竜の恋人

異世界で愛を呟かれ

異世界で愛を呟かれ

そう呟いたのをしっかりと耳にした執事さんは、少しお待ちくださいと言って、何やら…あぁ、伝達魔法陣を飛ばしたんだ。

小声でつぶやいて、フイっと数枚飛ばしていく。
言葉では言うのも何だが、ものすごく優雅な動作だ。
どこかの御貴族様出身？小説とかでもよくそんな設定あるし…


しばらくすると、廊下に大勢の足音がする。
部屋の前に止まったのか、その後ノックしてゾロゾロと入ってきた。
体格も色々。もちろん、性別も種族も服装もだ。

整列して私の方い向いた。
ここに来てから見かけた事のある人もいるし、そうでない人もいる。


「では奥様。この者達の事を紹介させていただき、奥様のご希望に添えるよう尽力させていただきたいです。ではまず…」

そういうと、一人の騎士風の男性が前に出た。

「初めまして。私はこの領内の騎士団。黒竜団の団長を務めさせていただいておりますベネクス•キャラハンと申します。隣は副団長の」
「初めまして、私、副団長職を配しておりますシュワイアス•ロジモンドと申します。」
「我ら騎士団。御身を守る剣であり盾として支えさせていただきます。よろしくお願いします。」

黒い騎士服を着た二人がバットマントを翻して騎士の礼をとった。

「続きましては、私、財務担当をさせていただいております。アネッサ•オーリスです。」
「私は執務などの行政担当のバルムート•バトラーです。」
「侍女長のアイリス•キャラハンです。何かあれば直ぐに及びください。」
「最後、家令及び執事長を努めさせていただきます、ベスター•ロワルゴと申します。どうぞベスターとお呼びください。」

そう言って、他にも庭師や料理長も挨拶に来たがっていたが、今手が離せないとの事で、おいおいご挨拶に伺いますと言われた。

セイクリオン家はアステード王国の由緒ある公爵家で、領内を統括する組織も他の領内よりも整備されていると言われた。
邸宅を管理するも部門。執事•侍女•侍従などの人材部門。領地に関する仕事を行う行政部門。兵士や騎士団などの軍部を担う騎士団。会計に関する財政部門だ。

でも何でわざわざ…
あっ…もしかして、私がアルと…そっか。
とんでもない人と、その、結婚したって事？？

「我らが微力ながら御助力させて頂きますので、今後ともよろしくお願いします。」

そう言って挨拶をすると、侍女長と名乗ったアイリスさんのみ残って他の者達は各職場に戻っていった。

「奥様。私の事は『さん』付けは不要です。どうぞアイリスと呼び捨てでお願いします。」
「えっと…」
「奥様。」
「はい。よろしくお願いします。アイリスさ…いゃ、アイリス。」
「はい。私共に謙る必要もありませんよ。それは追々。では、少しだけお待ちください。」

そう言うと、廊下から室内に侍女が入ってきた。

「この者二人が奥様の専属とさせていただきます。ご挨拶を」

「はい。リンです。エルフ族です。よろしくお願いします。」
「はい。ランです。魔人族です。よろしくお願いします。」

二人とも、可愛らしい感じの同年代ぐらいに見える。
リンさんの方がエメラルドグリーンの髪に蒼瞳。
ランさんは紺色の髪に紅瞳だった。

「よろしくお願いします…じゃなくて、よろしくね？」

アイリスさんの表情が一瞬固くなりかけて、呼び直した。
うん、日頃から呼び捨てにしておかないと失敗しそうだ。
頑張ろう…