上 下
78 / 97
自国を思い

連れ帰る

しおりを挟む
彼女の自宅にお邪魔する。
家の者達は、少し驚き、戸惑っていたが、私が来るだろう事は想像できていたようだ。
流石だと思う。

リビングに案内され、ソファーでお茶を頂きながら、愛しい者の帰りを待つ。
迎えに行くことも、婚儀のことも全て伝えていたからね。

しばらくして、帰って来たようだ。
さて、捕らえるか……


「信じられない………。なんでここにいるのよ!!」

彼女の一声はそんな驚きの声だった。
当たり前でしょ。妻にすると言っているのだから、迎えに来るのは……
目を見開いて、プルプルしている姿も愛らしいな。

「ラフィ、お帰り。迎えにきたよ。」
「迎えって……」

そう文句を言っている彼女の側に行くため、すっと立ち上がり、近づく。
ラフィは、ジリジリと後退するも、コンパスの差は歴然だ。
壁に追い詰め、逃がさない。

両手で逃げ道を塞ぎ、少し屈んで覗き込む。
頬を朱に染めて、潤んだ瞳で見上げられた。
恥ずかしそうだね。でも、その表情はダメだ。
他の者に見せれない。
そして、私を煽らないで……
可愛すぎるだけだから…

「ふふっ、顔が赤いね。可愛い。」
「可愛いじゃないわよ。嬉しいけど……じゃなくて、どうしてここにいるの!!」
「ん?迎えにきたって言ったよ。言っただろ、逃がさないって。どんな手を使ってもね。」

彼女が両手で私の胸を押して、少しでも空間を作ろうと頑張るんだけど、離れる気はないしね……

「私もそれなりに鍛えてるからね。君に負ける気はしないよ。君より弱い夫は嫌でしょ?」

そう言って、頬に口づけた。
自分の城なら、直ぐに押し倒したいけど、ここはラフィの自宅。
我慢は辛いなぁ……

「もう、里帰りは良いだろう?マリッジブルーなのはわかるけどね。」
「まだ、結婚するって決まってない。婚約もしてないのに。」
「そうだね、私から無理強いの婚約だものね。これを渡した時点で、私の妃なんだけどね。」
「そんな、騙し討ちみたいな……」
「そうだね。でも、これを渡す以前から打診はしてたんだ。君と出会って直ぐにね。それから、君にそんな相手が来ないように色々と……」

「色々って……何かしたの……」
「ふふっ、君が私のものだって知ってもらってただけだよ。色んな国の人達にね。ちなみに、この国ににもね……」

そう言いながら、彼女の髪を一房摘んで、もて遊ぶ。

いろいろしたよ。
当たり前でしょ。
威圧もしたし、部下を使って近寄らさなかった。
場合によっては、力でねじ伏せたが……それは秘密だ。
まぁ、楽しかったけどね……君は知らない……

「君の学園生活でも、私の部下をもぐらせたり、僕自身も密かに会いに行ったりしたんだ。スリリングで楽しかったよ。君の闘う姿もゾクゾクした。国に戻っても、剣術はして良いよ。騎士になりたいと言うのは少し無理があるけど、騎士服を着て城内を歩いたりするのも許すよ。まぁ、他の男たちの目には見せたくないんだけどね。既婚者ぐらいなら、許すかもね…」

「ちょっと待ってよ。今日初めてお城で聞いただけなんだよ。そんなにどんどん話を進めないで…」
「進めないと、君は直ぐに立ち止まり、気がついたら、回れ右で逃げるでしょ?言ったはずだ。逃がさないって。離さないとも言ったはずだよ。」
「でも……」
「あまり我がままで、ここにいると言うのなら、無理矢理連れて帰るよ。例えこの国を滅ぼしても……」

少し過激発言をする。
でも、そのくらいやりかねないんだよね……
来なかったら滅ぼすみたいな……

私の一族は少し特殊だから……
昔はそれが嫌だったんだけど、君に出会ってから、良かったと思っているよ。
使えるものは使わせてもらう。


「まぁ、それは冗談だけどね。」

彼女がホッとしていたら、向こうで呟いている。

「あれは、半分本気だ……」

そう聞こえて来る。
よく理解しているね…

「式の準備は我が国でしたら良いよ。君の母君が準備したドレスを着ても良い。ただし、長居無用。行くよ。そうそう、お前たちも来るんだろ?自力で来る?そうしてくれる?じゃ、待ってるよ。」

そう言うと、彼女をさらに抱き込んだ。
もう良いだろ?帰ろう……
一気に魔力展開して転移。
勿論、我が城の彼女の部屋。

「ふふっ、お帰り。少しは自由を堪能できたね。」

そう言うと、彼女の意識が途切れた。

「このままお仕置きしようと思ったんだけどなぁ……ラフィは私を焦らす天才だね。」

そう呟いて、ベッドに寝かせた。

「起きたら、覚悟してね……」

彼女を見下ろし、舌舐めずりしたのも、内緒だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が消えた後のこと

