竜の恋人

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異世界生活スタートです。

回想(アルホンス)

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彼女をこの屋敷の侍女たちに任せた。
多分、彼女専属の者達だろう。
見た目からは分かりにくいだろうが、侍女の服の下には、暗器などを隠し持っているようだ。
かなり戦闘に特化していると見える。

これなら安心できるかもしれない。
まぁ、この屋敷には、私と殿下、そして部下達もいるのだから…
でも、やっぱり…

そう考えて、彼女自身とこの部屋に守護の結界を張っておいた。
城を護るぐらいの結界だ。
このぐらいしても大丈夫か?
いゃいゃ、今日はここまでだ…

目覚める頃に、また会いに来よう。


コツコツと靴音を響かせながら廊下を歩いていく。
殿下にあてがわれた客室に向かって…
報告と、今後についての打ち合わせだ。

ドアをノックし、入室の許可を取る。

「失礼します」

そう言って、部屋に入ると、テーブルに酒とグラスを準備して待っていた。
何故酒?

「お帰り。彼女はどうだった?」
「今は部屋で休ませています。」
「ふふっ、どうせしっかり結界でも張ってきたんだろ?」
「………」

しっかりバレている。
まぁ、『番』に対しての、『竜人族』の愛情と執着はかなりのものだ。
バレるはなぁ…

「お前のそんな顔を見られるとはな。面白い。まぁそれはさておいて…」

そう言うと、取り敢えず座れと言われた。
お互い向き合う形でソファーに座り、指示されていた事の報告と、確認をして行った。
この屋敷の構造や、人員配置。その他諸々だ。
今は業務中。今後における事もあるから、入念にしていく必要がある。

彼女は異世界から来たもう一人の人間だ。
今は、『聖女巡礼』のための準備や各地で起こっている『瘴気』や日々凶暴化していく『魔獣』対策。北に出現した扉の監視などで、彼女の事までは…
だが、この世界に呼び込んでしまった彼女の保護の為、一部の者達で、彼女を隠す事に決定した。
『ヒト族の国』ロザリアン神聖国の皇太子、『フェリックス•ロザリアン』を中心にしてだ。
あえて悪者に徹した彼だ。
姿を変えさせ、この地で取り敢えず護ると決めた。
いつどこで、彼女を得ようとする輩が現れるかもしれないと懸念して。
特に、北の国、『魔人の国』ディール帝国の魔塔の者達は危険だ。
あの国の皇帝や、皇族の者達は見知った限りでは大丈夫だろうが、奴らはあらゆる事への探究心が強い。
『聖女』には手を出す事は出来ないが、一緒に現れた『彼女』を研究という名目で、何をするかわからない。
しかも、皇帝達は、法律改定などを試みようとしているが、あの国の『ヒト族』に対しての対応は…
『奴隷』または『ペット』の扱いをする者が多いのだ。

それは、『ヒト族』の特性と言っても過言はないだろう。
どの種族にも馴染みやすい彼らの魔力。
流し込まれれば気持ちが良い。
彼らの魔力に触れるだけでもだ。
だから、娼館に『ヒト族』を集めたりもしているのも有名だ。

そして、特に好まれる特性は、優秀な子供を孕みやすいという事だ。
子孫繁栄のために、子供を産ませる目的で、囲うものも多いと聞く。

そんな国のしかも危険な一部の集団がいると所が、彼女を捕えようとしない訳がない。
あの場所で、魔塔のもの達もいたのだ。
あの儀式はかなりの魔力が必要だ。
各国から協力のためと集められた。私や殿下は魔力はかなりある方だが、今回は見守りで参加していた。
不測の事態のための待機とも言えるし、自国に報告するためとも言える。

魔塔の者達は、儀式後魔力枯渇で倒れていた者が多かったが、彼女の出現を目にした可能性が十分にあるんだ。
それに、他の貴族達も、自分の権力保持のために野心を抱き求める可能性も…

あらゆる可能性があり、トップシークレットとして、一部の者達しか知らない事だった。

我が国も、その件を隠される可能性があったが、彼女が私の『番』である可能性が強かった為、殿下がすぐさま動いてくれた。そして、今に至るんだ。
じっさい、本当に『番』だった。

長い年月、探しに探し、何処にも見つけれなかった『番』。諦めかけた時に、出逢えた。
こんな時だが、神に感謝した。
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