竜の恋人

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異世界の扉

試練(アルホンス)

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彼女を簡易テント内に置いたベットの中で休ませる。
目が覚めたら直ぐに側に行けれるように特殊な陣も敷いておいた。

その陣が作動して、少し席を外すと部下に告げ彼女の元に急ぐ。

「いつの間に?ここは?今は?」

彼女の声が聞こえてきて、直ぐにテント内に入ろうと入り口を開けた。
衣擦れの音などで、ゆっくりと起き上がり、小声で呟くように自分の中で確認している様子が伺えた。
テント内には護衛として彼女専属を二人配置していた。
二人とも彼女にとって異性であるが、危害を加える事がないのは理解できていたから、仕方なく側にいる事を許可していた。彼女は狙われやすいから…

「目が覚められましたか?」

そう言っ水を彼女に渡してきたのはグレデリック。そして、もう一人の男性が控えている。
こくりと喉を鳴らして水を飲み干し、コップをグレデリックに渡しているのだろう。
竜人族は耳も目も良いからな。

「えっと…」
「ユウリ様。私はシルバー。貴方様に封印を解いて頂き、主従の契約させて頂いた者です。これからは、貴方様の剣として盾として仕えさせていただきます。よろしくお願いします。」

そう言って最上級の騎士の誓いを立てている所を目にして、足元を拘束されたように動かなくなった。
今この時は邪魔されたくないということか?声も出ず、ただ聞こえ、見えるだけだ。

「主従の契約?」

一瞬、グレデリックの様な隷属の印を確認するように、あの男。シルバーと名乗る男の首筋を見つめているようだ。
この時点ですでにこの空間に陣が作動している。
感覚では時を止めるもの。ただ、私には全てを止める意思がないようだ。
動きを止めて、邪魔されないようにだけ…
これはかなりの実力者という事か…

「見た目には刻印は見えません。血液を媒体に魔力で魂に刻印されております。」

そう言って、彼女を見つめるその姿に苛立ちが募る。
何か意図があるのはわかるが、私の愛しいものを他の者の目に触れさせたくないという嫉妬心…

あの男からしたら、黙って聞いていろと?
だが、苛立ちは募っていく。

「私はユウリ様にシルバーと名付けられました。ですので、如何なる危険な場所にも馳せ参じますので、ご安心ください。」

「えっと…『シルバー』って私がつけたの?元々の名前があるでしょ?何で私が?」
「封印の場で、私はスライムにされておりました。それに関して詳しいことはまた後日。主格は青いスライムです。後は属性に応じてのスライムに力が拡散分裂させられていました。鍵である剣に血液を通しての魔力操作がされ、封印は解けて、契約となっております。私は貴方様の剣であり盾。場合によっては杖として支えさせていただきます。」

理解しずらいが、彼女がしなければいけない何かがあったという事か?その関係でこの男が…
封印されてスライムの姿と言うのは、何かの呪いを解いたと言う事か?

「『異世界の扉』を封印されるのをお望みなのですね。それに必要な物は、多分これかと…」

シルバーという男が、彼女に短刀を渡している。
女性が持つ護身刀のような装飾が施されている物。
この世界の高貴な女性がいざという時に自身の身を守るもの。そして、自分の身を汚されそうになった時、自分の喉を掻き切る物…

「少しだけ失礼致します。」

そう言うと、一旦渡した剣をそっと取り、あろう事か、彼女の私の右手を取り…
グサリと刺した。

「痛っ!!」

彼女から血の匂いがし、考えたくないが掌を刺されたのが理解できた。
殴り倒したいが、動けない…

彼女の掌に魔法陣が発動したのが見えた。そして短刀が沈むように…
あれはもしかしたら魔剣か?
魔剣騎士がもつ剣によっては血の契約を行い、我が身を鞘とする事がある。
短刀であるが…

呆然と見つめ、最後まで入りきり掌の中に収まれば、装飾されていた剣の鞘も消えていた。

「さっきの剣が必要な時は、念じれば現れます。また、危険な場合は自ら現れ危険回避するでしょう。」
「自ら現れて?」
「はい。ユウリ様の血で契約がなされ、主人の願いの時にもですが、危険と魔剣である短剣が判断すれば、自己防衛のように主人を守るように…」
「魔剣なんだ…」
「はい。」

掌を見つめた後、彼女は周りの状況をみて驚きいていた。
自分たち以外が動いていないことに気がついたようだ。
私は身体は動かなかったが、さっきの事は見ていたんだが…

シルバーがパチンと指を鳴らすと、時間が動き出す。
私においては、拘束がとかれ、
どさっと地に足をついて倒れ込むのを何とか堪えた。
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