藍田ひびき
恋愛
 クレヴァリー伯爵令嬢シャーロットが失踪した。  シャーロットが受け取るべき遺産と爵位を手中にしたい叔父、浮気をしていた婚約者、彼女を虐めていた従妹。  彼らは自らの欲望を満たすべく、シャーロットの不在を利用しようとする。それが破滅への道とも知らずに……。 ※ 6/3 後日談を追加しました。 ※ 6/2 誤字修正しました。ご指摘ありがとうございました。 ※ なろうにも投稿しています。

【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。 何もしていないのに冤罪で…… 死んだと思ったら6歳に戻った。 さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。 絶対に許さない! 今更わたしに優しくしても遅い! 恨みしかない、父親と殿下! 絶対に復讐してやる! ★設定はかなりゆるめです ★あまりシリアスではありません ★よくある話を書いてみたかったんです!!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません

黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。 でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。 知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。 学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。 いったい、何を考えているの?! 仕方ない。現実を見せてあげましょう。 と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。 「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」 突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。 普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。 ※わりと見切り発車です。すみません。 ※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)

【完結】王子妃教育1日無料体験実施中!

杜野秋人
恋愛
「このような事件が明るみになった以上は私の婚約者のままにしておくことはできぬ!そなたと私の婚約は破棄されると思え!」 ルテティア国立学園の卒業記念パーティーで、第二王子シャルルから唐突に飛び出したその一言で、シャルルの婚約者である公爵家令嬢ブランディーヌは一気に窮地に立たされることになる。 シャルルによれば、学園で下級生に対する陰湿ないじめが繰り返され、その首謀者がブランディーヌだというのだ。 ブランディーヌは周囲を見渡す。その視線を避けて顔を背ける姿が何人もある。 シャルルの隣にはいじめられているとされる下級生の男爵家令嬢コリンヌの姿が。そのコリンヌが、ブランディーヌと目が合った瞬間、確かに勝ち誇った笑みを浮かべたのが分かった。 ああ、さすがに下位貴族までは盲点でしたわね。 ブランディーヌは敗けを認めるしかない。 だが彼女は、シャルルの次の言葉にさらなる衝撃を受けることになる。 「そして私の婚約は、新たにこのコリンヌと結ぶことになる!」 正式な場でもなく、おそらく父王の承諾さえも得ていないであろう段階で、独断で勝手なことを言い出すシャルル。それも大概だが、本当に男爵家の、下位貴族の娘に王子妃が務まると思っているのか。 これでもブランディーヌは彼の婚約者として10年費やしてきた。その彼の信頼を得られなかったのならば甘んじて婚約破棄も受け入れよう。 だがしかし、シャルルの王子としての立場は守らねばならない。男爵家の娘が立派に務めを果たせるならばいいが、もしも果たせなければ、回り回って婚約者の地位を守れなかったブランディーヌの責任さえも問われかねないのだ。 だから彼女はコリンヌに問うた。 「貴女、王子妃となる覚悟はお有りなのよね? では、一度お試しで受けてみられますか?“王子妃教育”を」 そしてコリンヌは、なぜそう問われたのか、その真意を思い知ることになる⸺! ◆拙作『熊男爵の押しかけ幼妻』と同じ国の同じ時代の物語です。直接の繋がりはありませんが登場人物の一部が被ります。 ◆全15話+番外編が前後編、続編(公爵家侍女編)が全25話+エピローグ、それに設定資料2編とおまけの閑話まで含めて6/2に無事完結! アルファ版は断罪シーンでセリフがひとつ追加されてます。大筋は変わりません。 小説家になろうでも公開しています。あちらは全6話+1話、続編が全13話+エピローグ。なろう版は続編含めて5/16に完結。 ◆小説家になろう4/26日間[異世界恋愛]ランキング1位!同[総合]ランキングも1位!5/22累計100万PV突破! アルファポリスHOTランキングはどうやら41位止まりのようです。(現在圏外)

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

婚約をなかったことにしてみたら…

宵闇 月
恋愛
忘れ物を取りに音楽室に行くと婚約者とその義妹が睦み合ってました。 この婚約をなかったことにしてみましょう。 ※ 更新はかなりゆっくりです。

迷子の会社員、異世界で契約取ったら騎士さまに溺愛されました!?

ふゆ
恋愛
気づいたら見知らぬ土地にいた。 衣食住を得るため偽の婚約者として契約獲得! だけど……? ※過去作の改稿・完全版です。 内容が一部大幅に変更されたため、新規投稿しています。保管用。

処理中です...