番だと言われて囲われました。

文字の大きさ
上 下
23 / 60
お互いを知ることから……

何かしないと

しおりを挟む
どれだけ眠ったのだろうか…身体が軽い。
ゆっくりと身体を起こす。

白銀が膝の上に乗ってきた。
子狐の姿で。
そっと頭を撫でてやる。
目を細めて嬉しそうだ。

「白銀、私はどのくらい寝たの?今は何時頃だろうか……カイルは……」

無理やり寝かせたであろう人を思い浮かべる。
心配かけたのか……
知ることが今の自分に必要と思い、読みあさってしまった。

知ったこと、今までの事を紙に書き綴りながら…

読めても、この国の言葉はまだ書けない。
だから、日本語で。

以前カイル に覗かれたけど、綺麗な模様のようだと言われた。

過去の秘蔵書の中にも、そんな模様を書かれた物があるらしいが、まだ全てが解読できていないとか……
一般に知られていない者の文字だから……というのもあるのかもしれない。
今度読んでみよう。どの場所にあるか聞かないと……

この国の言葉は、現在勉強中だ。
自分の国を知ろうとしてくれるとカイルは喜んでいたが、やり過ぎると止められる。
今回のように……

『兄様、またこんな所で寝てる。』
そう言って、掛け物を掛けてくれていた妹達。
今はどうしているのだろうか……無事なのか……
ふと思い出す。

『番』に関しての書籍をいくつか読んだが、帰ったという記録はない。
女性が来られることが多いようだが、中には自分のような男性もいなくはなかった。
髪の色や瞳の色も色々だった。日本人だけではないようだ。

「帰れないのか……」

呟いてしまう。
戦場に戻りたいわけでは無い。
母や妹達に会いたいと思っただけだ…

この世界で生きて行かないといけないことは理解した……というか、諦めた。
だから、自分自身どう生きるのかを模索している。
カイルとの関係も含めて……

初めは敵だと思い警戒した。次に戸惑った。
今も戸惑うことが多いが……
彼なりの優しさも感じている。

「友人……いや、親友ぐらいには……友人以上恋人未満……それとも、ほだされて、恋人になり始めているのか…」

白銀を撫でながら呟く。
白銀は答えない。ただ聞いてくれるだけ…

「いつまでも、このままではいけないんだろうけど…」
いつも熱い視線を向けてくるカイル。
我慢させていることもわかる。
わかるんだが……同性だから………

悩んでも仕方がないかもしれないが…

「亜希子、幸子。会いたいよ…私はどうしたら良い?」

少し女々しいだろうか…

いつも笑いながら、色んな話をしてくる妹達。
明るく元気にはしゃぐ幸子と、母親の手伝いを良くしているためか、しっかり者の亜希子。

落ち込んでいたら、叱られるかもしれない。
笑いながら励ましてくれるかも知れないけど…
側にいない妹達。

「「兄様、頑張って。大丈夫だよ~」」

そう言ってくれる気がする。

「ウジウジしても仕方ないですね……行きますか。」

白銀が膝から飛び降りる。
ベットから降りて、外を眺める。
足元にまとわりつく白銀を抱き上げて…

「心配させてすみません。」

フワフワの毛並みを堪能する。
癒される。
そして、そのまま部屋を出た。

カイル に何か手伝えることはないか聞いてみよう。
自分に出来ることは多くはないかも知れないが……
ただ側に居るだけで……なんて事を言われても困るし…何かしないと…と思う。

だから、カイルの元に向かう。
自分から会いに行く事はあまりない。

行って、忙しそうなら………時間を取ってもらおう。
少しだけ足取りが軽くなった。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

ある国の皇太子と侯爵家令息の秘め事

きよひ
BL
皇太子×侯爵家令息。 幼い頃、仲良く遊び友情を確かめ合った二人。 成長して貴族の子女が通う学園で再会し、体の関係を持つようになった。 そんな二人のある日の秘め事。 前後編、4000字ほどで完結。 Rシーンは後編。

嫌われ変異番の俺が幸せになるまで

深凪雪花
BL
 候爵令息フィルリート・ザエノスは、王太子から婚約破棄されたことをきっかけに前世(お花屋で働いていた椿山香介)としての記憶を思い出す。そしてそれが原因なのか、義兄ユージスの『運命の番』に変異してしまった。  即結婚することになるが、記憶を取り戻す前のフィルリートはユージスのことを散々見下していたため、ユージスからの好感度はマイナススタート。冷たくされるが、子どもが欲しいだけのフィルリートは気にせず自由気ままに過ごす。  しかし人格の代わったフィルリートをユージスは次第に溺愛するようになり……? ※★は性描写ありです。

「じゃあ、別れるか」

万年青二三歳
BL
 三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。  期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。  ケンカップル好きへ捧げます。  ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。

【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。 家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...