竜の国のご都合主義?

文字の大きさ
上 下
17 / 269
驚きは急にやってくる

不穏な影…

しおりを挟む
カツンカツンと靴音を鳴らしながら歩いて行く。

『長年の望みを、やっと手に入れれる』そう期待しながら、黒いローブ姿の男性だった。

地下に向かう階段を降り、目的地に向かう。
ギィーっと独特な金属音が周りに響き渡り、気にせずさらに奥に向かった。

従来の地下に部屋がある場合、じめじめとした湿気と、独特な空気の重たさを感じるが、この場所は特別な魔法を行使して作り上げた傑作の空間だ。
特別なモノを閉じ込めるために用意した…いわゆる『鳥籠』又は『箱庭』。

ここに送られて来るはずのモノを待ち侘びる。
一度きりの特別仕様の魔法陣。
自ら構築した。

「もう直ぐだ…」

この場所に…
この鳥籠には、特別性の鎖も準備した。
特別なモノが逃げ出さないように、逃げ出す気も起こさせないように、地下室ではあり得ない小さな庭園も作ってみた。

あの時、本当に欲しかったモノは、もはや手の届かないモノになってしまった。
が、その代わりのモノを見つけ、手に入るため、虎視眈々と狙っていた。
可愛らしい、俺の獲物。
俺のモノだ。

魔法陣が起動した事を知らせるように、光り輝いた。

「さぁ、俺の手の中に…」

期待しながら、手を握りしめる。
もう少し…

「なっ…何故だ!!」

光がいきなり揺らぎ、消えた。

「どういう事だ!!どうなっている!!」

背後に密かに控える黒ずくめの者達に激昂する。
背後にいる黒ずくめの者達も、『あり得ない』と、動揺が走った。

なぜだ!?なぜ…

魔法陣に手を翳し、確認する。
一度きりしか発動しないように、あえて構築したのが仇となったのか…

一方通行の魔法陣。
あのモノをここに手繰り寄せる為のもの…

そっと触れると…過去に触れた事のある気配に似ているように感じた。
同じヤツのでは無い。
だが、過去に触れたものと、同族の者。側にいた者か…
まさかと思うが…

「くそッ!!」

今回のために、どれだけ時間と金が動いたのか…
またしても…

いゃ、まだチャンスはあるはずだ。
絶対に諦めない!!


「今回関わったものは、退避させろ。新たな者を送り込む。気取られてはならん。確実に手に入れるのだ!!」
「はっ」

控えていた者達は、すぐさま飛び出すように出ていった。

苛つく心をどうにか抑え込む。
どうしても欲しいモノ。
アレは俺のモノだ。
今度こそ…我が手に…

手のひらに魔力を集め、用無しとなった魔法陣の残滓を消し去る。
まるでそこには最初から何も描かれていなかったように、綺麗な床が現れた。

初めて見たモノは、『聖女召喚の儀式』の時。
魔力枯渇で倒れ込み、うっすらと見えたあの…
あの後、直ぐに動けば、今頃は手に入れれたのかもしれない。
時が悪かった…
『瘴気』が各地に発生し、『異世界の扉』。そう、『悪魔』と呼ばれるものがこの世界に降臨しようとしていた。
混沌の世界にする訳にはいかず、他国と協力し、召喚した『聖女』と共に排除していった。
自分はそのメンバーには入れなかったが、それでも…

あの時、もう一人現れたモノ…
手に入れたかったモノは、トカゲに掠め取られたと言ってもいい…
もう二度と手に入れ慣れないと絶望した。
そして、研究にのめり込んだ…

数年が経ち、手に入れられなかったモノの子息として、この世に生を得た。
『黒髪』と『黒い瞳』を持ち。
その姿を遠目で確認し、魔力に驚き歓喜した。
『今度こそ…手に入れる。手に入れて、自分のものとし、研究し尽くす』

新たな闘志に燃え、扉を閉め、元来た道を戻る。

「クックックッ…待っていろ…」

そう笑い、呟く音が響いていった…






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき(藤吉めぐみ)
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

処理中です...