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アカデミー
アカデミー生活開始です。(ジャディール)
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入ってきた男は、さっき想像していた友人。
シルバーの髪、エメラルドグリーンの瞳を持つ紳士。
この国、アステード王国の公爵家の一つ、セイクリオン家の当主。アルホンス•セイクリオン本人だった。
私より二十歳年上の男だが、アカデミーでは同期だ。
これは『竜人族』の成長の特徴のせいだから、年齢が違っても、『成人して入学』という決まりにより、このような事はよく起こる。
「良い感じじゃないか。ここでのお前の巣穴だな。でも、学生時代はのびのびと学ばせてやりたいと思う親心を考慮してほしいな」
そう言いながら、置いてある本を一つ手に取って眺めていた。
「うん。懐かしいね。この本」
「わざわざ釘を刺しにきたのか?お前の時よりもかなり我慢しているんだがな」
「当時の彼女は、この国では成人していたからね。彼女がいた世界では…まだだったかもしれないが、そんな事は関係ない。だろ?」
「そうやって、俺に同意を得られてもな…俺の番だって成人しただろ?」
「そうだけれどさ、学生時代だから、友人とか色々な出会いとかさ。経験させてやりたいだろ?俺達みたいにさ」
そう言いながら、お茶を催促してくる。
仕方なく、コーヒーを準備して、テーブルに置いてやった。
菓子などはない。
まだこの部屋に準備してなかったのもあるが、あっても出してやりたくないと思った。
それぐらいは許してくれるだろう。
「で、何を教えるんだ?何でも得意だったろ?」
ニヤニヤしながら聞いてきた。
教えながらどれだけ彼に接触するつもりかと問いただしているのか?
まぁ、心配なのはわかるが、でしゃばられては困るんだけどね。
協力はしてもらうが…
「攻撃魔法や防御などの戦闘に特化した魔法術や、護身用としての体術の講師だ。あの子に変なムシが寄りつかないようにしっかりと教えてあげようと思ってね」
「ただ身体に触れたいだけではないのか?」
痛いところをついてくる。
体術だと、確かに身体に触れて教えるからな…
他の者に…
無理だ。許せない…
「まぁ、ほどほどに頑張って。それよりも、例の件だけど」
そう言いながら、遮音と防音、防御結界など何重にも展開してきた。
それだけ重要な話なんだろう。
アカデミーのセキュリティに引っかからないようにも考慮しているのは流石だ。
俺もできるが、こいつの方が速く正確に展開できるんだ。
「超得意だからね。これで大丈夫だろう。でだ、あの件はどうなっている?こっちの展開は…」
そう言って、この前起こった愛しい者の『拉致未遂事件』について情報交換を行う。
自分からあの転移陣に入って行ったとはいえ、拉致と認定しても良いだろう。
そのように仕組んでいったのだから。
相変わらず巧妙に仕組んでいくものだ。
前回は、こいつの妻、愛しい者の母親が狙われていた。
理由はわかっている。
わかっているが、許せない理由だ。
今回はその子供。
俺のモノに手を出した。
あの国にも要請はかけている。
助力は惜しまないと、協力してくれているが、なかなか難しいらしい。
あの国でも問題視されており、どうにかしたいと常々画策しているが、ちょうど良い決定打が掴めないらしい。
あの組織自体は悪いとは言い切れない。その中の一部だけだ。
悪い膿はとっとと除去したいが…
「なるほどね。上手くいかないね」
「そうだな。今は徹底的に護衛だ。せっかくのアカデミー生活の邪魔はしたくないからな」
「お前がそれを言う?くっ…くくくっ…ぶはははは」
腹を抱えて笑い出した。
「うるさい。人のこと言えないだろ?お前だってあの時酷かったんだからな!フォローする俺のことも考えて欲しかったよ」
「ははははっ…すまんすまん。あの時は助かったよ。だから、俺だって…ただ、俺の息子なんだよなぁ…」
まぁ、自身の子供が対象だから、理解できるがしたくないんだろう。
俺的には、すぐさま自分の中に囲い込んでしまいたいんだ。
アレは俺のモノなんだから。
捕らえて離さない。誰にも渡さないし、逃しもしない。
髪の毛ひとつさえ渡したくないぐらいだ。
涙を流させるのは、俺だけで良い。
俺の腕の中で…
「お~い、帰ってこ~い。大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だ。」
「そうか…あと、あの子は何か特別な力があるようだ。彼女と俺の息子だから、何らかの特別な力があったとしてもね。そんな些細な事、どおって事はないんだけどな~。まぁ、奴らにその事を知られるわけにはいけないから特に注意だ。確認もしたいけれど、本人から言ってもらいたいのもある。以前は少しは教えてもらえたんだけど、それ以外にもあるようでな…」
「そうだな…文献に少しだけ記載されている特殊な能力があるみたいだ。遠目で確認したけれどな…俺だからわかった感じだ。他の者達にはバレていない。あの子についている…あの子が召喚した者だ…」
「もっと詳しく…でも、ここではな…場所を移すか」
