竜の恋人

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異世界で愛を呟かれ

異世界で愛を呟かれ

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「後、あの男が、海を隔てた大陸と内通している可能性が出てきた。」
「海を隔てた大陸?」
「そう、この大陸はロザリアン神聖国を中央として五つの国に別れている事は習って知っているだろう?」
「えぇ。確かに習ったけれど…」

向こうの世界とは全く違う歴史。まるでゲームや小説。漫画などで使われそうなそんな歴史だ。

「これは、王族の者達が共有される特別な歴史だ。この研究には昔からディール帝国が最新情報を発見して更新・修正されているが、ほぼ変わりはしていない。」

そう前置きされた歴史。

※※※       ※※※    ※※※

遥か昔、この世界は『光と闇』の神によって作られたとされている。
二神は、この大陸以外にも大陸を、そして多くの島々も作られた。

土地を作り、多くの動植物を作り上げた神は、全ての大陸や島々を治め安寧と発展を望み、『竜人族』『獣人族』『妖精族』『魔人族』そして、自分と姿形を似せた『人族』を創造された。
この種族は自分達を創造された二神を唯一として祀り、やがては高度の文明を築いた。
古代文明の時代だ。

そして、『魔素』。多かれ少なかれ何処にでもあるもの。
空気中や水。植物にも土にも含まれる物質。
それが、それぞれの環境に伴って、自然と貯まる場所が出来る。
そう、魔力溜まりが発生するのだ。
火の力が多い所や水の多い場所などで魔力溜まりが発生すると、魔素は結晶化し、その性質の『魔石』と言うものが出来る。
それらは、一部の生物や動物などが食して力を得たモノもいるが、この世界の住民はそれを発見し採掘した。
採掘した物は、魔力の少ない者などでも使えるように加工して、生活の一部として使用している。
魔道具の中に組み込む形で。
その魔力溜まりの魔石採掘現場となる場所は、『魔石地』として認識されている。
が、それ以外にも、全ての生命の『悪感情』に触れた魔素が溜まった魔力溜まりがどうしても発生した。
それがとても厄介でもあった。
文明が高度化するにつれて、『妬み』『嫉み』『僻み』という悪感情が生まれ、やがてそれは『憎悪』まで発展して行った。それらに触れた魔素は、変質して『瘴気』となる。

瘴気による魔力溜まりを『魔力溜まり』と認識された。
その、魔力溜まりから魔獣が発生する。
普通の獣などがその魔力溜まりに長時間触れて変質し、魔獣となる事もある。
極めて厄介なものだ。
やがてそれらは全ての住民を襲うことになる。

魔獣は基本、本能に従う存在ゆえ、コントロールが難しい。が、知恵を有する魔獣が現れ、それを使役する『魔族』が現れた。
魔獣も人々と同じく進化する。そうして生まれたのが魔族だ。理知のある人が長期間、魔力溜まりに触れて変質した場合も、魔族と言われた。

人と姿形がよく似た魔族は、この世界を創造した『神』とは違う『神』を崇め始めた。
『悪感情』が充満しての起こった現象に、別の世界、そう、異世界の力が触れたのであろう。
魔族達は、自分達に聞こえ、感じた『意識』により、自分達の『神』を持ち、崇めたのだ。
崇める事などにより、『異世界の扉』または『世界の扉』とも呼ばれるものが出現した。
それは、魔族達の崇める神、そう『悪魔』と呼ばれるモノが出てくる場所となった。
混沌の時代の始まりだ。と文献ではなされている。
ディール帝国秘蔵書や、『ヒト族の国』ロザリアン神聖国で秘匿されている物にからは、それ以前から混沌の時代が始まり、『悪魔降臨』にて更なる混沌をもたらされたとされている。どちらにせよ、『悪魔降臨』が大きな鍵を担っているという事だ。

『悪魔』は全てを滅亡へと導いた。

人々と、魔族との戦いやそれに悪魔まで加わり、世界は崩れ始めた。
人々は、創造主である神に祈り、神もまたこの悲しい出来事に心を痛めた。

人々の強い願いを神に祈り、それを聞き届けた『光と闇』の神は嘆き悲しみながらも、『希望の光』として異世界より一人の少女を呼び寄せた。聖女がこの世界を創造した神に導かれ、伴われて我らの世に現れたのだ。
そう、『聖女召喚』である。
この秘術は『ヒト族の国』であるロザリアン神聖国に伝えられ、現在も数百年に一度行われている秘儀であった。

現れた神の代行者である『聖女』は黒髪と黒い瞳を持つ少女である。
当時の獣人族や妖精族。魔人族やヒト族。そして竜人族の者達数名の神に選ばれし『使徒』とも『従者』とも言われているが、その者達と共に力を合わせて、魔獣を討伐し、瘴気を抑えて行った。『浄化』である。
力が抑えられて、弱体化した『悪魔』は扉から向こうの世界に戻って行ったとされている。

ただ、この混沌による惨事は膨大であり、現在の大陸と、その近辺の島々。そして、この地より遥か彼方の北の大陸以外は水の中に水没した。
そう、海底に沈んだのだ。

だが、この世界に生まれ落ちた魔族達は滅する事はできず、この地より海の向こうの大陸に追いやる事となった。
強力な壁となる結界を張り巡らせ格別する。
そう、それが、ディール帝国より北の海に施された障壁だ。

全てが治まった後、神の言葉を聴いた『ヒト族の国』ロザリアン神聖国より、さらなる結界を張り巡らせ、その力を維持するよう努める事になる。
その結界の要が、教会や遺跡群にある石碑達。
詳しい事は、神聖国中心に秘匿という形で記録伝承されている。

それでも、やはり力は徐々に衰えたり劣化したりする。
また、護っている土地自体も浄化し、結界の中で護られていても、中に住むもの達の『悪感情』が消える事はなかった。よって、どうしてもそれが溜まり魔獣が発生してしまう。
各国の騎士達が討伐し、浄化してはいくのだが、数百年周期で現状悪化する時代が起こった。

今回も、同様な事が起こり、『扉』の出現した。
それが現在進行中である浄化巡礼の旅であった。
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