異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

文字の大きさ
上 下
188 / 193
未来のために

運命が回りだす

しおりを挟む


そうこうしたら、何故か場所はテントの中に変わっていた。
うん、これは神々の成せる技だろう。もう深く追求する事はやめておくことにした。

「父上、無事に扉は閉じられたようですね。」
「あぁ、皆ご苦労だった。まだ魔獣や瘴気の被害も残っているだろう。住民の安全を重視して、各国に報告をするべきだろう。」

夫が娘であるセレスにそう指示を出し、すぐさま騎士達が動き出した。
自国の者が多いこの場での支持は、やはり自分達が主として行うべきだろう。
もちろん、数名残して調査も必要だけれども。
扉が閉まった事は自分達が実際に見たから、大丈夫だと思うが、国としては今後の報告義務がある。
各国の代表として集まった者達も、それぞれの国に報告と片付けとで忙しく動き出していた。

流石だと思う。こう言う行動力の凄さと言うか采配というか…
子供達もしっかり成長したものだ。
ある程度は子育てで側にいたけれども、数年間は眠りについていたんだ。
あの呪いが一体どういったもので、どう影響していたのかまで、詳しく説明しろと言われたら、詳しく説明できない。調べ上げられたであろうが、神がした事であるから…

カルロスの英霊召喚の時に便乗して側にいられたのはよかったと思う。
それらも、未来視で見た物の選択肢の一つとして最善と当時考えて…

いゃ、今はそれは良い。

妹のそばを離れようとしないあの竜人族の義弟は、大きくなったら子供達に指示を出し、屋敷の者達に連絡するのだろう。
シルバーは…聖騎士の格好から、いつもの侍女の姿に変わっていた。
あの二人の今後の関係も気にはなるが…
そんな事を考えながら、自分がすべき事を考えようと、みんなの行動をそれとなく見守っていた。

「マスター。我らも手伝いをしてきますね。」

いつの間にか、カルロスの側に来たアルストがそう声をかけていた。
彼は独自の叡智を持って理解し、他の者達と共に動こうとしているのだろう。
カルロスが『お願い』とだけ伝えているのをただ見守る。
一緒に見守ってきた仲間。
うん、後で話を聞きに行くのも良いだろう。
元同僚として…
周りが許してくれたらだが…許してくれるわよね?

彼らはカルロスのスキルで召喚した英霊達だ。
今まで隠し通し、公にはしていなかったけれども、もうバレバレだし、もう良いかと思ったんだろう。
騎士達も初めは驚いていたようだけれども、そこは統率が取れているのか、特に混乱は見られなかったしね。
時々崇めるような視線はあったけれども…
あの中に…

入って行こうとしたら、腰に回された腕に止められた。

彼らにとっては、英霊は過去の英雄。よって尊敬の念が多いにあるのだろう。
過去の偉人に対しての尊敬の念は向こうの世界でもあったから。
実際に今のこの世界みたいに、会う事は叶わないけれど…
そんな彼らと自分との関係性で今近づけばややこしく感じられるとの懸念??

「何処に行こうと?我妻はまた私を置き去りに?」

違ったようだ…
思わずダラダラと嫌な汗をかく。

問題はまだあるけれど、取り敢えずは良い方向に向いていっていると思う事にして、今は夫に従うのが正解?

神々の色んな傍迷惑な思惑で全てが振り回されてのこれまで…今回の結果だと理解し、その後の事も考えていく問題も残っているし…

慌ただしく周りが動き出し、みんながほっとしているから、まぁ良しとしよう。
今回の事は、記録として残せるだけ残すことにもしたようだし…
神々の御都合で、どこまで残せるかはわからないが…
それに…

「大丈夫か?」

カルロスの相手であるジャディール殿下が彼を心配そうに覗き込んでいる。
そう言えば、顔色が悪い気がする。
ジャリっと音がして…

「カル!!」

身体から力が抜けて、表情も…
夫の腕から逃れて、駆け寄ろうとした。
既に彼の相手が抱き止めて抱き上げてはくださったけれども…

「魔力が抜けている。急ぎ手当を!」

そう言ってテント内に入って行った。
妹も急いで懐にしまっていた予備のポーションを持って駆けて行く。
なら、私も聖女として…

「ここは殿下にお任せしよう。大丈夫だから…」

夫に抱き寄せられて、抱き上げるようにして離された。
どうして?
そう思った途端、彼に唇を奪われて貪られ…
いゃ、何かを飲まされた…
そこで私の意識もプツンと途切れてしまったのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...