上 下
89 / 97
新婚生活

異世界へ

しおりを挟む
急に明るく開けた場所に出た。
不思議な空間だ。
見たこともない花々が咲き乱れ、ふわふわと光の玉や蝶のような翼を持つ者が飛び交っている。

ゆったりとした気持ちで、愛しい者と訪れたい場所ではあるが、今の私にはただ鬱陶しく感じるのみだった。


「エリオス!」
「はいはい。もう少し先ですね。イライラして振り払わないでくださいね。そうそう、お前達も近づかないように。殺しますよ」

半ば本気なのか冗談なのか、エリオスがそう言いながら、ふわふわと飛び交う者達を払い除けていく。
飛び交う者達は慌てたように花々や木の影などに隠れていった。

「ふふっ、相変わらずですね。私の愛子達を虐めないでくださいね。」

そう言いながら、ふわりと銀髪と白い肌、エメラルドの瞳を持つ女性と、金髪の褐色の肌を持ち、ルビーの瞳を持つ男性が現れた。

「エリオス。久しぶりですね。元気にしてましたか?」
「そちらは…いつも愚息がお世話になっております。」

穏やかに微笑む2人に、エリオスは苦虫を噛み砕いたような表情をする。

「お久しぶりです。元気にしていましたよ。もうイライラするぐらい元気です。父上達も健在で何よりです。それよりも…」
「エリオス!」
「ハイハイ、わかってますよ。王はどちらに?」
「この先の泉ですよ。」

そう言って、2人に案内される。
草花が自然と道を開け、その道を進むと、大きな樹の丘を中心に泉が見えた。
泉には不思議な花が咲き、そこから妖精が生まれていた。
それを微笑みながら見つめる女性とも思える美丈夫いた。

「王よ、連れてまいりました。」

そう声をかけるのは、エリオスの父だ。

ゆっくりと表を上げ、こちらを見つめられると、一瞬引き込まれる錯覚を起こす。
さすが精霊王ということか…
だが、そんな事は関係ない。
私の愛しい宝を、妻を拉致したのはそちら側の者なのだから

「初めてお目にかかる。このような不躾な訪問を許して頂き感謝する…が…」
『それ以上は言わなくても分かっています。私の者達が失礼な事をして申し訳なかった。』

透き通るような声で、そう謝罪の言葉を言われると、強く言えない……が、しかしだ…

『貴方の大切な方は今ここにはおりません。少し離れた場所にいるようです。本来ならば私が案内するか、そちらにお送りするべきなのですが、今はこの様に妖精達が誕生している時期でして、ここを離れるわけにはいかないのです。こちらの都合で申し訳ありませんが、ご了承ください』

「はいそうですか……なんて頷けるわけがない。そんなもの、私には関係がないのだから。私の妻を連れ去ったのはそちらの者。直ぐに返していただこう。でなければ…相手が貴方のでも関係ない」

『人の子は血の気が多い。まぁ、彼の子孫なら仕方がない事なのだけれど…返さないとは言ってはいない。私が行けないだけです。フィー、彼らを案内してあげて下さい。後、あの子達には後でお仕置きだと伝えて下さいね』
「かしこまりました。我が王」

それだけ話すと、精霊王は微笑みながら送り出してくれた。
今は繁殖期か何かなのだろうか…
大切な時期かも知れないが、そんなもの関係ない。
もしかして、そのために彼女は連れて行かれたのか?

「それは、否定できませんね。正解……とも言い切れませんが。時期ですかねぇ」

穏やかに微笑みながらエリオスがそう答えた。

「何か知っているならそう言え。他に隠している事はないのか?」
「もうすぐで、つくみたいですよ」

はぐらかされた。だが、事を急ぐから、後で覚えていろよ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる

仙桜可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。 清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。 でも、違う見方をすれば合理的で革新的。 彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。 「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。 「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」 「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」 仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。

王子妃シャルノーの憂鬱

cyaru
恋愛
イーストノア王国ではルマンジュ侯爵子息のオーウェンの度重なる無礼に遂に殴り飛ばしてしまったシャルノーはサウスノア王国の第三王子チェザーレに嫁ぐ事になってしまった。 問題児と定評のあるチェザーレは顔合わせの時からやはり問題児だった。 初夜は行わないと言うチェザーレを「バカにしないで!」と一蹴し襲うようにシャルノーは初夜を済ませた。 問題だらけのサウスノア王国の助けになればと1人奮闘するシャルノー。 そんなシャルノーを見て段々と現実を受け入れるようになったチェザーレ。 初夜しか行為はなかったのに、シャルノーが身籠ってしまったことが判明する。 だがチェザーレが婚約破棄となった元婚約者のヴィアナをまだ思っている事を知る。 寄り添おうとしても拒むチェザーレにシャルノーは「勝手に思っていればいい」と敷地内別居を始める。 「認めてもらえるよう、夫として父親としてやり直したい」と悪阻で苦しむシャルノーに謝罪するチェザーレにシャルノーは「最初で最後だから」とチャンスを与えた。 だが、そこに領地に行ったはずの元婚約者のヴィアナが王都に戻り、チェザーレに会いに来た。 ※愛しいあなたに真実は不要だった。のスピンオフ的なものです。シリアスっぽい所もありますが笑える話は一応、一応ですが目指しています。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。

サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。

ゆちば
恋愛
ビリビリッ! 「む……、胸がぁぁぁッ!!」 「陛下、声がでかいです!」 ◆ フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。 私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。 だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。 たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。 「【女体化の呪い】だ!」 勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?! 勢い強めの3万字ラブコメです。 全18話、5/5の昼には完結します。 他のサイトでも公開しています。

【完結】強制力なんて怖くない!

櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のエラリアは、十歳の時に唐突に前世の記憶を取り戻した。 どうやら自分は以前読んだ小説の、第三王子と結婚するも浮気され、妻の座を奪われた挙句、幽閉される「エラリア」に転生してしまったらしい。 そんな人生は真っ平だと、なんとか未来を変えようとするエラリアだが、物語の強制力が邪魔をして思うように行かず……? 強制力がエグい……と思っていたら、実は強制力では無かったお話。 短編です。 完結しました。 なんだか最後が長くなりましたが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
前世コミュ障で話し下手な私はゲームの世界に転生できた。しかし、ヒロインにしてほしいと神様に祈ったのに、なんとモブにすらなれなかった。こうなったら仕方がない。せめてゲームの世界が見れるように一生懸命勉強して私は最難関の王立学園に入学した。ヒロインの聖女と王太子、多くのイケメンが出てくるけれど、所詮モブにもなれない私はお呼びではない。コミュ障は相変わらずだし、でも、折角神様がくれたチャンスだ。今世は絶対に恋に生きるのだ。でも色々やろうとするんだけれど、全てから回り、全然うまくいかない。挙句の果てに私が悪役令嬢だと判ってしまった。 でも、聖女は虐めていないわよ。えええ?、反逆者に私の命が狙われるている?ちょっと、それは断罪されてた後じゃないの? そこに剣構えた人が待ち構えているんだけど・・・・まだ死にたくないわよ・・・・。 果たして主人公は生き残れるのか? 恋はかなえられるのか? ハッピーエンド目指して頑張ります。 小説家になろう、カクヨムでも掲載中です。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。 何もしていないのに冤罪で…… 死んだと思ったら6歳に戻った。 さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。 絶対に許さない! 今更わたしに優しくしても遅い! 恨みしかない、父親と殿下! 絶対に復讐してやる! ★設定はかなりゆるめです ★あまりシリアスではありません ★よくある話を書いてみたかったんです!!

処理中です...