竜の国のご都合主義?

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聖女がやって来るみたいです

聖女がやって来るみたいです(アカリ)

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初めはかなり動揺していたようだが、さすが皇王の冠をいただくだけある。
穏やかな表情を醸しながらも、王者の風格がある。

促されて座ったソファーは、うん流石だ座り心地がいい。
見た目はシックだけれど、質感とかが全然違う。
そんなどうでも良い事を一瞬考えたが、すぐに思考から排除した。

そう、当初の目的をしっかりと告げないといけない。

「初めまして。私の事、何となくでもわかるかしら?」

昔の聖女スマイルを思い出す。
当時この世界に来た時の私は十八歳。上京して大学に進学し、生活の足しにとアルバイトをしていたんだ。
その時の仕事用スマイルを聖女で活躍中よく使用していた。

あの当時はこの世界は結構荒れていて、驚きの連続だったけれど、聖女として召喚されて当時のボランティア精神も稼働させて笑顔を振りまいていた。
ほら、笑顔ってお金要らないし、顰めっ面のや辛そうな顔で接せられるよりもかなり友好的かつホッとして癒されたりするでしょう。だから、どんな困難な時にでもとにかく笑顔を絶やさないようにしていた。
泣くのは皆んなが見てない時。

まぁ、今は交渉のテーブルだから、笑顔でとにかく頑張ろう。
ふふふっ、負けないからね…

一瞬表情を強張らせた相手であるが、直ぐに姿勢を正して返事をしてきた。
うん、私の事は見た事があるのだろう。
多分神殿やこの城にも飾られている絵で。ただ、過去の人が今目の前にいる事が少し信じられないようだ。
そうだよね。それが普通だと思うよ。
もう、幽霊扱いだよね。いっそ『うらめしや~」って言った方が受けたかも…ふふふっ…

「『英霊召喚』ですか?それで呼び出された…」

そう小声で呟いていたが、それはスルーだ。

「この国の過ちを、また犯すおつもりか確認しにきたんですよ」

そう言って、ニコニコしてみる。
一瞬何の事かと首を傾げているが、それで流されてあげるつもりはない。

「私達聖女をこの世界の都合で呼び出し、それに応えて差し上げてきたはずなのに、この世界の人たちは私達のことをどう思っているんでしょうね」

そのセリフから、次々と追求していく。
無理矢理この世界に拉致されてきたと言っても良い。
片道通行。もう、元の世界に戻る事ができないという現状を受け入れてきた私達。
受け入れ、この世界の人たちのために貢献して生きてきた。
そんな私達の仲間を、この世界の一部の者達は、まるで物のように扱った。
その過ち、事件と言っても良い出来事をまた引き起こそうと言うのか!!


「ですから、この世界に渡ってきた者達の子供達を見守る事にしませんか?」

そう、この国で呼び寄せたのだから、守り見守るならよし。自分達の良いように利用する事は止めるように釘を刺した。
またこの世界の者たちは近々あの儀式を執り行うと聞いているのだから、我が主もそして次に呼ばれる者も自分達の都合の良い駒…物扱いは許せない!!

「仰る事は理解しました。確かに一部の者たちがその方をこの国にお呼びして、皇族の者か神殿の者と婚姻させようと動いているのは知っています。そして出来れば神殿に入っていただきこの国の象徴として今度お迎えする聖女様と共にと…番いの方がおられたのはこちらの情報不足です。申し訳ございません」

情報が入っていないと言う事はないだろうが、そうする必要性があるのだろう…

「では、その件は貴方がきちんと制御してくださいね」
「承知いたしました。ですが、事らからもお願いがございます」

何か嫌な予感がする。
マスターのこの能力を利用しようとでも考えた!?

「できましたら、時々我が国にお越しいただき…」
「了承しかねます。まだ私を‥私達を利用しようと!?」

思わず立ち上がってしまう。
もう、何なのこの男!!利用するなって言ってるのに、理解できないのでしょうか?

「いぇ、そう言うわけではないのですが…私個人として…」
「個人として??」
「時々相談したいなと思いまして…」

まぁ、これからまた大変な事が多く起こるであろうから、不安なのは理解できる。
理解できるんだけど…

「はぁ…………わかりかした。ただし、先ほどの事、きちんとお約束いただき実行していただいたら…もしもがあれば、どうなるか理解できますよね」
とりあえずの了承と、脅しもかけておく。
うん、あの時、あの人に教わった事だ…

「はい。では直ちに…」
「明日から…」
「いぇ、こう言う事は直ぐに取り掛かった方が良いんですよ」


そう言ってニコッと笑った。
うん、その笑顔はそっくりだ。

寝衣にガウンを羽織ったままの姿で部屋を出ていく。
誰かを呼んでいるのだろう。侍従と思われる人達が動き出したのを感じた。
もう此処には用がない。
さて、戻りますか…

姿を隠して霊道に通じる場所まで移動する。
周りが騒がしくなっているが、それは私には関係ない。
多分…

そっと霊道に入りマスターの元に戻って行った。
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