竜の国のご都合主義?

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聖女がやって来るみたいです

聖女がやって来るみたいです(アカリ)

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踏み入れた先は、大きな礼拝堂。
ここでは2人の神を中世的な像として設置し祀っていた。
多分、男性と女性だったと思う。まぁ、どっちでもいいんだけれどね。
あの神は時に女性体で男性体でと気分で姿を変えられるのだから…
その横には自分の像。
いつ見ても美化されていると思う。うん、恥ずかしい…

「相変わらず、ここにも私が祀られているのね…」

ポソっと呟き、現在熱心に祈っている者のそばに行く。

「こんにちは」

そう声をかけると、その者はゆっくりとこちらを向いた。

髪の色は違うけれど、私とよく似た顔立ちの女性。
歳は二十代前半ぐらいか。ただ…瞳は隠すようにレース状の白い布で隠されていた。

「ようこそおいでくださいました。お待ちしておりました。」

そう言って、綺麗な所作で挨拶される。
洗礼された高位神官がきる白い法衣を着こなした女性だ。
うん、やはり二十代前半だね。実年齢はわからないけれど…

この世界では、ある程度の年齢で成長が止まる者が多い。
理由は色々だけれど、必ずしも皆がそうとは限らないのだけれどね。

「初代聖女、アカリ•シンザキ様。私の代で初代様にお会い出来て光栄です。」
「あなたが今世の『アカリ』の名を継ぐもの?」
「はい、そうです。」

そう言って微笑む女性。
この世界に降りて、我が子の後から、『アカリ』の名を継承さた神官職となる者。
聖女やそれに関したもの達を守る為に、我が子や子孫に託した事柄をなしえる役職を持つ者。
その職務を守る者に私の名が継承されていった。
知ったのはもう一人の聖女から。生存時にはそんな話は出てなかったと記憶する。
記憶違いがあるかもしれないけれど。
教えてもらった後の私、過去の文献などから調べ上げて知った。

「今世の『アカリ』の名を継承する者。あなたに問いたいことがあるの、良いかしら?」
「はい。ここでは何ですから、こちらへ」

そう言って像の横にある扉を通り、部屋に入る。

「こちらは聖女様達が来られた時のみに使用する特別な部屋です。大賢者のアルストと英雄王、初代ロザリアン神聖国国王が作られた物で、しかもその後、神のご加護を賜った特殊空間になっております。」

そんな物が出来ていたのか…
確かに入り口には不思議な感触がしたが…

まぁ、今はその事は置いておこう。

部屋の中央に置かれているソファーに腰掛ける。
ゆっくりとくつろげる不思議な空間だった。

「それで、私に問うとは?」

テーブルに彼女自身からお茶を入れてもらい、彼女が座ってそう尋ねてきた。

「聞きたいのは神殿内部の動向。私からの依頼はそれについての阻止。」
「動向…ですか?」
「そう、私がこの世界に呼び出して下さったある方の事。」
「…『英霊召喚』を行った少年のことですね。確かアステード王国貴族席のご子息。母親が前回、聖女召喚の儀で一緒に来られた方…」
「そう、その少年をどうしようとしているのか。そして、本人の意思を無視して不幸に陥れる行動は阻止させてもらう」

私と同じ名のアカリをキツく見つめる。
全てを見透かすようにだ。

「確かに、その者をこちら側に来ていただき、その力とその方自身の身の上を考慮して、将来教皇の位に着いていただき、象徴としようとする考えを持つ者がおります。あのお方、精霊に愛されし者である女性のお子で、唯一の高位神聖視される象徴を持つカルロス•セイクリオン様をお迎えしてと…」

「できればお子をって事でしょ?それを諦めて辞めてもらいたいの。彼の方にはすでに『運命の番』がいるの。しかも竜人族の男性でアステード王国王弟殿下。その者から無理やり奪い取ろうとすると下手したら戦争にも成りかねない。混沌の世にさらに加速して近づくことになる。今、また『扉』が発見されて、聖女召喚の儀式が必要なぐらいになっているのでしょう?」




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