兄様達の愛が止まりません!

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悪役令嬢回避

希望(ギルベルト)

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屋敷についてもレインはよく眠っていた。
俺はレインが落ちないように、愛馬にもたれるようにしながらも、気をつけた。そして、俺が先に下りてからレインをもう一度抱きしめるように下ろしたんだ。
愛馬は俺の意図を理解してくれているようで、大人しくしてくれていたんだ。

侍従の一人に馬を任し、レインの侍女達が「御運びしますから…」と言ってくれたが、俺が離したくないから、「自分が運ぶから、ベットの準備を」と言いつけたんだ。

湖までの遠乗りや、湖での『主様と妖精事件』で疲れたんだろう。
そっと魔力を流してやり、少しでも癒されればと思っていたんだ。
ベットに横にさせて、あとは侍女達に一旦任せたんだ。
俺自身も着替える必要性があるから…。
清浄魔法っててもあるのだが~、あぁ、侍従達がそれを許しはしないだろう。
浴槽にはられた湯にゆっくりと浸かり、湖での事を思い出していた。

実際に主を見たのは初めてだ。その存在は知ってはいたが…。
後、妖精というものも初めて見た。
エルとレインのおかげで見る事ができたんだが…初めは全然見えなかったんだ。
あんなものが、これから起こるといっていた事に、関係していると思えば…
どう対処すれば良いのか…

だが、一つ分かった事がある。
いや、もっとか…

エルの魔力操作で妖精を捕らえる事ができるという事だ。
捕まえて、どうこうしようという訳ではない。
ただ、エルが捕らえたことにより、レインが『妖精のイタズラ』で連れ攫われる事は阻止できたという事実が大事なんだ。

その時俺達は見えていなかったが、あの主が暴れていた時、妖精達が飛び交っていたと言っていた。助けたいけれども、どうにも出来ず、逆に引き摺り込まれたり、飛ばされたりとしていたんだとか。で、レインの魔力に気が付いた事と、惹かれたようだった。
「助けてくれるかもしれない」「ずっと一緒にいたいから、連れて行きたい」この二つの気持ちでレインに近づき、それに気がついたエルが魔力操作した蔓で捕らえた。

一歩間違えば、あの周りの者達が、魔力操作が不十分により、魔力暴走などによって巻き込まれる恐れもあっただろうし、気がついたらレインがいなくなっていたと言うことも…

そうならなくてよかった…。

だけどだ、その事で、エル達が俺達に教えてくれた未来に起こりうる事。
我が家の悲劇になりうる事が回避できる可能性が出てきたんだ。
今回、エルの魔力で妖精を捕らえた事により阻止できたように、母上が出産された後、弟か妹かはまだわからないけれど、その子を奪われる前に妖精を捕らえて諦めさせれば…きっとこの悲劇は回避できる。

父上と即相談だと思った。
そうすれば、あの子達の不安が一つ、いや、二つ以上取り除いてあげれるんだ。
我が家の者達も悲しみに陥らなくても済む。

はぁ…………

湯船からあがり、楽な服に着替えた。
そして…レインの所に行って顔を見たいと思ったら…
レインは熱を出してしまって、現在侍女達の看病の真っ最中だったのだ。
医師の手配もされており、医師が来るまで部屋で手を握ってそっと魔力を送っていたんだが、「しばらく安静にしていたら治るから」と俺の方に医師から釘を刺してきた。しかも、熱が下がるまでは入室禁止だと言われてだ。

レインが寂しそうに俺の方を見たんだが、それも即却下されたんだ。
同じようにエルが熱を出しているのだから、レインの横に寝かせて一緒に安静にさせていれば良いだろうと。
「どうせ双子の兄妹だから、近くにいれば互いに魔力を補うだろう」って。しかも、「熱を出している二人が一緒だと、世話をする者も多少は楽だろう」って。
六歳になったばかりだから、男女がどうのは医者的には関係ないらしい。
わかる、わかるんだが、わかりたくない。
俺が側にいてやりたいんだ…。
弟のアシュもなんとも言えない顔をしていた。

すると父上が、「エルとレインが安静にしている間に、出来ていなかった勉強の事もあるから、そっちを今は頑張るように!」と、俺とアシュに言ったんだ。母上も側にいたいと言ったけれど、そこは妊娠中であるから論外だと言われていた。
母上は仕方ないと思うが…

