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聖女と巡礼
聖女巡礼メンバーにされてしまったみたいです。(ジャディール)
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あらかじめ伝令を送り訪れたのは、この国の最高峰。
神聖国教皇であり皇王である男の執務室。
向こうから、あえてこの部屋に来るよう指示されての訪問だ。
「ようこそおいで下さいました。アステード王国皇太子殿下及びジャディール王弟殿下。お会いできて光栄です。そして、お久しぶりです。」
そう言ってにこやかに笑っている。
ヒト族であり、先祖が神と人の子というだけあって長寿であり、神々しい雰囲気の男だ。穏やかそうな雰囲気を醸し出してはいるが、決してそうでない事は既に理解している。何度か我が国にも訪れているし、それに、あの当時のあの男の…
「立ち話も何ですから、まずはお掛けになってください。」
そう言ってソファーに座るよう促される。
素直にテーブルを挟み向かいに座る。
「お前達は外で待機してください。」
そう言うと、側に支えていた者達がそっと出ていった。
テーブルの上にはお茶とお茶菓子を準備してだ。
私達の部下は扉の外で待機中。
「どうぞ、お口に合えばよろしいのですが。」
そう言って勧められる。取り敢えず一口いただき…
「こちらに来られた理由は理解しています。王弟殿下。まずは婚姻おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。」
「ありがとうございます。」
取り敢えずお礼を伝える。
だが、ここからだ。
「今回、聖女巡礼のメンバーに選ばれたみたいですね。お二方を引き裂くような事は決して致しませんので、まずはご安心ください。一部暴挙に出ようとしたもの達もいたようですが、それはこちらで対処させていただきます。」
ニコニコしながらそう言われると、どう返すべきか…
そこから交渉が始まった。
我が国の皇太子から竜人族の事をご理解できているかの確認から始まり、対応するとは言え、この国の聖職者からの所管に対しての抗議。そして今回の件で我が国から巡礼に同行する者として私他数名がつく事を提案して同意を得た。
『竜人族の番であれば、当たり前のことです。』と素直に応じてくれたのは有り難いが、少し含みがあった気がする。
まぁ、取り敢えずはこれで大丈夫だろう。
明日この事も通知するとの事で、取り敢えずは席を外した。
「私達も、急ぎ対応決議する必要性がありますので。ですが、必ずお約束は守りますのでご安心ください。でないと、怒られますから…」
後の言葉は聞き取れにくいぐらい小声ではあったが、怒られるとはどういう事か?
もしや……
隣にいる皇太子は理解できなかったようだが、私には理解できた。
多分、カルに従っているあの者が手を回したのだろうと…
以前会わせてもらったあの者達の一人。
会合という密談が終わり、準備されてあてがわれている客室に戻った。
急いで悲しんでいるであろう新婚の妻に伝達魔法陣を飛ばす。
そう、もうあの子私のモノ。妻だ…
その後、兄にも報告として送っておいた。
皇太子からも送られているだろうが…
国王である兄からは、了解の返事をもらった。
カルからは、しばらく経って送られてきたが、うん、安心してくれたようだ。
無理をしないようにとも付け足されていた。
この心遣いがたまらない。
必ずあの子を守り通す。
私の愛しい者には何人たりとも危害を与えさせるつもりもない。奪わせもしない。
そう強く決意して、準備を行った。
神聖国教皇であり皇王である男の執務室。
向こうから、あえてこの部屋に来るよう指示されての訪問だ。
「ようこそおいで下さいました。アステード王国皇太子殿下及びジャディール王弟殿下。お会いできて光栄です。そして、お久しぶりです。」
そう言ってにこやかに笑っている。
ヒト族であり、先祖が神と人の子というだけあって長寿であり、神々しい雰囲気の男だ。穏やかそうな雰囲気を醸し出してはいるが、決してそうでない事は既に理解している。何度か我が国にも訪れているし、それに、あの当時のあの男の…
「立ち話も何ですから、まずはお掛けになってください。」
そう言ってソファーに座るよう促される。
素直にテーブルを挟み向かいに座る。
「お前達は外で待機してください。」
そう言うと、側に支えていた者達がそっと出ていった。
テーブルの上にはお茶とお茶菓子を準備してだ。
私達の部下は扉の外で待機中。
「どうぞ、お口に合えばよろしいのですが。」
そう言って勧められる。取り敢えず一口いただき…
「こちらに来られた理由は理解しています。王弟殿下。まずは婚姻おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。」
「ありがとうございます。」
取り敢えずお礼を伝える。
だが、ここからだ。
「今回、聖女巡礼のメンバーに選ばれたみたいですね。お二方を引き裂くような事は決して致しませんので、まずはご安心ください。一部暴挙に出ようとしたもの達もいたようですが、それはこちらで対処させていただきます。」
ニコニコしながらそう言われると、どう返すべきか…
そこから交渉が始まった。
我が国の皇太子から竜人族の事をご理解できているかの確認から始まり、対応するとは言え、この国の聖職者からの所管に対しての抗議。そして今回の件で我が国から巡礼に同行する者として私他数名がつく事を提案して同意を得た。
『竜人族の番であれば、当たり前のことです。』と素直に応じてくれたのは有り難いが、少し含みがあった気がする。
まぁ、取り敢えずはこれで大丈夫だろう。
明日この事も通知するとの事で、取り敢えずは席を外した。
「私達も、急ぎ対応決議する必要性がありますので。ですが、必ずお約束は守りますのでご安心ください。でないと、怒られますから…」
後の言葉は聞き取れにくいぐらい小声ではあったが、怒られるとはどういう事か?
もしや……
隣にいる皇太子は理解できなかったようだが、私には理解できた。
多分、カルに従っているあの者が手を回したのだろうと…
以前会わせてもらったあの者達の一人。
会合という密談が終わり、準備されてあてがわれている客室に戻った。
急いで悲しんでいるであろう新婚の妻に伝達魔法陣を飛ばす。
そう、もうあの子私のモノ。妻だ…
その後、兄にも報告として送っておいた。
皇太子からも送られているだろうが…
国王である兄からは、了解の返事をもらった。
カルからは、しばらく経って送られてきたが、うん、安心してくれたようだ。
無理をしないようにとも付け足されていた。
この心遣いがたまらない。
必ずあの子を守り通す。
私の愛しい者には何人たりとも危害を与えさせるつもりもない。奪わせもしない。
そう強く決意して、準備を行った。
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