竜の恋人

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運命が回る

そして…

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気がつけば、自分達夫婦の寝室だった。
身体の上が少し重く、あたたかいものを感じると、それは横たわる私を抱きしめて腕の中に閉じ込めたまま眠っている夫のようだ。

私が身じろぎした事で目が覚めたのか、美しく整ったまつ毛が揺れ、その瞼の奥に隠された宝石のようにも見える獣目が私を映し出した。

夫は竜人族。だから、瞳はこんな感じではあるけれど…
でも、怖いとは思わない。
可愛いとも思うし、綺麗だと思っているのよね。

「おはよう。身体の方はどう?」

そう言って優しく頬に触れ、髪を耳にかけてくれた。
その後は…
うん、いつもの『おはようの挨拶』。
竜人族は伴侶に対して、番いに対してのスキンシップが多いと思う。

額に頬に、鼻の頭にチュチュと音を鳴らして最後に唇に…

いつもの軽めの挨拶のキスだけだと思って油断した。
そう、ガッツリと貪られたんだ。

驚いて開いた唇を舌でさらに割り開き入ってきては、私の舌を追い回す。
捉えて吸われて、最後にはお互いの唾液が混ざりだす。

「ん~んっ!」

思わず彼の胸元を叩こうと悶えて見せるが、力の差は歴然だった。

しっかりと、魔力がこもった唾液を飲まされてしまった。

「ふふふっ。可愛い。顔色もだいぶと戻った。よかった。」

そう言うと、息が切れて、はぁはぁ言っている私を膝の上に乗せて抱きしめるようにベットの上で座った。

「いきなり魔力が抜け出して漁ったよ。急に身体から抜け出して行く感じで、枯渇一歩手前だった。」
「え??」

確か、扉の脅威がおさまって、神々のご都合に振り回されたのを無理矢理理解した。
それから…

「そうそう、あの子は?カルロスは?」

「カルロスは大丈夫だ。ジャディールが直ぐに対応したからね。僕の親友は優秀な竜人族でしかも王弟。魔力量が半端ないしね…今は彼の屋敷にいるよ。多分しばらくは出て来れないんじゃないかな?もちろん、君もだよ。しばらくはこの部屋で休んでもらう。私が全て世話をするから、大丈夫。」

「いゃいゃ、自分でできる事は自分でするし、シルバーだって…」
「シルバーは別の仕事を言いつけている。君はまず自分の身体を労わらないとね。」

そう言うと、頬を撫でられた。

こうなると、彼に逆らうのは無謀だ。
何年付き合っていると思うのよ。
しっかり子供もいるんだから…

彼からの室内監禁宣言を受けてしまえば…
諦めよう。

「ふふふっ、その方が正解だ。お腹空いた?何か軽い物を準備させるよ。」

そう言うと、伝達魔法陣に吹き込んで飛ばしていた。
多分あそこに飛んでいくんだろうなって思いながら見つめてしまった。
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