75 / 97
自国を思い
事実を知らされて……
しおりを挟む
「まず、結果から言うと、戦争は終結した。」
従兄でありこの国の皇太子である、エドリックことエド兄様がそう口を開いた。
兄と同い年13歳年上のエド兄様。
穏やかに微笑みながらも、目は決して笑わず、お茶を口にしながら、長い脚を組んでそう話す。
「敵は隣国であるアーガル国だ。かの国は、ちょうど国王が病に倒れていてね、皇太子もこの前亡くなられて、第二皇子と第三皇子間で紛争が起こっていたようだ。攻めて来たのは好戦的な第二皇子。この国を占拠して、自国に手柄を表明し、皇太子及び国王になるつもりだったようだ。どの国にも間者が潜んでたりするからね。あの砦にも潜んでいて、演習時に爆薬を仕掛け、混乱させての進行だったようだ。」
そんなお家騒動に、この国を巻き込まないで欲しい。
「でね、君がいなくなってしまったから、彼が動いたみたいなんだ。」
「???」
「ラフィがよく知っている人物だよ。ハインリッヒ殿下。隣国、エスレラルドの王太子の。彼からの手紙も届いている。我が父と私宛に。内容はどちらも同じだけどね。君を助けた時、君がかなり傷ついていて怒りが爆発したんだろうね。あの国、思いっきり報復されたみたいだよ。国を潰すまではしなかったけど、第二皇子は闇に葬られ、第三皇子が国王に即位することになった。彼とは親交があったみたいでね。ほんと、上手く他の者を黙らせたよ。」
…………
「この国のを侵した者達は全て捕らえ、彼の国の法で裁いたらしい。我が国には慰謝料として、隣国からの提案を持ってきて、三国同盟も結ぶ運びになった。」
「はぁ………」
「でだ、以前から打診はあったんだけどね……」
エド兄様が、少し言いにくそうにしている。
なんだろう……
「エスレラルドより正式に王太子であるハインリッヒ殿下との婚姻請求が来てる」
「請求ですか?申込でなくて?」
「そうなんだよね~~、ほら、ラフィ、彼からの何か貰ってない?」
何のことだろうか…………
もしや………
胸元にあるネックレスを取り出す。
これ、外せないから、エド兄様に渡して見せる事が出来ない……
「もしかして……これのことですか?」
兄様が近づいて少し手に取り見ている。
チェーンを引っ張られる感じで、少し苦しいのですが……
「そう、これだね。これなんだか知ってる?」
「お守りと言ってつけられましたが……」
「お守り……とも言えるね。うん。これはね、エスレラルドの皇太子が、皇太子妃に贈るものだよ。国宝だね。俗に言うマーキングだ。」
「へ!?」
「自分の所有物。だから、何処にいてもわかるし、守る事もできる。お守りで間違いないよ。」
「そんなの、聞いてない。父様も言ってなかったし……」
「言えないだろうね。国同士の問題も関係するし、でも、そのおかげでラフィは無事だし、この国も助かった。敵に回したら怖い相手だけど、味方にしたら心強いね。彼自身、ラフィの事が大切なようだし、僕自身もラフィの事を考えたら、彼がいいと思ったよ。彼以外なら、全力で阻止するつもりだったしね。」
「うっ………」
「父上とかも知っているよ。君の家族もね。知らないのは君だけだ。ほら、騎士になるって頑張ってたから、彼も少しは待つから、彼女の好きにさせて欲しいって手紙来てたし……」
「そんなの知らないし……酷い……」
エド兄様が、そっと抱きしめて来た。
「ラフィ、黙っていてごめんね。でも、みんな君の幸せを願っていたんだ。君が生まれて来た時、天使だと思ったんだよ。そして、全力で守るって決めたんだ。従兄でなかったら、私のお嫁さんにしたいぐらいにね。」
「う~~~~~~」
「君が彼を魅了したんだ。そして、彼は君を求めて、君を守るために強くもなり、まぁ、恐怖にもなったか……」
エド兄様は、顔を覗き込むようにしてきた。
「ラフィ、君も彼に魅かれてるだろ?隠してもダメだよ。私にはわかるから。それだけ見てきたしね。」
否定はしませんが、なんだか兄様に丸め込まれてます…
「それに、王命で叔父上や叔母上にも通達しているから。母上も君のウエディングドレスを考えてデザイン中だったか、製作中だったか…」
この国の皇帝であるアデル皇帝、エド兄様の父は、私の母、ナディアの弟。
父、カリム近衛騎士団団長との婚儀で、アデル皇帝にかなり助けてもらったらしいから、文句は……あまり言わないだろう。母と叔母上は友人関係で、仲良しさんだから、多分楽しんでドレスを作っている事が想像できる。
しっかり、周りから責められてた………
横にいた兄は苦笑いだ。
知ってたのか?後で文句言ってやる~~~~
大きなため息をついて、執務室を出て、自宅に戻った。
従兄でありこの国の皇太子である、エドリックことエド兄様がそう口を開いた。
兄と同い年13歳年上のエド兄様。
穏やかに微笑みながらも、目は決して笑わず、お茶を口にしながら、長い脚を組んでそう話す。
「敵は隣国であるアーガル国だ。かの国は、ちょうど国王が病に倒れていてね、皇太子もこの前亡くなられて、第二皇子と第三皇子間で紛争が起こっていたようだ。攻めて来たのは好戦的な第二皇子。この国を占拠して、自国に手柄を表明し、皇太子及び国王になるつもりだったようだ。どの国にも間者が潜んでたりするからね。あの砦にも潜んでいて、演習時に爆薬を仕掛け、混乱させての進行だったようだ。」
そんなお家騒動に、この国を巻き込まないで欲しい。
「でね、君がいなくなってしまったから、彼が動いたみたいなんだ。」
「???」
