兄様達の愛が止まりません!

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悪役令嬢回避

嫌な予感

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兄様達や父様達には数匹の大物が釣れている様だった。
少しだけ離れているから、喜んでいる声はしっかり届くし、その声も聞こえてきていた。

侍従や護衛の騎士達が釣った魚全部を下処理して、その場で焼いてくれた。
釣ったばかりの魚をその場で焼いて食べるのも美味しいんだって。

母様が準備してくださった物も広げて、それらも美味しくいただいた。
今度は私もお手伝いさせてもらいたい。
私もこんな料理を作りたいって思った。

だって、父様や兄様達がとても嬉しそうに、そして美味しそうに食べているのだから。
私自身も食べてみて、とても美味しくて、ほっぺが落ちるんじゃないかって思ってしまった。
だから、私も作って、みんなのお顔を笑顔いっぱいにしたいと思ったんだ。
帰ったら母様に相談してみよう。
兄様に言えば…多分、父様と母様のやりとりの様に「却下」ってされそうだもの。
危ないって…特にギル兄様がだけど。
母様みたいに勝てる自信が今の私にはない。
言われたら…多分「ハイ」としか返事ができない気がする。
心配してくれるのはとっても嬉しいのだけれど…
兄様が辛い顔をされたら…それも何だか嫌で…

「ん?どうした?」

ギル兄様が心配した顔で覗き込んできたから、何でもないと誤魔化した。
上手く誤魔化されてくれたらいいんだけど…
そうだ…

「私は釣りはどうも苦手だったから、兄様達に食べていただくお魚をとることはできなかったなぁ~って思っただけ。」

これも事実だから間違っていない。
その返事に対して納得してくれたのか?深くは追求されなかった。
うん、これで良いことにしよう。

食べた後は、兄様達と父様達が食後の運動と、剣を打ち合い出した。
真剣だよねそれ、練習ように潰した剣でないよね…

そう思ったけれど、うん、かっこいいよ。
相手の力をうまく利用しながら流すように対応するのも良い。
時には力技のような感じで…

「兄様達、かっこいいね。綺麗な剣舞みたい。向こうも凄いね。」

そう言いながら、私達は見てたんだ。
そこに、ふわふわと…
さっきの羽虫とは違う何かが飛んでいて…
湖から伸びてきた何かに引き摺り込まれそうになっていた。

「「えっ、ええ~っ!!」」

エル兄様もそれが見えたんだろう。
私達二人が急に立ち上がり、指差すのに気づいた兄様達が剣を下ろして私達の指差す先に視線を…

湖の上にはいくつもに光るものがふわふわしていて、それに向かって何かが伸びては引き摺り込んでいた。
ふわふわしたものは、慌ててさらにふわふわで…

兄様達は何か察したのか剣先をその異様なものの気配の方に向けて警戒体制をとっていた。
湖が風もないのに波を打ち出して、それも荒々しくだ。
勿論、護衛の騎士達も私達の側にきて…。
「何だ!?」と言っているけれど、ふわふわは見えていないみたい。
こんなに飛んで、何故か引き摺り込まれてるけど…

しばらくして、触手らしいものが見えた。
引き摺り込んでいるものは、それはそれは、なんともいえない姿で…
と言うか、無数の触手しか見えてない。一瞬グロテスクにも思えた。
本体と言うか、体はまだ湖の中??
水面が更に揺れているから、出てくる?
水が噴き出してる??

すると、ふわふわとした光る球体のいくつかが、こっちに向かって飛んできて…
私にはそれが、羽が生えた小さな子供の姿に見えた。
ふわふわの正体。
それが、なんでこっちに向かって飛んでくるのかは、全然わからないけれど…

エル兄様にも同じように見えたかもしれない。
私は思わず震えながら指をさしていた。

それに気づいたのか、ふわふわと飛んでいたものは、私の方に…
エル兄様は思わず、私が危ないと思ったのか、庇う動作をした。
私を庇いながら…

足もと咲いている小さな花々の茎が、まるで蔓のように伸びていき、そのふわふわを捕らえた。
ふわふわと飛び交っていた小さな子供達が、逃げようとして蔓に巻かれて動けなくなって…

でも、何か一生懸命に訴えてくるから…

「お願い、助けて。」
「お願い、友達を助けて…」

そう言ってくるから、エル兄様が「助けるのはいいけれど、どうやるのか、そして、僕達の家族に危険を及ぼさないで!」とも告げた。
「うん、わかった。イタズラとかしないよ。」
「うん、助けてくれたら、きちんとお礼するよ。」

そう言ってうるうると、涙目で訴えてきたように見えた。
あまりにも可哀想になって、そっとして涙を拭ってやる。
エル兄様も、弱い者いじめをしたみたいに思ったのか、蔓で拘束しているから大丈夫と判断したのかで、そっと拭ってあげていた。

「それ舐めて。」
「それ口にして。大丈夫だから。」

いきなり真剣にそう言われて、エル兄様が恐る恐る舐めたのを見た。私にも舐める様に見つめてきたから、ペロって舐めてみた。ほのかに甘い感じがした。
そう言えば、魔力は身体を体液の様に流れているって本で読んだ。
だから、体に触れるだけでも魔力を渡せることはできるけれど、体に流れているもの、出るものもそう。
体に触れるより、例えば血液とか、涙とかからの方が多くもらえたり渡せたりするって…。
なら、この子達の魔力を分けてもらってる?

