竜の国のご都合主義?

文字の大きさ
上 下
35 / 269
驚きは急にやってくる

誕生日

しおりを挟む
「失礼します」

ノックの後、父の許可を得て、室内に入る。
もちろん、僕専属であるジャスも入室してくるもの…と思ったのに、部屋の外。廊下で待機するみたいだ。
何か重要な話しなのか?

部屋には、えっと?
何であの人が??

あの時の、あの人だよね?

凄く豪華な軍服。しかも、あの色は王族にしか許されない色だったか?
それを、かっこよく着こなしている。
って、どうして王族?
確かに僕の家は上位貴族だけど、でも何で??
父の友人?
でも、僕、関係ないよね??

「お客様が来られていたのですね。失礼いたしました。また後で…」
「あぁ、大丈夫だ。しかしよく似合っているな~。そうそう、紹介しよう。こちらはジャディール•アステード殿下。私の古くからの友人でもあるが、この国の王弟殿下だ。殿下。これは私の末っ子。今日の主役のカルロス・セイクリオン。親しい者達方は、愛称の『カル』と呼んでいまし。」

退出は叶わず、父にそう紹介されたからには、僕からも…

「初めまして、セイクリオン家嫡男。カルロス・セイクリオンと申します。よろしくお願いします。」
「こんにちは。私はジャディール•アステード。『ディ』って呼んでくれるかい?私も君のことを『カル』と呼ばせてほしい。王弟ではあるけど、王位継承権は破棄しているから、気楽に接してくれるとありがたい。特に君には…」

僕、普通に…そう、きちんと挨拶できたよね?
マナー講師に教えられた通りに、上位者に対して敬意を持っての挨拶を…
なのに、なんで?
どうしてこの人は、こんなふうに僕に対応をしてくるんだ?

客人であるその男性は、なぜか嬉しそうに微笑んで、しかも、女性にするように僕の手を取ったまま傅き、僕の…そう、僕の手の甲に唇を落としてそう言って見上げてきた。
しかも、その表情は……

ボンと音が出そうなぐらいに顔が…しかも、『ヘッ??????』と変な声が出て、固まってしまうのは仕方がないと思う。
何で?ナンデ?なんで?

「あ~っ、殿下。その辺にして頂けますか?」

片手で顔を押さえながら苦笑する父がそう言うと、客人は『そうだな』と名残惜しそうに立ち上がった。
でも…手、離してほしい…

「立ち話も何だ。うん。座ろうか」

父は諦めたようだ。何でそんな表情?
何で???

頭の中は『?』マークでいっぱいだ。
促されるまま、ソファーに座る。
座るんだけど、なぜか客人は僕の手を握ったまま隣に座ってきた。
せめてものと、距離を取ろうとズズズっと避けてみた僕は悪くない。
悪くないはずなのに、『逃がさない』とでも言うように、しっかりと握りしめながら隣に…


「あの…」
「何かな?」

そう言われたら、何と言えばいいのだろうか?
父の友人とはいえ、王族。下手に不敬罪に問われたら困ってしまう。
そこは、父が…どうにかしてくれるだろうが…

「殿下…はぁ…………もう良いですよ。あ~~っ、カル。この国の『竜人族』の習性というか…うん。『番』についての概念とか知っているだろう?」
「ヘッ?『番』ですか?」

今この場で『番』とか関係ないだろ?えっと、あるの??

一瞬ポカンとしてしまうが、慌てて気を取り直して答えた。


『竜の国』は竜人が国を起こしたとされ、竜人が治めている。
他国もそんな感じだ。そして、他国同様にその国を表せている種族がその国で多く住んでいる。例えばこの国で住んでる住人は、『竜人族』が一番多いが、『ヒト族』『妖精族』『魔人族』『獣人族』など、多種族が住んでいるだ。
あと、婚姻において、この世界、性別は男女あるが、男女問わず、同性•別種族間でも可能となっていた。
あと、『ヒト族』以外には『番』という特別な感覚がある。
『ヒト族』にも関係はしてはいるんだけれど、『ヒト族』は、別に番でなく、特に同種族間で番以外でも婚姻する事があるんだ。

普通、『番』の見分け方は、相手からの匂いや、魔力感知。お互いの魔力を流すことでの理解できる。
『番』でない者から魔力を流されれば、痛みや不快感が強く出るんだ。
ただこれは、親族間。そう、両親と兄弟、そして祖父母や自身の子供達。まぁそのぐらいまでは他種族でも大丈夫らしい。
血族間の繋がりだろうか…

ただ、『ヒト族』の魔力は澄んでいて、どの種族にも馴染みやすいという、『欠点のような利点』がある。
『ヒト族』から魔力を流されると、違和感を感じないのだ。下手すれば心地良さを感じる事もあるらしい。
逆の場合は、『番』でない他種族。そう、『ヒト族』以外から魔力を送られれば、他の種族と同様の拒否反応が出る。
そして、『ヒト族』の匂いに関しては、『香水でもつけた?』みたいな感じで、魔力を相手から流されない限り、『番』を見つけるのが下手なのだ。
だから、国によっては『運命の番』が見つからない場合、一方的な『番』にさせられ、子を孕む事もあるらしい。

まぁ、この『欠点のような利点』の能力で、治療師や魔力を使って作られるポーションを作成したりする職種に『ヒト族』が多いのだ。
魔力量や能力にもよるから、みんなが皆んなつけれる職種とは言い切れないけれどね。

それでもって、寿命に関しては、種族によって違うんだが、『番』の場合は長寿の種族の寿命まで生きられる事が多いとか。
『竜人族』は秘術で相手が亡くなるまでとの事だった。僕は『ヒト族』だから、詳しくはまだ教えてもらっていない。そう言う方法があると言うだけ。
それだけ、『竜人族』は『番』に対しての執着が強いんだ。

父と母を見たら理解できる。
公の場では抑えてるみたいだけど、日頃の父は母にベッタリだ。
余程の事がない限り、目の届くところにいつも母がいるようにしている。
そして、子ども達が呆れるほど、母に甘い。

『竜人族』の兄も、初めは馬鹿にしていたけど、実際自分の身になると…
父とほぼ一緒だ。
頑張って自制してるみたいだけど…うん。一緒だ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

伯爵家のいらない息子は、黒竜様の花嫁になる

ハルアキ
BL
伯爵家で虐げられていた青年と、洞窟で暮らす守護竜の異類婚姻譚。

処理中です...