竜の恋人

運命が回る

運命が回り出す

そう、姉の子供は三人まだだった。
あの時の呪いの影響か、姉は深い眠りについてしまった。

姉の夫が新たに神殿を建て、そこに特殊結界を張り巡らせた。

ロザリアン神聖国でも、その事が大いに話題となった。
何故なら、この世界の神は二神だけとされている。
この世界を創造し光と闇の二神だ。
実際にお会いした方々がどれほどいるのかは知らない。
お声を聞いただけの人ももしかしたらいるかもしれない。
御神託として、総本山の神殿にある石碑のような物に神託が記されていたのを読み解いた人だけかもしれないけれど…
二神、黄金の髪にオパールの様な瞳の神が光の神リーミエ。銀色の髪にオパールの瞳の神が闇の神カーミエだ。

その他にも、現在この世界に関与しているのは異世界から来たと言う少女の姿の神アルメルア。その双子神シルメールだ。

このシルメールが問題なのだけれどもね…

異世界の扉を姉と共に鍵を閉めた際に、シルメールがかけた呪いが姉の腕に刻まれた。

神アルメルアから逃れようと双子神であるシルメールが鍵を閉めるに際して発動させた呪い。
その呪いは姉の左腕に刻印されたが…

痛みなどの症状も出る事なく、しばらくは普通の生活ができていた。
だが、私がこの子を身籠る二十年前に、姉は深い眠りについてしまった。
眠りについてしまう事を知って建てられたその神殿に、ロザリアン神聖国の神職が関与することは許されず、建築された当初はかなり揉めていたようだ。
元聖女でもあったからね…
眠りにつくなら、我らの神殿に安置してと思ったのだろう。

そこの辺りは、神からの啓示で渋々納得したらしいけれど…
『神からの…』は絶対だから…

この辺りの信仰心は、私が住んでいた国では…あり得ない気もする。
他国では多いにありだと思うけれど…
全部の国ではないけれどね…

姉が眠りについて、私は多いに落ち込んだ。
死別した訳ではないけれど、それでもだ。

夫や家族にも迷惑をかけたと思う。
そんな中に孕った我が子。
この子があお運命に…そう思うと…

「どうした？」

アルがそっと抱き締める。

「今後の事が…」
「大丈夫だ。私がついている。それに子供達や屋敷のもの達も、ひいては友人達もいるから…」

そう言いながら抱きしめて腕の中に閉じ込められた。
頬や瞼に唇を寄せて、そっとお腹を撫でられる。
反応したのか、お腹の中でボコボコと暴れ出す。

「うん、母親思いの良い子だ。この子も心配しているようだ。」
「そうね。うん、頑張る。」


そう言って月日は過ぎ、出産し、その日にまさか夫の友人であるジャディール•アステード王弟殿下が屋敷に…我が子に会いに来て、『運命の番』である事を宣言するとはこの時思いもしなかった。