侍女達は何が起こっているのかわからず呆然としていた。
エレインもだ。

もしかしたら、ふわふわ飛び交っているのが見えないのかも?
エル兄様の魔法で蔓が伸びて動いてるぐらいに思ったのか?
エル兄様の瞳の色はエメラルドグリーンだ。瞳の色が主属性を表すと言っていた。だから、緑、緑化関係の魔法が使える事は、みんな想像していた。それが強力な緑化とは知らないだろうけれど。
知っているのは、あの時参加した者のみ。

それよりもだ。
このふわふわしたのはやっぱり妖精らしい。絵本で見たのとよく似ていたからそうかなぁ~って思った。
それに、あの夢で見た映像のものにも似ていて…
ニタ~って笑った顔は怖かったけど、今のこの子達は怖い感じがしない。
私よりも小さな子供だ。身体はもっと小さいけど、六歳になった私の手のひらサイズ。
でも、その姿は、三歳ぐらいから五歳ぐらいの子供だと思った。
で、あの触手はこの湖の主らしい。
この子達の説明では、どうも主が変な物を食べてしまい、もがいてるらしい。
この妖精達と主は仲良しで、助けたいと近づくと、痛くて暴れているみたいで、伸びてきた触手に絡みついて湖に、水の中に引き込まれそうになってるんだとか…
ふわふわを捕まえようとしたわけではないのね…。

主は、いつもは湖の中央あたりにいるらしいんだけど、今日に限ってこっちに来てたみたいって…

もしかして…

エル兄様が蔓での拘束を外してやり、私と一緒に兄様達のところに走っていく。
ふわふわとしたものを引き連れて…

兄様達には、このふわふわ。妖精達がやっぱり見えてないらしい。
侍女達は、エル兄様が魔力で蔓を伸ばして捉えた時に、暴れてさらに発光した時、発光体としてそして、妖精の姿が見えて驚いていたんだ。
エルの魔力が蔓を急成長させて捕らえたことにより、捕えられた妖精が発光体に、更に妖精の姿に見えたのだろう。
かなり驚き、警戒していたけれど…

私を守る様にエル兄様が魔力操作していたから、『妖精のイタズラ』で私が連れ攫われりるのではって思ったらしい。

妖精自身も、私の魔力が心地よくて、「もしかしたら見えるんじゃないか。」「助けてもらえるんじゃないか!」って思って飛んで来たと言っていた。
魔力が心地良いのは、妖精がその人に興味を持つきっかけになる。と言う事は、『妖精のイタズラ』に遭遇する可能性があったと言う事だ。
今回の事で、私は今後、妖精に連れ攫われる事はない。どちら者と言えば、手助けてくれたりって感じの祝福をもらえる可能性の方が高いんだ。
夢で見た映像が自分自身にあり得る事だった事に驚いたけれど、少し怖かったけれど、エル兄様のおかげで私は大丈夫…優しい皆んなと引き離される事はないんだ…

それは今は良いとして…

「兄様、釣りの時、疑似餌を取られて糸が切れたりしていませんか?」

エル兄様がそう言うと、ギル兄様の方が一回糸が切れたと言っていた。
何かに引っ掛かる感じがして、ぷつんと…

釣りの時、このような事は時々あるらしい。
時々と言っても、そう多くはないんだとか。
多かったら困るよね。

釣りの後、魔法操作で探して回収するんだって。
でないと、湖の生き物が間違って飲み込んでしまう可能性があるからだとか。
生態系がどうのとか言っていたけれど、その辺りは私にはわからなかった。エル兄様は理解している様だけれど…。
エル兄様は私よりも勉強が得意なのか、知識量が多い。私も頑張っているんだけど…
一緒に勉強した後、復習でエル兄様によく教えてもらっていた。ギル兄様達がお手隙の時は、兄様達も一緒にお勉強をして教えてもらっていたけれどね…。

「兄様。少し御免なさい。」

そう言ってエル兄様がアシュ兄様の手をギュッて握る。
兄様は少し嬉しそうな顔をしていた。エル兄様の真剣な顔が微笑ましい感じだ。
私もギル兄様の手をギュッて握って、エル兄様がしているであろう事と同じ、魔力を少しだけ兄様に送って…。

「レインの魔力は心地いいね~。ん?」

そう言って、私達の後ろでふわふわ飛び交うものに気づいたようだ。
妖精が、こうすれば見えない者にも見えるようになるって教えてもらったんだ。
アシュ兄様も同じ反応だから、見えたのだろう。

さっき舐めた『妖精の涙』のおかげ。

このもらった魔力、他にも能力はあるらしいんだけど、とりあえず見えないことには協力しかねるからね。
特に、兄様達の協力は必須。

「「見えました?」か?」

エル兄様と私の声が重なる。

「みっ、見えるよ」
「あれは、妖精か?妖精…初めて見た。」

すると、兄様達が私達の身体を抱きしめ出した。
えっと…

「兄様、これは『妖精のイタズラ』ではなくて、助けを求めてるんです。協力要請ですよ。」
「そう、助けて欲しい、協力して欲しいって、見えるようにしてくれたの。」

「「そうなんだな。なら、連れて行かれることもないんだな!」」

兄様達の声も重なった。
うん、心配するよね。まぁ、私の魔力をお気に召したようだったから、今回の依頼がなければ、『妖精のイタズラ』になってしまう可能性があったかも知れないけれど…
その可能性は消えたけれども…。





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