兄様達の愛が止まりません!

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悪役令嬢回避

嫌な予感

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父様から、今日は特別だから、少しお洒落しておいでと笑顔で言われた。
そう、朝食の席でだ。

この所お忙しい父様。いつもお仕事で朝早くから出かけたり、夜遅くまで書類に追われているらしかったのだけれど…

「お洒落ですか?」
「レインだけお洒落したら良いんですよね。僕はいつもの…」
「何を言っているんだい?エルもお洒落するんだよ。この前母様から素敵な服を作ってもらったんだろう?報告は受けているよ。父様は二人の可愛らしい姿を楽しみにしているよ。さて、今日は昼食前に戻ってくる。予定は午後の三時だ。皆んなも準備をよろしくな。」

そう言うと、食事を終えた父様は急いで出かける準備をして出て行った。
いくら急いで食べようと思っても間に合わず…

「大丈夫。今日は見送りは不要と言っていたから、気にしなくて良いよ。ほらゆっくりとお食べ。」

そう言っていつもの如く兄のお世話になってしまう。
来年には兄は学園。「もう自分の事は自分で!」と訴えてみたら、悲しそうな顔をされた。
もう、大型犬の耳と尻尾が項垂れてる感じだ。
流石にこれはまずいと、「ならもう少しだけ…」って言ったら、ものすごく良い笑顔になっていた。

「僕も、レインと同じように自立を…」
「僕の楽しみを取ってしまうの?兄様は悲しいよ~。」

うん、向こうでもやっている。
この二人の兄は私達二人を構い倒したいようだ。
それも、甘々で…

今までそんな経験が…亡くなった父様がいた時にはそうだったんだろうけれど、もうあまり覚えていない。
両親が亡くなったのは二歳ぐらいの時。肖像画はほとんど壁から外されて、何処に行ったのかわからないぐらいだった。
唯一は、密かに持っていたペンダントの中。
その中に家族の写真が入っていた。
生まれた時のと、二歳のお誕生日記念だろうか?
奪われないように エレインが隠してくれていたんだ。
夜寝る前以外は見ないように。でないと奪われてしまうかもしれませんからねって。
私とエルだけに隠し場所を教えてくれていた。
私達の寝室にあるクローゼットの中のとある場所。
ちょっとだけ隠せる場所があって、パッと見にはわかりづらい場所だったんだ。

エレインに連れられて隠れていた時は、私とエルの首にネックレスとしてかけてくれていた。
今も私達の胸元にそれがある。
父様達も大切に持っていなさいって言ってくれたんだ。

「ん?どうしたの?」
「ううん。なんでもない。」
「何でもないように見えないけれど…兄様にお話しして欲しいなぁ~」

そう言って両手を包み込まれて懇願された。
今、とても大切にされているのに、亡くなった両親の事を思い出したなんて言ったら…
嫌われるだろうか…

ついつい俯いて唇を噛む。

「ダメだよ。噛んじゃ。血が出てしまう。」

そう言って、そっと兄様の指が私の唇に触れた。
驚いて、ポカンと口を開けて兄様の方を見てしまった。

「ほら、血が少し滲んじゃった。」

そう言ってペロリと舐められたと思ったら、ふわっと身体が浮き上がる。
そう、兄様に抱き上げられたんだ。

「「僕達の可愛いお姫様と王子様はそんな顔をしたらいけないよ。ほら笑顔。笑って。」」
「にっ、兄様、こそばさないで~~~。」

エルはアシュ兄様にこそばされて、暴れていた。兄様のお膝の上で。
私は兄様のお顔が側に来て、ちゅちゅっとキスされてしまうから~

「兄様。わかったから。ちょっと亡くなった父様や母様の事を思い出してしまったの。今の父様や母様達にも大切にされているのに…そんな事を思ってしまってって…。」

ついつい下を向いてしまう。でも、兄様に上を向けさせられた。

「そんな事を心配していたの?良いんだよ。亡くなったご両親の事を思い出しても。僕達にとっても大切な人だ。叔父様には遊んでもらったこともあるけれど、それ以上にレインやエルをこの世に生まれて来れるようにしてくれたんだ。感謝しかないよ。だけど…そうだな~。そのネックレス。チェーンがもう古くなってしまってて切れそうだ。ちょうど僕達が準備したネックレスがあるから、それを受け取って欲しいなぁ。今使っている写真が入っているロケットペンダント。をそのネックレスのチェーンに一緒に通してくれたら嬉しいんだけど、どう?」

そう言ってそっと下ろされたのは、ソファーの上ではなくて、ソファーに座る兄様のお膝の上だった。
兄様はポケットから小さな可愛らしい箱を取り出して、そこからネックレスを見せてくれた。
ロケットペンダントと同じ銀製?ちょっと色が違うし、キラキラ感も違う。

「これは特別製なんだ。銀製ではなくてね。銀製も良いんだけど、くすんだりしてしまうだろ?後、切れにくいようにもしているし、もちろん皮膚がかぶれたりもしないよ。ここの留め具も変わっていてね。可愛い石が飾られてるんだ。小さいけどね。このペンダントトップもほら、このロケットと一緒にしても違和感なく使えるだろ?」

そう言って、いつの間に外されたのか、胸元にあったロケットペンダントが外され、さらにロケットの部分をチェーンからも外されて、新しいネックレスに通された。そしてそれを首にかけてもらい、留め具を留めてくれる。少し温かく感じたけれど、何でだろう?

「これは特殊で、僕の魔力でしか外せないようになってるんだ。だから無くすこともないし、奪われることもない。お風呂の時にも、つけたままで大丈夫なように魔法を刻印してるしね。このロケットペンダントにも、元々そんな魔法が付与されてるみたいだったから。ほらここに刻印があるだろう?」

ロケットペンダントを開けると、両親の写真と自分の小さかった時の…で、指さされた場所に確かに小さな刻印が見えた。

「ほら、ロケットと新しいペンダントトップもいい感じだろ?チェーンだって違和感なく可愛らしい感じになってる。」

確かに…可愛らしいお花に蔓がまるで模様のようになっている。
お花の石は紅色。兄様の瞳の色だ。蔓の葉の部分には水色の雫のような感じで…もしかして、私の瞳の色?

「気に入ってくれた?」
「はい。ありがとうございます。」

「ふふふっ、後、ちょっとだけロケットをいらうね。これは四つ写真が入るんだ。ここにね。で…」

兄が触って見せてくれたのは、ちょっと刻印がある辺りを触れると、二枚写真を入れれる場所があった。そこに、兄様はこの間撮った家族写真と、兄様と私の写真の二枚を入れた。
写真自身白黒ではあるが実在する。貴重な物ではあるけれど。
一般的には絵姿を特殊魔法で小さくして入れてるらしい。
その辺りの事はつい最近知ったんだ。家族で記念写真を撮ろうって父様が言い出した時に。

「家族写真は、もう一人の家族が増えたら差し替えようね。楽しみだ。」

兄は、兄様は私がこの前話した事に対して大丈夫だと言うようにそう言ってくれたのだろう。
新しい家族と写真が撮れる。妖精のイタズラで、その子はいなくなる事はないよって。

思わず涙が溢れ出て止まらなかった。



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