「ラフィがよく知っている人物だよ。ハインリッヒ殿下。隣国、エスレラルドの王太子の。彼からの手紙も届いている。我が父と私宛に。内容はどちらも同じだけどね。君を助けた時、君がかなり傷ついていて怒りが爆発したんだろうね。あの国、思いっきり報復されたみたいだよ。国を潰すまではしなかったけど、第二皇子は闇に葬られ、第三皇子が国王に即位することになった。彼とは親交があったみたいでね。ほんと、上手く他の者を黙らせたよ。」
…………
「この国のを侵した者達は全て捕らえ、彼の国の法で裁いたらしい。我が国には慰謝料として、隣国からの提案を持ってきて、三国同盟も結ぶ運びになった。」
「はぁ………」
「でだ、以前から打診はあったんだけどね……」
エド兄様が、少し言いにくそうにしている。
なんだろう……
「エスレラルドより正式に王太子であるハインリッヒ殿下との婚姻請求が来てる」
「請求ですか?申込でなくて?」
「そうなんだよね~~、ほら、ラフィ、彼からの何か貰ってない?」
何のことだろうか…………
もしや………
胸元にあるネックレスを取り出す。
これ、外せないから、エド兄様に渡して見せる事が出来ない……
「もしかして……これのことですか?」
兄様が近づいて少し手に取り見ている。
チェーンを引っ張られる感じで、少し苦しいのですが……
「そう、これだね。これなんだか知ってる?」
「お守りと言ってつけられましたが……」
「お守り……とも言えるね。うん。これはね、エスレラルドの皇太子が、皇太子妃に贈るものだよ。国宝だね。俗に言うマーキングだ。」
「へ!?」
「自分の所有物。だから、何処にいてもわかるし、守る事もできる。お守りで間違いないよ。」
「そんなの、聞いてない。父様も言ってなかったし……」
「言えないだろうね。国同士の問題も関係するし、でも、そのおかげでラフィは無事だし、この国も助かった。敵に回したら怖い相手だけど、味方にしたら心強いね。彼自身、ラフィの事が大切なようだし、僕自身もラフィの事を考えたら、彼がいいと思ったよ。彼以外なら、全力で阻止するつもりだったしね。」
「うっ………」
「父上とかも知っているよ。君の家族もね。知らないのは君だけだ。ほら、騎士になるって頑張ってたから、彼も少しは待つから、彼女の好きにさせて欲しいって手紙来てたし……」
「そんなの知らないし……酷い……」
エド兄様が、そっと抱きしめて来た。
「ラフィ、黙っていてごめんね。でも、みんな君の幸せを願っていたんだ。君が生まれて来た時、天使だと思ったんだよ。そして、全力で守るって決めたんだ。従兄でなかったら、私のお嫁さんにしたいぐらいにね。」
「う~~~~~~」
「君が彼を魅了したんだ。そして、彼は君を求めて、君を守るために強くもなり、まぁ、恐怖にもなったか……」
エド兄様は、顔を覗き込むようにしてきた。
「ラフィ、君も彼に魅かれてるだろ?隠してもダメだよ。私にはわかるから。それだけ見てきたしね。」
否定はしませんが、なんだか兄様に丸め込まれてます…
「それに、王命で叔父上や叔母上にも通達しているから。母上も君のウエディングドレスを考えてデザイン中だったか、製作中だったか…」
この国の皇帝であるアデル皇帝、エド兄様の父は、私の母、ナディアの弟。
父、カリム近衛騎士団団長との婚儀で、アデル皇帝にかなり助けてもらったらしいから、文句は……あまり言わないだろう。母と叔母上は友人関係で、仲良しさんだから、多分楽しんでドレスを作っている事が想像できる。
しっかり、周りから責められてた………
横にいた兄は苦笑いだ。
知ってたのか?後で文句言ってやる~~~~
大きなため息をついて、執務室を出て、自宅に戻った。
0
お気に入りに追加
258
あなたにおすすめの小説
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません
黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。
でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。
知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。
学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。
いったい、何を考えているの?!
仕方ない。現実を見せてあげましょう。
と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。
「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」
突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。
普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。
※わりと見切り発車です。すみません。
※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
迷子の会社員、異世界で契約取ったら騎士さまに溺愛されました!?
ふゆ
恋愛
気づいたら見知らぬ土地にいた。
衣食住を得るため偽の婚約者として契約獲得!
だけど……?
※過去作の改稿・完全版です。
内容が一部大幅に変更されたため、新規投稿しています。保管用。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる