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未来のために

決着

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驚きの真実を知り、思わず頭の中が真っ白になりそうになった。
だけれども…何という事だろうか。
甥っ子が転生者であると言う事は、妻から少し聞いたが、納得まではしていなかった。
妻が召喚による転移者である事はこの目で見ていたし、過去にもいたのだから理解はしていたが…
魔塔にも在籍した事があるし、城の多くの文献の中にもそれらしき事が多く残されていたからな。
だが、甥っ子であるカルロスが、妻達がいた前の世界と時間軸は違うかもしれないが同じ世界の住人であったようだ。
そして、その世界にあのディアブロが干渉していたなんて。

一体どこからどこまで干渉していたのかはわからないが…それが神の力という事か?
詳しく問いただして聞いてみたい気もするが…神の領域にヒトが下手に触れるのは不味かろう。
向こうから話してくれる分は良しとなるだろうが…辞めておいた方がいい。
知らない方がいいことも、世の中にはあるのだから…。
やや棚上げみたいな感じにも思うがそれはそれとして…

周りが動き出したことにより警戒心を強く持つ。
小悪魔達が急に扉から出てこなくなった理由も知りたいし、後世に情報の一つとして残す必要性がある。
地面にあったはずの無数の残骸は、不思議と消えたのも不可解だ。

今存在するのは自分達と、目の前に現れた扉から出て来た者。そう、神の一人だ。
ならば、どうするべきか…

そんな事に考えを巡らせていたら、現れた神が聖女の方に手を伸ばした。
元聖女の二人でなく、現役聖女であるアイの方にだ。
アイはいきなりの事で恐怖し動けないのか…

ズボッと勢いよく手を突き刺され、中のモノを引きずり出される感じだ。
アイ自身の身体は、少し後ろに揺らいだぐらいで…
彼女の顔色を悪くしながら恐怖でひきつっているようだが、出血などは見受けられない。
ただずるずると…

掴んで出てきたのは…神 アルメルアとよく似た容姿の…アレが例の神アルメルアの双子神である神シルメール??

「離せ!」

体全体が姿を表すと、神シルメールは片手で持ち上げられて、宙ぶらりん状態にされていた。足と空いている手をばたつかせて抵抗しているようだが…
そして、体制を変えられて、ぎゅっと腕の中に拘束するように抱きしめられた。
体格差と力の差なのか、抵抗が抵抗になっていないようだった。
これは一体?

「ふむ。やはり中に潜んでおったか。我が捕らえなくても、やはり彼の方がな…」

そう言いながら、扇子をパタパタさせるアルメルア。
その間も、扉から何かが這い出ようとするが…うん、途中で出る事が叶わないのか後ろに引きずられるように後退している。
不思議な現象だ…

周りの者たちも、どうしたらいいのか?と見守っていた。
いつでも戦闘体制になれるようには注意してだ。
私もエドワード殿下もそしてジャディール殿下もそれぞれ大切な者を腕の中で抱きしめて守りながら事態を見守る。
アイは地面に座り込み、そこを巡礼メンバーの者達が保護するように自分達がいた位置にまで助け出していた。

「離せ!離せと言っておる!」
「離せばどうするつもりか?またこの俺から逃げようと?どこかの誰かと遊ぶつもりか?今まで遊ばせてやったのだ。もう良かろう?」
「嫌じゃ。我はもう少し遊ぶのじゃ。」
「そう言って、今まで目を瞑っていたが、少しやりすぎだ。」

二人の神が抱き合いながら…うん、片方は可愛い者を捕らえている感じで、もう片方は…うん、かなり暴れている。
扉から出てきた時にはかなり恐怖心が湧いて出ていたが、今はまる…

「神アルメルア。あれはいったい?」

「あぁ、あれはシルメールの相手じゃ。ディアブロから聞いたであろう?夫婦神の事を。まだ夫婦神にはなっておらぬが…この世界で言うなら婚約中の婚約者か?」
「婚約者の神?」

「ふむ。『世界の理』の事はどこまで理解しているかわからぬが…各世界には創造神がおる。この世界では光と闇の二神。光の神リーミエと、闇の神カーミエじゃな。そこにおるであろう。」

指さされた所に…黄金の髪にオパールの様な瞳の神である光の神と、銀色の髪にオパールの瞳の神である闇の神が、祈るように手を組んで見守っていた。えっと…どうしてそんな所に?しかもオドオドしてるのだろうか?自分より上位の神が居るからか?

「この世界以外でだが、自分達で創造した世界が上位神の意に沿わない場合、『破壊による再生の促し』もしくは『破壊による再構築』『単なる破壊』として、あのような扉を通して破壊神や悪魔などが現れる。世界によっては自然破壊や公害。戦争被害で世界が負に侵されていた場合や、魔素や負の感情が多くなり魔素溜まりが発生し、瘴気被害が増えて魔獣や魔物が蹂躙し出した場合。高度文明による被害もそうか…創造神が修正不可になった世界は不必要とされるからの。時に、何と言うか、我が双子の片割れのように、己が欲求で破壊に導いたり破壊したり、欲しいものを側に置くために狩を行ったりとな…。」

「はぁ~。」

「神は自己中心的で身勝手な者が多い。まぁそのおかげで色々と世界の文明が発展したりするのだが…今回アレがこの世界に目をつけたのは、最初は面白半分の好奇心じゃ。あの二神。この世界を構築した二神とそなたらの中にあるカケラ…その神に興味を持ったためじゃ。ちょっかい?横槍?そんな感じか?」

「何ですかそれ?傍迷惑なんですが。」

「そうじゃな。否定せぬな…はぁ…………。」

そう言って大きなため息を一度吐かれた。
なら、もしかしたら妻に刻まれた呪いも解除できるのでは?
そう期待して妻の腕を確認したが…残念ながらまだそれは残されていた。
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