竜の恋人

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運命が回る

運命が回り出す

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転移してきた場所はディール帝国の紋章が施されたテントの入り口?
えっと…

「この奥ですね。行きましょう。」

そう言いながら奥に進む。
何処にいけば良いのかディアブロにはわかっているようだ。
ディアには可愛い人差し指を唇に充てて『しぃ~』って言っている。
みんなで顔を合わせて頷き合い進んでいく。

あっ、いた。

そ~っと入って行くと、テーブルを囲ってみんなで椅子に座り、調べられている洞窟内の地図を見ていた。
物凄く書き込まれているのがここにいても理解できた。
私達に気がついたのは数名。さすがだ。
他は話し合いに集中していた。
私達はカルロスの背後に…

「現在確認されている物をここに記載している。『異世界の扉』の周辺は、何が起こるかわからないから、これが絶対とは言い切れない。新たな魔物や魔獣が生息している可能性も否定できない。」

地図に書かれている物は、入り口付近は低級のもの。スライムやスケルトン。ゴブリンと言った感じなのかも知れない。そんな感じの物を置いている。奥に行くほど種類が変わるんだろう。

「この辺りには植物系の魔物ですか?暗闇に??」
「あぁ、この辺りは一部天井に亀裂が入ってか、大きな穴が空いている。太陽の光が多少はいるためと、元々山脈であるから、植物の種子が落ちて根付いたりしているからだろう。」

種子が高濃度の魔素に触れて魔物に進化する事も、魔獣化する事もあると聞いた事がある。そのせいだろう。

「で、この辺りだが…」

ある一点を指し示された。洞窟内の分岐点だ。そして…

「カル、私の家族には伝えてあるの。あのノートに記載されていた事。だからね…」

姉がもカルロスも悲壮そうな顔しているんだろう。声色でそんな気がした。
でも、みんなの顔。こちらから見える限りでは…大丈夫な気がする。
この人達ならこの子も大丈夫…
でも、ノートって何?
私は知らない。夫は知っているようなのか…
子供達も何処からか情報を得てる?

「そっか。知ってるんだ。そうだよ、ここで闇堕ちした僕は聖女一行と会って交戦するんだ。そしてディ…ジャディール•アステード殿下に殺される。僕を殺害した後、彼は魔力暴走を起こして聖女の力で暴走は抑えられるんだ。そして二人は手を取り合って仲間と共に奥に進み、扉まで到達。到達までに時間がかかり過ぎた場合は、悪魔達が出て来てしまう。小悪魔ぐらいなら討伐して扉を閉めて施錠し、神々の祝福と共に世界は落ち着き、ハッピーエンド。中級の悪魔が出た場合はかなりの被害が出て、仲間の中にも死傷者が出る。上位の悪魔が出ればバッドエンドだ。全滅し、やがて世界は駆逐される。」

一瞬みんなの表情が固まる。
中級や上位種さえ出なければ、まぁこの世界は救われると言う事?
あの時以上に困難な事が多々ありそうな予感がする。

そんな何とも言えない雰囲気を打破するように。

「こんな場所でマスターが…」
「拉致されて、散々なぶられ洗脳までされて、『運命の番』に殺されてしまうなんて…」
「哀れと思って、自分の番を殺してしまう方も辛いけれど、殺害されてまだ息があるだろう時に聖女に取られてしまうんだろう?それも何と言うか…」
「息が無くても、共にでないのは何とも言えない。悲しすぎるよ…」

みんなの雰囲気から、多分カルロスは書きながら涙が溢れて滲んだんだろうと想像する。
そこに書かれたカルロスの未来…
以前見た未来視の一つのような…

そう言えば、文字は見えなかったけれど、確かにノートを泣きながら書いていたのを見た。
涙を拭きながら、丁寧に。

「えっと~、そっち!?いやいや、そっちじゃなくて、扉までの到達時間によって世界がどうにかなる方が…」

皆んながシクシクし出し、エドワード殿下はしっかりあねを抱きしめて慰めている。
あれはあの時のディアブロ。そして彼によく似たディアも凄い顔で泣いている。
思わず持っているハンカチを差し出そうとして止められた。
まだ声をかけるタイミングでないのだろう。

「えっと…僕は実際は拉致されたけれど無事だし、聖女に色々されたけれど、聖女一行でも~まだあるのかな??」

あの時の報告で、私の大切な末っ子に酷い仕打ちをしたとか。
聖女ってそんな子はいる今でいなかったはずだ。
記録とか伝承からの想像だけれど。
実際に見た事。接した聖女は姉だけだけれど…

「そっ、そうよね。うん、実際は違うよね~~」

もう我慢できずに背後から抱きしめたい。
もう、私の可愛い子供がこんな事に。
母親であるのに、気が付かないし、今まで守ってやれなかったなんて、母親失格だ。
いゃ、今からでも遅くない!

そう考えて抱き込んでいたら、そっと振り向いてきて、驚いていた。

「母様?それに父様と兄様達。」

「カル…カルロス~~~~」

もう自分の目が無くなってしまうのではないかというぐらいに、どんどんと涙が溢れて溢れる。
カルロスの兄達は涙を堪えているようだ。
娘は夫の腕の中で泣いていた。
うん、流石竜人族。家族であっても余り触れさせたくないのよね。
全然関係ないことを思い浮かべてしまった。

「兄上?その人は?」

カルロスが場違いに思えるその人を、ついつい指差してしまった。
本当は、指差してはいけないんだけれども…それだけ興奮して頭の中がぐちゃぐちゃにになったのだろう。
それを必死に収束させて、大人の対応をしようと頑張って挨拶しようとする前に、先を越される。

「あぁ、初めましてと言った方が良いか?私はルーズベルト•アステード。アステード王国の王子だよ。そして君の義兄だ。よろしくね。」

「えっと…カルロス•セイクリオンです。よろしくお願いします?」
「ふふふっ、何で疑問系なのかは今は問わないよ。大体は予想つくからね。それにしても凄い面々だ。ディール帝国前皇帝及び皇帝方、この様な場で急に押しかけてしまい申し訳ありません。私も家族の一員となりましたので、今後ともよろしくお願いします。また、国家間でも…」
「あぁ、報告は受けているし、連絡も受けているから大丈夫だ。今は甥っ子を中心とした家族とその仲間達であるから、仰々しい対応は控えよう。」

そう言って笑い合っている。
涙が止まった我が次男は、殿下の腕から逃れてカルロスに飛びついて来た。
そっとスペースを開ける。二人で抱きしめても良いはずだ。

「えっと、おめでとうございます?」
「ふふふっ、疑問系だね。私も何でこうなったのか…逃げて来たんだけれどね~逃げきれなかったよ。竜人族の執着は凄まじいからね。カルも気をつけるように。もう手遅れかもしれないけれどね…」

お互い何とも言えない顔をしている。さすが兄弟だ。表情がよく似ていた。
兄が文官として務めていたから、理性を総動員しながらも、何となく理解したんだろうな。
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