飲み干してしまったカップを片付ける。
そうして、展開していた陣を解き、二人で新たに展開した魔法陣で転移した。
シルバーの髪、エメラルドグリーンの瞳を持つ紳士。
この国、アステード王国の公爵家の一つ、セイクリオン家の当主。アルホンス•セイクリオン本人だった。
私より二十歳年上の男だが、アカデミーでは同期だ。
これは『竜人族』の成長の特徴のせいだから、年齢が違っても、『成人して入学』という決まりにより、このような事はよく起こる。
「良い感じじゃないか。ここでのお前の巣穴だな。でも、学生時代はのびのびと学ばせてやりたいと思う親心を考慮してほしいな」
そう言いながら、置いてある本を一つ手に取って眺めていた。
「うん。懐かしいね。この本」
「わざわざ釘を刺しにきたのか?お前の時よりもかなり我慢しているんだがな」
「当時の彼女は、この国では成人していたからね。彼女がいた世界では…まだだったかもしれないが、そんな事は関係ない。だろ?」
「そうやって、俺に同意を得られてもな…俺の番だって成人しただろ?」
「そうだけれどさ、学生時代だから、友人とか色々な出会いとかさ。経験させてやりたいだろ?俺達みたいにさ」
そう言いながら、お茶を催促してくる。
仕方なく、コーヒーを準備して、テーブルに置いてやった。
菓子などはない。
まだこの部屋に準備してなかったのもあるが、あっても出してやりたくないと思った。
それぐらいは許してくれるだろう。
「で、何を教えるんだ?何でも得意だったろ?」
ニヤニヤしながら聞いてきた。
教えながらどれだけ彼に接触するつもりかと問いただしているのか?
まぁ、心配なのはわかるが、でしゃばられては困るんだけどね。
協力はしてもらうが…
「攻撃魔法や防御などの戦闘に特化した魔法術や、護身用としての体術の講師だ。あの子に変なムシが寄りつかないようにしっかりと教えてあげようと思ってね」
「ただ身体に触れたいだけではないのか?」
痛いところをついてくる。
体術だと、確かに身体に触れて教えるからな…
他の者に…
無理だ。許せない…
「まぁ、ほどほどに頑張って。それよりも、例の件だけど」
そう言いながら、遮音と防音、防御結界など何重にも展開してきた。
それだけ重要な話なんだろう。
アカデミーのセキュリティに引っかからないようにも考慮しているのは流石だ。
俺もできるが、こいつの方が速く正確に展開できるんだ。
「超得意だからね。これで大丈夫だろう。でだ、あの件はどうなっている?こっちの展開は…」
そう言って、この前起こった愛しい者の『拉致未遂事件』について情報交換を行う。
自分からあの転移陣に入って行ったとはいえ、拉致と認定しても良いだろう。
そのように仕組んでいったのだから。
相変わらず巧妙に仕組んでいくものだ。
前回は、こいつの妻、愛しい者の母親が狙われていた。
理由はわかっている。
わかっているが、許せない理由だ。
今回はその子供。
俺のモノに手を出した。
あの国にも要請はかけている。
助力は惜しまないと、協力してくれているが、なかなか難しいらしい。
あの国でも問題視されており、どうにかしたいと常々画策しているが、ちょうど良い決定打が掴めないらしい。
あの組織自体は悪いとは言い切れない。その中の一部だけだ。
悪い膿はとっとと除去したいが…
「なるほどね。上手くいかないね」
「そうだな。今は徹底的に護衛だ。せっかくのアカデミー生活の邪魔はしたくないからな」
「お前がそれを言う?くっ…くくくっ…ぶはははは」
腹を抱えて笑い出した。
「うるさい。人のこと言えないだろ?お前だってあの時酷かったんだからな!フォローする俺のことも考えて欲しかったよ」
「ははははっ…すまんすまん。あの時は助かったよ。だから、俺だって…ただ、俺の息子なんだよなぁ…」
まぁ、自身の子供が対象だから、理解できるがしたくないんだろう。
俺的には、すぐさま自分の中に囲い込んでしまいたいんだ。
アレは俺のモノなんだから。
捕らえて離さない。誰にも渡さないし、逃しもしない。
髪の毛ひとつさえ渡したくないぐらいだ。
涙を流させるのは、俺だけで良い。
俺の腕の中で…
「お~い、帰ってこ~い。大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だ。」
「そうか…あと、あの子は何か特別な力があるようだ。彼女と俺の息子だから、何らかの特別な力があったとしてもね。そんな些細な事、どおって事はないんだけどな~。まぁ、奴らにその事を知られるわけにはいけないから特に注意だ。確認もしたいけれど、本人から言ってもらいたいのもある。以前は少しは教えてもらえたんだけど、それ以外にもあるようでな…」
「そうだな…文献に少しだけ記載されている特殊な能力があるみたいだ。遠目で確認したけれどな…俺だからわかった感じだ。他の者達にはバレていない。あの子についている…あの子が召喚した者だ…」
「もっと詳しく…でも、ここではな…場所を移すか」
飲み干してしまったカップを片付ける。
そうして、展開していた陣を解き、二人で新たに展開した魔法陣で転移した。
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