12 / 269
驚きは急にやってくる
やっと…(ジャディール)
しおりを挟む
辺境の地。この屋敷で静かに本を読んでいた。
王都の屋敷にはそれなりに人は雇っていたが、この屋敷には必要最低限にして…
兄に後継者たる子供達ができ、継承権の順位もその分下がった。
近衛騎士団も、甥っ子に任せた。
兄達には王都で手伝ってもらいたいと言われたが、どうしても我慢出来なくなる大切な者ができた。
この世界に現れた大切な愛しい者。
そう、十六年前に突然湧き上がる…何とも言えない感情…
どうしても我慢できず会いに行った。
自分のモノ。自分の獲物。逃してはいけない。逃がさない。捕らえないと…
そう感じるままに…引き寄せられるように訪れた屋敷。
そこは、見知った者の屋敷だった。
屋敷内は、さっきまで騒がしくなっていたようだ。
今は喜びなどで、落ち着いていた。
姿と気配を完全に消し去り、誰にもわからないようにして…窓をそっと開けて中に入り、気になる気配を探す。
それは…可愛らしい小さなベットで眠っていた。
「壊れそうだ…」
興味のまま、そっと頬を指でさする。
泣くかと思ったが…何故か微笑まれた気がした。
たまたまそう見えただけかもしれないが…
小さな手を指でそっと撫でると、クッと握り締められた。
「可愛い…このまま連れて帰ってしまいたい。私のだ…私の…」
そう呟きながら抱き上げて、額に、頬にと唇で触れた…
そして…
愛しい者に集中しすぎたのか、人が入ってきたのに気がつかなかった…
「殿下?」
入ってきたのはこの屋敷の主人…そして、私の友…
知った者に見つかって、悪戯がバレた子供のようにビクッとした。
そんな自分におどきもした…
「急に押しかけてしまい、すまない…」
室内をあえて灯もつけず、月明かりだけを頼りに近づいてきた友に謝罪する。
彼はかなり驚いたようだが、屋敷の者を驚かさないよう配慮してくれていた。
赤子が目を覚まし、泣き出すかもしれない…という考慮もあったのだろう…
そう思うも…
この閉じている瞳が開けたら、どんな感じで自分が映し出されるのだろうか…
この子の瞳は…
また愛しい者に、思考が持っていかれた。
「可愛いでしょ。魔力が多いのか、髪は黒色。瞳もそうですよ。そしてヒト族の男の子です」
「そうか…」
「もしかして…君の…」
「あぁ、そうだと思う。誰にも渡したくない…自分のモノだと…」
はぁ…………
大きくため息を吐かれたが、こればかりは…
「まだダメですよ。成人するまでは、見守るだけにしてくださいね」
「わかっている…」
彼とのやりとりと、愛しい者との出会いを映像のように思い出す。
まだ待たなくてはいけない…
近くにいると、我慢出来なくなる…
だから…あえて辺境のこの地に…
友から手紙をもらい、魔録石に録画された映像を眺めて過ごした。
自分の手の者にも護らせている…
どうしても我慢が出来なくなれば、遠くから見守った。
そうしながら待ち侘びた…
そんな大切な者が…
座っていた椅子を勢いよく倒し、立ち上がる。
持っていた本は、粉々に砕けて燃えた…
安全な場所であったはずなのに…
「私のモノを奪おうとするとは…」
室内が魔力の暴走のせいか荒れ狂う。
愛しい者に密かにかけた守護の結界。
手繰り寄せるように魔力を辿らせ、相手の思惑を妨害する。
奪われるわけにはいかない。
許せない!!!
奪おうとする引き寄せる力を全力で粉砕し、自分の元に手繰り寄せる様に魔力を練り放ったが、もう少しの所で張った糸が切れたように、フッと消えた。
大きく目を見開き、空を見る。
なぜだ??
