竜の恋人

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異世界生活

異世界

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部屋に戻ればちょうどエルザさんが待っていた。
この所気落ちしている私の事を気にしていたようで、シリルとケイトを連れて行くように言われた。
エミリーはちょうど別の用事をしているから、後で向かわせるとも言われた。
そんなに大勢で?大丈夫なのか?と心配したが、領主様から研究所に用事を言われていたらしく、この人数で行っても大丈夫だと言われた。
エルザさんが大丈夫だと言ってくれるのなら、大丈夫だろう。

「じゃ、行って来ます」

笑顔で見送ってくれるエルザさんに手を振って出かけていった。
その数分後にアルが例のあの人と屋敷に来ていたとは知らなかったが……




「うん。ここの辺りはいい感じで育ってるね。向こうも良い感じ。早速採取しますか」

腕まくりをして、サクサクと作業に取り掛かる。
研究所に訪れると、やはりポーションの在庫数はかなり減っていた。
職員の一部は騎士達と外に取りに行き、残った者達でせっせと作っていた。
私の指導をしてくれているルーカスさんに、

「やぁ、体調は戻ったの?心配してたんだ。所長はちょうど用事でいないよ」

と声をかけられた。
いつもの優しい声で声をかけられてホッとする。

「ちょうどよかった。薬草園で、これらをとって来てくれる?」

そう言って渡されたメモと数個の籠。
いつもの鞄に入れても良いんだけど、これを敢えて渡して来たのなら…

素直に受け取って、只今薬草園でせっせとお世話をしながら採取中なんだ。
ついて来てくれているケイトさんもシリルさんも側で手伝ってくれている。

採取と、場合によっては間引きして…
間引きされた物もきちんとポーション制作に使われる。
乾燥させておく事もあるし、そのまま生で使う事もあるんだ。
捨てる事はまず無い。
よっぽど病気になっているのは別だけどね。

結構籠に溜まっていった。
後から来たエミリーが溜まった籠を研究所に運び、新たに数個籠を持って来た。
結構な力持ちだ。
立ち上がり、腰を伸ばす。
屈んでする場所も多いから、どうしてもこの動作は必要だよね。
今の場所は近くが背の低い薬草が多く植っている。
少し離れて背の高い薬草が多くあり、屋敷から研究所の道からこちらは見えにくくなっていた。
こっちからは見えるんだけどね…

向こうから人が歩いてくる。
あれは…
アルと例の人達。
研究所に用があるのだろう。

手を取り、エスコートされているその人。
嬉しそうに会話を素ているのだろう。
微笑んでいる。
アルも笑顔で応えているように見えた。

私はいったい何を見ているのだろうか…
あの人の側は私の…

いゃいゃ、そうじゃ無い。そうよ、違うでも、いや…イヤ…嫌…

音を立てないように、急いでその場を立ち去る。
誰もついてこないで!!!

そう強く願って走り出す。
一瞬背後が光ったようにも思ったが、そんな事どうでも良い。
今はとにかくこの場を離れたかった。

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