竜の恋人

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異世界で愛を呟かれ

異世界で愛を呟かれ(マルクス)

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『長年の望みを、やっと手に入れれる』そう期待しながら、黒いローブ姿の男性だった。
その後ろには、猫科の獣人族の侍女が虚な目で付き従っていた。
手には小箱を持っている。


地下に向かう階段を降り、目的地に向かう。
ギィーっと独特な金属音が周りに響き渡り、気にせずさらに奥に向かった。

従来の地下に部屋がある場合、じめじめとした湿気と、独特な空気の重たさを感じるが、この場所は特別な魔法を行使して作り上げた傑作の空間だ。
特別なモノを閉じ込めるために用意した…いわゆる『鳥籠』又は『箱庭』。
そして、実験ができる特殊空間だ。
魔人の国と言われるディール帝国内にある特殊機関である魔塔。
その敷地内に作り上げた自分用の研究場所。

既に目的の場所には待ち望んだモノが手に入って閉じ込めておいた。
背後に付き従う者を使って手に入れた。

背後に獣人は元々は自分の手の者ではない。
密かに忍び込んだところにちょうど良いように存在して手に入れた。
かなりの手練のようだが、自分からしたら大した事はなかった。
魔法で精神を壊して傀儡にした。
精神を壊す際に垣間見た映像に、欲しかったモノとの接触があり、そのモノと信頼関係があるように思えたのも好都合だった。

魔塔の実力者達には、その力を尊いと魅了され付き従う者がいたりする。
自分もだが己の研究に賛同し、また本国では王族の一員でもあったから多少は使えるものもいた。
それらを上手く使って邪魔者を誘導して欲しいモノから引き離し、付け入る隙を作り上げて…
結果、手に入れたのだ。

まさか『婚約』とかふざけた事を計画実行されるとは思わなかったが、手に入って仕舞えば結果オーライだ。
逃すつもりも返すつもりもない。
もうアレは俺のモノだ。

「もう直ぐだ…」

特別性の首輪も準備した。奴隷商人が使う『隷属の首輪』だ。
ただし、これに刻み込んだものは特殊なものにしておいた。
『不服従禁止』『自死禁止』『発語禁止』『魔力封じ』『位置探索』

特別なモノが逃げ出さないように、逃げ出す気も起こさせないように、地下室ではあり得ない小さな庭園も作っているが、そこにも『魔力封じ』は施してある。それだけでは不安だからな…

ただ、封じはするが、施すものを弾かすつもりはないから、あえてそこまで強固には付けていなかった。
自分が命じた者は、『魔力封じ』を解除できるようにしておいた。
でないと、研究に支障が出ては困る。

あの時、欲しかったモノは、一度は手の届かない場所に置かれた。
兄達のせいではあるが…
諦め切れずに探し続けて、見つけ、手に入るため、虎視眈々と狙っていた。
可愛らしい、俺の獲物。
俺のモノだ。


「さぁ、俺の手の中に…」

期待しながら、手を握りしめる。
もう少し…

目の前のドアを開けた。
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