大きくため息を吐きながらも、渋々勉学や武術の稽古を頑張ることにしたんだ。
父上に俺達は自分達が知っている事は伝えておいた。後はレインとエル達が元気になってからと。

俺達は、時間がある時は妖精に関して調べながらも、必要な事を必死で行った。
でないと、直ぐにレイン達の所に行きたくなってしまうんだ。

そんな事をついつい考えてしまう。
そして、また我が家で事件が起こったんだ。

熱を出してしまったというから、俺とアシュはレインとエルに会えなかったんだ。
で、ちょうど二人で剣を交わしていたその時、レインの部屋で不思議な感覚がした。
これは…
俺達が持っている物と、あの子達に渡したものには特別な効果を付与させている。
それが反応した。

「これはエルの魔力…。魔法で何かした?結界のようだ…」

レインの部屋に結界が張られたのが感知できた。ただ、かなり精密に張ったのか、俺達が持つ物がなければ多分だが、わからなかったかも知れないレベルのものだった。
急いで二人がいる部屋に向かったが、今度は二人して移動し出したのがわかった。しかも、あの気配は…。

「レインの部屋の結界は解かれていますね。だけど、あの子達が移動しているのをわからないように、阻害を行使している者が…」
「あぁ、多分だが、あの時の妖精じゃないかと思う。あの時、レインに二人、エルに二人近づいていたから…」
「もしかして、契約しちゃったとか?嘘だろ?あの子達、どれだけ僕達を驚かせるの?驚きすぎなんだけど。」

そう言って、アシュが楽しそうに笑った。
自分の大切な子が、いろんな事をやってのけるのが嬉しいのだろう。俺だとて嬉しいし自慢したいが、だが、気を引き締めて対応していく必要性だって多いにある。

国が動く可能性や、魑魅魍魎達が奪いに来る可能性だってだ。
俺達にはまだ実力や知識だって足りない。父上達に縋らなければいけない事が多すぎるんだ。
だからと言って、使える物は全て使ってでも守ると誓う。
それだけ、俺たちにとってあの子達は大切な存在になっていっているんだ…。

急いで二人の後を追う。
本当にあの時渡しておいて良かった。でなければ、このように追いかけていく事がままならない。

「この先は温室ですね。」
「あぁ、エルの瞳がエメラルドグリーンだから、植物に特化しているだろうと、そして、レインも植物が好きだろうと父上が母上の温室に増築しているように建ててプレゼントしたんだったな。」

何とか目的地に着き、そっと入る。
そこで目にした物は、信じられない光景だった。

小さな花々や、あの子達の好きな果物がなる木ぐらいしか植っていなかったはずの場所に、エルが枝のようなものを刺していた。そして多分だが、魔力を込めているのだろう。

そこに、あのチビどもが飛び回って見守っていたんだ。
あの妖精どもが…。

俺とアシュはレインとエル達から直接魔力で見えるようにしてもらっていた。そして、常日頃魔力を交流させていたことも関与していたんだろう。目の前にいる存在がしっかりと見えていたんだ。
俺達はレイン達に魔力をよく送っていた。あの子達は気がついていないかも知れないが、魔力を送ると、受け取り側の許容量より多い分は、受け取り側の魔力が送る側に流れるんだ。だから、僕達の中にはレイン達の魔力が混ざり合っていると言っても良いんだ。そのおかげで今見えているんだろう。

ぐんぐん大きくなっていく枝は、やがて大きな木に成長した。枝が枝先に向かって垂れているが、イキイキとした葉にピンクの花が咲き出す姿は綺麗で幻想的だとも思った。

「成功~。」
「わ~い。良い匂い。」
「悪い虫とかは寄せ付けないぞ!」

そんな感じで飛び交う妖精の姿も声も…
そこでハッとして、俺達は二人に声をかけたんだ。

「「エル?レインか?」」

大きな声が重なって、温室ないを響渡らせた。

二人が恐る恐る後ろを振り向く姿…。

怒られる?嫌われる??
そんな怯えた姿を確認し、立ち尽くしている二人を俺達は、自分の上着を脱いでレインとエルに着せて抱きしめてきたんだ…。





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