竜の恋人

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異世界生活スタートです。

ポーション(リカルト•クラレス)

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連絡がきた通りに彼女がここを訪れた。
予定通りと思ったが、竜人族の男は入ってくる気配がなかった。
ただ、とんでもない事をしてくれていた。
悪い意味ではない。

この建物を中心に、薬草園全てに結界を張ったんだ。
俺だって、ある程度は頑張って張っておいたが、小さな弱気魔獣と言うか、魔物は入ってきた。
薬草を食べに…
害のないのもある。
だが、それらを消し去っていくものを張ったんだ。
気配でしっかり感じとった。
魔力感知の強いものならわかるだろう。
そして、気配を消すスキルを発動したのか、感じられない。
ここに居ないと言う選択肢はまずない。
だから、完璧に消したんだ。
多分、彼女のために…

薬草には独特の香りがある。
ポーションを作成するにあたり、物によっては苦手とされる臭いもあるだろう。
たぶん、それで入ってこなかったと考えられる。
しかも、入らなくても、守り切る自信があるのだろう。
彼女の気配から、物凄い守護結界張られている気配が感じられた。
どのように張って行ったかは知らないけれど、この執着は…
もう、考えるのはやめよう。
必要なものだけにする方がいい。

この館内、ニ階の奥にある俺の執務室にたどり着いたようだ。
『ヨシ!』と気合いを入れる。

入ってきた彼女達に声をかけた。
好印象を持たれるように気を遣って…

「はじめまして。ようこそ薬草研究所へ。私はここの所長をしているリカルト•クラレスだ。よろしく」

貴族である俺は、貴賓がある感じに務めたよ。人あたりが良い感じにも見えるように気をつけて。しかも、貴族っていう感じの服装ではなく、着ている服はラフな感じにしているし、その上に白衣を纏っていた。
まぁ、いつものスタイルと言えばそうなんだけどね。

「初めまして。秋本 優里です。秋本が家名で、こちらで言うと、ユウリ•アキモトです。よろしくお願いします。」

ぺこりとお辞儀をした。
過去に召喚されてきた『聖女』の記録と同じだ。
『よくぺこぺこと頭を下げる』と書かれている。
過去の『聖女』に関しては、聖職者達が詳しく書物として残してきていた。
そう言う『民族性』だとか。
なるほどなるほど。

「そう頭を下げなくても良いいよ。うん。異世界人はよく頭を下げるって言うのは本当だったか。なるほどなるほど…」
「ふぇ??????」

思わず変な声を出したな。彼女は知らないのか。
俺たちがそう言う事を知っていると…
まぁ、あくまで一部のものしか知らない事だ。
実際に接した過去の者達と、それを伝え聞いた者達や文献を読み解いた者達のみ。
そして、彼女自身がその対象者とは、全てのものには知らしていない。
極秘だからね。必要な者だけだ。

「あ~っ、すまん。驚かせたか?俺は知っているが、他の研究員や職員はその事は知らないから大丈夫だ。私も貴族の端くれだしね。しかも、この領地の屋敷に隣接している研究所の所長。いわゆる管理者だからね。何か不足の事態が起こってはいけないと通達されていただけだ。それに、過去の異世界から来たそう『聖女』の事が書かれた文献を見た事があるからね。」

「そうなんですね…」

うんうん。納得してくれて嬉しいよ。
深く追及されたら困るからね。

「そうだ、確か薬草に興味があると聞いたが…」
「はい。余り詳しくはないのですが、ここの薬草園にあったラベンダーとかバジルとか、向こうの世界と同じ物があったので…」
「なるほどなるほど…そっか…」

腕組みしながら、思案する。
うん。予定通り。大丈夫だ。

「あの…」
「ん?何だ?」
「もしよかったら…」
「うん?」
「ここで働かせてください!!」

「「「えっ、えっ、え~~~~~~!!!」」」

三人の彼女について来た侍女達が大きな声を出して驚いている。
何でだ?そうなる可能性をアイツからそうなるかも?と聞いていないのか?
いないのか…

ワナワナしながら後ろで相談し出した。
それを不安そうに見ているな。
まぁ、コイツらなら、どうにかすると思うが…

「そう言えば…過去の『聖女』も、この世界のために働いた後も、何がしか仕事をしていたなぁ…まぁ、そう言う種族だとか何だとかで…うん、わかった。良いよ。ここで働いてくれ!」

助け舟をだしてみた。うん、こうした方がいいだろう。

「ありがとうございます!」

思いっきり頭を下げてお礼を言ってきた。
うん。いい子だ。

後ろでは『良いのかなぁ~~』なんて言ってるが、何か腑に落ちないのか?
良いんだよ。
貴族的笑顔を見せてみる。
これで良いんだとわからせるために。
そして、

「よし、なら手続きをさっさとすませてくるか。ちょっと待てろ」

机の上にに置かれているボタンの様な物を触った。
アイツを呼び出さないとな。

ドタドタと走ってくる音がドアの前までして、勢いよくドアが開けられた。
慌てすぎだろ。落ち着けよ…

「所長!何か緊急の用事ですか?」

少し額に汗が見える。
まぁ、急用時にしか使わないからな…慌てて走ってきたんだろう。
すまんな。
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