敵の手には落ちてはいない…
だが、どこに行った…
「どうされましたか!!」
嵐が去ったかのような室内に、執事や侍従達が慌てて駆け込んできた。
王都の屋敷にはそれなりに人は雇っていたが、この屋敷には必要最低限にして…
兄に後継者たる子供達ができ、継承権の順位もその分下がった。
近衛騎士団も、甥っ子に任せた。
兄達には王都で手伝ってもらいたいと言われたが、どうしても我慢出来なくなる大切な者ができた。
この世界に現れた大切な愛しい者。
そう、十六年前に突然湧き上がる…何とも言えない感情…
どうしても我慢できず会いに行った。
自分のモノ。自分の獲物。逃してはいけない。逃がさない。捕らえないと…
そう感じるままに…引き寄せられるように訪れた屋敷。
そこは、見知った者の屋敷だった。
屋敷内は、さっきまで騒がしくなっていたようだ。
今は喜びなどで、落ち着いていた。
姿と気配を完全に消し去り、誰にもわからないようにして…窓をそっと開けて中に入り、気になる気配を探す。
それは…可愛らしい小さなベットで眠っていた。
「壊れそうだ…」
興味のまま、そっと頬を指でさする。
泣くかと思ったが…何故か微笑まれた気がした。
たまたまそう見えただけかもしれないが…
小さな手を指でそっと撫でると、クッと握り締められた。
「可愛い…このまま連れて帰ってしまいたい。私のだ…私の…」
そう呟きながら抱き上げて、額に、頬にと唇で触れた…
そして…
愛しい者に集中しすぎたのか、人が入ってきたのに気がつかなかった…
「殿下?」
入ってきたのはこの屋敷の主人…そして、私の友…
知った者に見つかって、悪戯がバレた子供のようにビクッとした。
そんな自分におどきもした…
「急に押しかけてしまい、すまない…」
室内をあえて灯もつけず、月明かりだけを頼りに近づいてきた友に謝罪する。
彼はかなり驚いたようだが、屋敷の者を驚かさないよう配慮してくれていた。
赤子が目を覚まし、泣き出すかもしれない…という考慮もあったのだろう…
そう思うも…
この閉じている瞳が開けたら、どんな感じで自分が映し出されるのだろうか…
この子の瞳は…
また愛しい者に、思考が持っていかれた。
「可愛いでしょ。魔力が多いのか、髪は黒色。瞳もそうですよ。そしてヒト族の男の子です」
「そうか…」
「もしかして…君の…」
「あぁ、そうだと思う。誰にも渡したくない…自分のモノだと…」
はぁ…………
大きくため息を吐かれたが、こればかりは…
「まだダメですよ。成人するまでは、見守るだけにしてくださいね」
「わかっている…」
彼とのやりとりと、愛しい者との出会いを映像のように思い出す。
まだ待たなくてはいけない…
近くにいると、我慢出来なくなる…
だから…あえて辺境のこの地に…
友から手紙をもらい、魔録石に録画された映像を眺めて過ごした。
自分の手の者にも護らせている…
どうしても我慢が出来なくなれば、遠くから見守った。
そうしながら待ち侘びた…
そんな大切な者が…
座っていた椅子を勢いよく倒し、立ち上がる。
持っていた本は、粉々に砕けて燃えた…
安全な場所であったはずなのに…
「私のモノを奪おうとするとは…」
室内が魔力の暴走のせいか荒れ狂う。
愛しい者に密かにかけた守護の結界。
手繰り寄せるように魔力を辿らせ、相手の思惑を妨害する。
奪われるわけにはいかない。
許せない!!!
奪おうとする引き寄せる力を全力で粉砕し、自分の元に手繰り寄せる様に魔力を練り放ったが、もう少しの所で張った糸が切れたように、フッと消えた。
大きく目を見開き、空を見る。
なぜだ??
敵の手には落ちてはいない…
だが、どこに行った…
「どうされましたか!!」
嵐が去ったかのような室内に、執事や侍従達が慌てて駆け込んできた。
29
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる