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運命が回る
運命が回り出す
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「大丈夫か?」
「あの子が…」
私の大切な息子の足元に魔法陣が現れて、一瞬で息子を飲み込んだ。
さっきまでいた場所に…
どうして…何で…
慌てて夫が私を抱きしめて来る。いつもよりキツく腕の檻に閉じ込める。
どうして、何で?またあの男なの?
どこまで私達を…私を苦しめるの!!
私という異世界人を…どれだけの執着なのか!?
姉の夫と同じ魔人族。
探究心が強く、独自の研究を好んで行うとも聞いた。
研究によれば、対象がどうなろうとも気にしないとも…
魔塔の中でも異質な人物と、独自の集団の中心人物であるとも聞いたあの男…
「優里。大丈夫だ。きっとジャディールが助け出す。魔力暴走は起こしたが、あの男がカルを、カルロスを諦めるはずがない。あの子が生きている限り、絶対にこの世から姿を消し去る事はない。これは竜人族として、友人としても言える。彼が絶対に助け出すから…だから、私たちはあの子が心配しないように進もう。あの子が気にかけていた場所もそうだ。最終的には扉をどうにかして、あの子や他の我が子達が安心して生活できるように頑張ろう!」
そう言って額に頬に、湧き出た涙も吸い取るようにと顔中に彼の愛情を降り注がれた。
そうよ。きっと大丈夫。
だってあの子の『運命の番』は、あの彼なのだ。
私たちの国の王弟殿下であり、夫の友人。あの時だって夫と共に助けてくれたんだ。
だから…
大きく息を吐く。
うん良し。大丈夫だ。
心を切り替えて、子ども達に視線を送る。
子供達自身もかなり動揺していたようだけれども、私が落ち着いた事により何か悟ったのだろう。
「さぁ、私達は奥に進もう。大丈夫だ!」
そう言うと、子ども達は持っている剣などを、できる範囲で掲げて同意した。
一致団結して、さらに奥に進む決意をした時、向こう側で声がした。
姉達だ。
「あれは転移魔法だ。しかも…」
『あれはシルメールが関与した転移魔法じゃ。行き先は…残念ながら今のお前達は行けぬ。彼奴が結界を張っておるでの。ふむ。今は我慢して進むが良い。この先で待ち受けておるものに集中するのじゃ。あの者は大丈夫…多分大丈夫じゃ。』
いきなり頭の中で声が響く。姉や子供達にも同じ声が聞こえているようだ。
『多分』と言う言葉は気になるけれど、神がそう言うのなら信じるしかない。
私は未来視を見ていないが、姉が見た物を教えてもらっている。
夫は独自で情報を集めて知っている可能性が高いが…
「とにかく、先に進みましょう。神もああ言ってくださっているから。」
姉が義兄エドワードに何とか笑顔を見せて、私方にもそう声かける。
大きな声では言ではない。
魔物や魔獣が姿を現し、それに対応している最中だったし、先頭にあの聖女達。こちらの出来事には気づいていない模様だった。
夫が言うには、多分義兄が風魔法を使って声をこちらに届けたのだろうと。
子供達に聞かれるのはいいけれども、聖女達に聞かれるのは…だからそうしたのか?
多分そうだと思う。
息子の英霊達は何か感じるものがあったようだが、向こうにも神の声があったのだろう。
すぐさま切り替えてか先に進み出した。各々の仕事をこなして行くようにだ。
ある程度駆逐し終えて先に進む。
細い道もあれば数人余裕で歩けるほどの広い場所。そして、ダンジョンらしく綺麗に整備されている通り道もあった。
落とし穴や大岩が転がってくる古典的物。そうそう、槍や剣が飛んできたり降り注ぐなんて物もあった。
ありがたい事に、あの後は転移魔法陣は隠されている感じもなかった。
あれがあれば厄介だしね。事前調査されていたから、大体は判っていたけれども…
どんどん先に進んでいく。
勿論、途中休憩も挟んでいった。
「ねぇ、あの子は何処に飛ばされたんだろうか?あの時何故ディアブロは反応しなかったんだろう。もしかして反応できなかったのか、反応しても対処できない何かが??」
「多分後者だろう。神アルメルアの双子神、神シルメールが関与したのなら、同じ神格を持っても無理があったのかも知れない。影に潜んで守っていたからね。出られなかったんだろうと推測するよ。」
「そっか…その可能性はあるわね。不意打ちのもにであったならだけど。神ならあり得ると思う。転移先なら先手を打たれたとしてもディアブロが対処しそうだし…」
「そうだな。それよりも、報告されていた以上の魔物や魔獣に遭遇している気がする。トラップは地図で示された通りだったが…」
「あの時の地図が頭の中に入ってるの?」
「あぁ、全部入っているよ。入っていないのか?」
「……貴方が優秀で良かったわ~」
姉達の会話がこちらにも聴こえて来る。
あれからも、あえて聞こえるようにしてるのかもしれない。
「それよりもだ。もしかしたら扉の方に異変が起こっているのかも知れない。全部は開いていないと思うが…」
「全部が開けばこんなものじゃないよね。あの時、急に開き出した時だって…」
姉が何か思案し、顔色が…
「そろそろ先に進みましょう!」
苛立つ聖女。そしてそのメンバーの声で気持ちも思考も切り替える。
今は先に進まなくちゃ…
「あの子が…」
私の大切な息子の足元に魔法陣が現れて、一瞬で息子を飲み込んだ。
さっきまでいた場所に…
どうして…何で…
慌てて夫が私を抱きしめて来る。いつもよりキツく腕の檻に閉じ込める。
どうして、何で?またあの男なの?
どこまで私達を…私を苦しめるの!!
私という異世界人を…どれだけの執着なのか!?
姉の夫と同じ魔人族。
探究心が強く、独自の研究を好んで行うとも聞いた。
研究によれば、対象がどうなろうとも気にしないとも…
魔塔の中でも異質な人物と、独自の集団の中心人物であるとも聞いたあの男…
「優里。大丈夫だ。きっとジャディールが助け出す。魔力暴走は起こしたが、あの男がカルを、カルロスを諦めるはずがない。あの子が生きている限り、絶対にこの世から姿を消し去る事はない。これは竜人族として、友人としても言える。彼が絶対に助け出すから…だから、私たちはあの子が心配しないように進もう。あの子が気にかけていた場所もそうだ。最終的には扉をどうにかして、あの子や他の我が子達が安心して生活できるように頑張ろう!」
そう言って額に頬に、湧き出た涙も吸い取るようにと顔中に彼の愛情を降り注がれた。
そうよ。きっと大丈夫。
だってあの子の『運命の番』は、あの彼なのだ。
私たちの国の王弟殿下であり、夫の友人。あの時だって夫と共に助けてくれたんだ。
だから…
大きく息を吐く。
うん良し。大丈夫だ。
心を切り替えて、子ども達に視線を送る。
子供達自身もかなり動揺していたようだけれども、私が落ち着いた事により何か悟ったのだろう。
「さぁ、私達は奥に進もう。大丈夫だ!」
そう言うと、子ども達は持っている剣などを、できる範囲で掲げて同意した。
一致団結して、さらに奥に進む決意をした時、向こう側で声がした。
姉達だ。
「あれは転移魔法だ。しかも…」
『あれはシルメールが関与した転移魔法じゃ。行き先は…残念ながら今のお前達は行けぬ。彼奴が結界を張っておるでの。ふむ。今は我慢して進むが良い。この先で待ち受けておるものに集中するのじゃ。あの者は大丈夫…多分大丈夫じゃ。』
いきなり頭の中で声が響く。姉や子供達にも同じ声が聞こえているようだ。
『多分』と言う言葉は気になるけれど、神がそう言うのなら信じるしかない。
私は未来視を見ていないが、姉が見た物を教えてもらっている。
夫は独自で情報を集めて知っている可能性が高いが…
「とにかく、先に進みましょう。神もああ言ってくださっているから。」
姉が義兄エドワードに何とか笑顔を見せて、私方にもそう声かける。
大きな声では言ではない。
魔物や魔獣が姿を現し、それに対応している最中だったし、先頭にあの聖女達。こちらの出来事には気づいていない模様だった。
夫が言うには、多分義兄が風魔法を使って声をこちらに届けたのだろうと。
子供達に聞かれるのはいいけれども、聖女達に聞かれるのは…だからそうしたのか?
多分そうだと思う。
息子の英霊達は何か感じるものがあったようだが、向こうにも神の声があったのだろう。
すぐさま切り替えてか先に進み出した。各々の仕事をこなして行くようにだ。
ある程度駆逐し終えて先に進む。
細い道もあれば数人余裕で歩けるほどの広い場所。そして、ダンジョンらしく綺麗に整備されている通り道もあった。
落とし穴や大岩が転がってくる古典的物。そうそう、槍や剣が飛んできたり降り注ぐなんて物もあった。
ありがたい事に、あの後は転移魔法陣は隠されている感じもなかった。
あれがあれば厄介だしね。事前調査されていたから、大体は判っていたけれども…
どんどん先に進んでいく。
勿論、途中休憩も挟んでいった。
「ねぇ、あの子は何処に飛ばされたんだろうか?あの時何故ディアブロは反応しなかったんだろう。もしかして反応できなかったのか、反応しても対処できない何かが??」
「多分後者だろう。神アルメルアの双子神、神シルメールが関与したのなら、同じ神格を持っても無理があったのかも知れない。影に潜んで守っていたからね。出られなかったんだろうと推測するよ。」
「そっか…その可能性はあるわね。不意打ちのもにであったならだけど。神ならあり得ると思う。転移先なら先手を打たれたとしてもディアブロが対処しそうだし…」
「そうだな。それよりも、報告されていた以上の魔物や魔獣に遭遇している気がする。トラップは地図で示された通りだったが…」
「あの時の地図が頭の中に入ってるの?」
「あぁ、全部入っているよ。入っていないのか?」
「……貴方が優秀で良かったわ~」
姉達の会話がこちらにも聴こえて来る。
あれからも、あえて聞こえるようにしてるのかもしれない。
「それよりもだ。もしかしたら扉の方に異変が起こっているのかも知れない。全部は開いていないと思うが…」
「全部が開けばこんなものじゃないよね。あの時、急に開き出した時だって…」
姉が何か思案し、顔色が…
「そろそろ先に進みましょう!」
苛立つ聖女。そしてそのメンバーの声で気持ちも思考も切り替える。
今は先に進まなくちゃ…
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