫か?」
「あぁ、まるで魔法の杖のように媒介にされた…」

それだけ言って、意識が途絶えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

処理中です...