竜の恋人

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異世界生活スタートです。

回想(アルホンス)

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食事を終え、彼女をまた抱き上げて歩きたかったが、殿下に止められた。

「いつも知的で何事にも律するお前がここまで壊れるとはな…面白いが、やり過ぎは良くないぞ。まだ出会ってわずかな時しか過ごしていないんだから…『ヒト族』で、しかもこの世界のことを知らない彼女だ。嫌われるぞ」
「それは…困ります」

そう、困る。
殿下からの指摘を素直に受け入れる。

「俺は少し用事があるから、お前が側についてやれ」

そう言って、あてがわれた執務室に向かって行った。
ここには護衛の仕事と、交渉やその他の外交の仕事も殿下にはあるからな…

殿下と別れ、彼女の護衛として側について行った。

侍女達に案内されながら歩いて行くのは、薬草園だ。
上空からは香ってこなかったが、良い薬草独特の香りがする。
鼻も良い私達には、このくらいはどうもないが…

私的には、苦手な香りもないわけではない。
彼女が好むなら、好きになろう…

時々立ち止まっては、そっと触れてみたり、匂いを嗅いでみたりして楽しんでいる。
その行動がまた可愛らしい。

危険な植物であれば、侍女達が止めるだろう。
もちろん、私も止める。
『ヒト族』は、どの種族の中でも脆いのだ。
丁重に接しないと…


「どうされましたか?」

侍女のシリルだか、そう聞いている。
少し考え事をしていた彼女を心配してだろう。
私は見守るだけだ。

「何でもない。大丈夫」

そう返事して、『行こう』案内再開を促していた。

見えて来たのは、煉瓦造りの二階建て建物だ。
木の扉をノックして、出て来た職員らしき人に来方を伝えている。
研究員をじっと見つめる彼女。
イラっとするのを抑える。
邪魔してはいけない。ここに来るのは彼女の希望だと聞いている。
閉じ込めたい衝動もあるが、彼女が喜ぶなら、それを見守りたい。

「さぁ、入りましょう」

そう言って入って行く彼女達。魔力探知で安全性を確認できたから、私は周りを守護しよう。

「入らないんですか?」

朝の甘々に接してきた…そう、後ろから護衛騎士としてついてきた

私が扉の側で止まり、入ってこようとしいのを心配したのだろうか?
さみしいと感じてなら嬉しいのだが…

「私はここで護衛させてもらいますね。大丈夫です。いざという時は、直ぐにお側に行きますから」

護衛騎士として、ドアの外で立った。

「その姿…かっこいい…」

その呟きを耳にして、口角が上がる。
見つめられているのにも気がつき、嬉しくてたまらない。
こんな一面も自分にあったとは…
驚きだ。

「お願いします」

それだけ言って、少し気にしなが中に入って行った。

多分、今後彼女はここに何度も訪れるだろう。
上空から、ここらの地形やその他は覚えている。
危険がありそうな場所などをもう一度確認して、守護の結界を貼っておいた。

彼女を待ち続けながら、いろんな事を考えた。
もちろん、その中には、今後の護衛のこともあるが、時には彼女との生活で必要なものは…など、たわいもない事まであった。

念話で殿下と話すこともある。
『竜人族』の特有のスキルだ。
ただし、距離や同時で話せる人数などは、個々の魔力で変わってくるが…

そろそろ出てきそうだ…

「あいつはとっても優秀で面倒見が良いから大丈夫。明日から一人で来てくれ。」
「はい。よろしくお願いします。」
その会話を確認した。

出てきた彼女からも、屋敷に帰る道すがらその件は聞かされたが、中の声も聴いていたから知っているが、初めて聞いたそぶりをする。
そして、

「明日から一人でと言われましたが、ここまでの護衛として、控えさせてもらいますね。もちろん、邪魔は致しませんので、ご心配なく」

そう返事した。

一人で大丈夫と言って、護衛をお断りしたいと伝えられたが、それは聞き届けられないとも伝えた。
護衛としてもだが、『番』としても聞き届けられないんだ。

「このぐらいの事は安全だと思うんだけど…」という彼女の呟きは無視した。


ここまでの送迎は別として、仕事中は研究所の邪魔にならないよう、迷惑をかけないように離れて護衛という事で話がついた。
『隠れての護衛は得意だ』と、にこやかに応えてもみた。
これで納得してもらえたのだから、ホッとする。

彼女のしたい事は応援してやりたい。
そう思ってだ。
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