聖獣と聖女と黒騎士と

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出逢い

あれ?

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翌朝、目が覚めると、横たわっているはずの男性がいない。
掛けていた物は綺麗に畳まれ、整えられていた。

元気になって動けて出て行ったのであればいいけど、何も言わずに出て行くのはどうかと思うが…いない者に文句を言っても仕方がない。

というか、知らない場所に連れ込まれて、不振がって出て行ったのかもしれないし…

部屋が荒らされてる事もないし、ハリーもレダも特に変わった感じがないから、まぁいっか…
そんな感じで気に留める事をやめた。

外に水汲みがてらに顔を洗おうと出ると……いないと思った人がいた。
家の中の引水用の水桶は確認していないが、外に置いてある水桶には水が汲み置かれ、袖を捲って薪割りをしてくれている男性が…

昨日のあの状態で、今こんなに動いて大丈夫なのかと心配してしまうが…

「あっ、おはよう!」

いきなり爽やか笑顔で、声をかけてきた。
乙女心をくすぐる様な低音ボイス。
手当した時も思ったが、程よく鍛えられた身体…
いわゆるスリムマッチョだ。
そして、何処の貴公子?王子様?何て思えるほどの…

一瞬見惚れてしまったのは仕方がないとして……

こんなに元気になるものなの?
あの怪我は何処へいった?
治療はしたけどさ……

首に巻いた布で汗を拭きながら、近寄ってきた。

「勝手にしてすまない。何故かきれいに傷が治って、調子が良いものだから、お礼にと…」

「あぁ、手当のお礼に水汲みにと薪割りをしてくれたのか…確かに薪は少なかったから助かる…じゃなくて、怪我、大丈夫なんですか?」

手当したのは確かに自分。だけど…だけどよ…!?

思わず服を剥ぎ取ってしまった。上着だけど…
男はされるがままで、抵抗しなかった。
普通、するとは思うんだけど、私の迫力に負けたのか?

だけど…だけどよ…

傷が…無い…
いや、薄らとはそれらしい跡はある。よく見ないとわからないぐらいの…
でも…

「君、癒しの力を持ってるんだね。凄いよ。古傷は全て消えていて驚いた。新しい傷は殆どわからないぐらいだ。それも、徐々に消えて行く感じがする。感謝しかない。ありがとう」

傷を確認した後、地べたに座り込んでしまった私を抱き上げながら、そう声をかけながら、家の中に運び込まれた。
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