竜の国のご都合主義?

文字の大きさ
上 下
36 / 269
驚きは急にやってくる

誕生日

しおりを挟む
「うん。まぁ~そんな感じだ。」

父の返答は歯切れが少し悪い。
母への執着を、子ども達がどう思っているのか考えて、恥ずかしいのだろうけど、多分その行為は変わらないんだろうが…

「カル。私に君の魔力を流してもらえるかい?」

そう言って、ジャディールがもう片方の手も握ってきた。
相手に魔力を流す場合、両手を相手の身体の何処かに触れさす必要があるからだ。
でも、そんなに握りしめる必要はないと思うんだけど…

「さぁ」

そう促され、言われるまま僕の魔力を少しづつ増やしながら流していく。
ひょっと不快に思われたら、すぐに止める必要があるからだ。
いきなり多く流して『痛い』とか、『気持ち悪い』と強く感じるのは嫌だろうし…
僕なら嫌だ。

「うん。やっぱりカルの魔力は気持ち良い。(食べてしまいたいほど)」

ん?何やら副音声が聴こえてきたような…気のせいだよね?

「『ヒト族』の魔力は、他種族に対して適応してると聞きますから、そのせいだと思いますよ?」
「そうだね。でも、誰のよりも心地良いし、君から漂ってくる香りも良い匂いだ…。うん。(全てを食べ尽くしたいぐらい)」

そう言って堪能している感じだ。また何やら不穏な声が聴こえてきた?
その後、一呼吸して…

「今度は私のを流すね」

そう言うと、僕の魔力を押し返し、殿下の魔力が僕の中に流れ込んできた。
優しく染み渡る感じで…

「あっ…」

思わず吐息の様な変な声が出た。

普通は痛みや気分不快が出るはずだ。
強いか弱いかはあるけれど…
手加減もしてくれるだろうけど…
でも、そんな感じは全然ない。
良い匂いがする。何の匂いだろうか…
嗅いだことがある匂いだけど、今はただボ~ッとしてしまい、頭の中が真っ白に染まる。
気持ち良い………
身体がふわふわしてきた。

さらに抱きしめられる感じがする。
そして、唇に柔らかく、温かいモノが触れながら、衣服の緩みを感じる。
首筋を辿り、ねっとりとしたものを感じて…

「イッ…」

チクッとした感じから、グッと入り込む感じがする。まるで貪られる…喰われる感じだ…
でも、恐怖はない…それに、思ったほど痛みは襲いかかってこなかった。
何かが身体の中に流れ込んで、そこから拡がる…
熱が……そして、強く心地よい香りに包まれる…
何なんだこれ??

そして、またねっとりとした感じがした。


「あ~あっ、ジャディール。やりすぎだ。そこまで…」
「ふん。お前にそんな事言われたくない。自分だってあの時、有無も言わさず膝の上に乗せて抱き込んで、今の俺が行った事と同じ事をしただろうが…あの時は理解しかねたが、今ならわかるよ。コレは私のモノだ。誰にも傷つけさせないし、渡さない。逃しもしないが…あぁ…もうしっかり私の『刻印』がついた。あの時はただマーキングしただけだったからな…」

「おい、俺の場合はそこまでしてない。俺の大事な息子に『刻印』までつけやがって!」
「ふん!どれだけ待ったと思う。この前奪われかけたんだ。マーキングで何とか対応したが、何やら別の力も…それより、あの件はどうなったんだ?こっちの調べたのは伝えただろ?あの件は情報共有のはずだが!」

「あぁ、わかっている。あの件は…まだ十分な進展はしていないが、後でまた伝える。それよりも…」
「一時的なものだ。数時間で治る。だから、少し休ませてくる。」

そう言って、優しく撫でられた。
抱きしめられている感覚もある。
でも、会話は聞こえるが、ぼーっとしていて、考えが…

「そうだ。私のモノだ…誰にも渡さない…」

そっと抱き上げられ、まるで自分の屋敷のように、僕を抱き込んだまま、誰にも触れさせないように抱きしめ連れて行かれた。
ドアが閉まる前に聞こえた父の声。

「私の時もそうだったが…まぁ…何とも言えないなぁ…すまん」

そう呟く部屋の父を残して…

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

処理中です...