異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

文字の大きさ
上 下
174 / 193
未来のために

決着

しおりを挟む
休憩を挟みながらとにかく先に進んで行った。

ヒト族の括りに入る私や妹、そして甥っ子のカルとかは、竜人族とか魔人族と言った種族間の違いか、体力差がかなり激しい。
カルの場合は父親が竜人族だから、普通のヒト族よりは体力があると思ったけれど、日頃の甘やかされ状態のせいか、うん、体力落ちているみたい。私と妹は…年齢は関係ないわよ。ほら、女性と男性の違いよ。それ以上の追求は許さないわよ!
初代聖女のアカリや、先代聖女である私がカルや皆んなに癒しを施すんだけどね。でも、癒しの回数がどうしても多くなる。そうなると、番が抱き上げて歩こうとして…魔獣も魔物も出て来るダンジョン内だし、恥ずかしいし、討伐に支障が来る。よって、頻回の休憩が挟まれていたのよ。

向こうは向こうで現役聖女がいるから良いでしょう?聖女に対しては、神からの印が与えられた者が癒しを施すのだから。癒しあいをしてるから、関係ない。
そう言い切りたいんだけど、彼の友人が向こうにいるしね…確か友人の『スレイン』だったかしら?彼の事は心配しているのが丸分かりだ。確かエルフ族だったと思うんだけどね…
あの種族は、見た目と実際の体力のギャップが結構あるのよね。
でも、休憩は必要よ。いざという時に体力も気力もすり減ってしまっては元も子もない。
空腹も天敵だと思うしね。

で、全体的に一緒に行動しているから(多少離れて入るけど)ほぼ近くで休憩を取る。まぁ、聖女達とは少し距離を置いているけどね。またあの聖女である愛が、私の可愛い甥っ子にちょっかいをかけられたらたまったものではない。それに、甥っ子の番であるジャディール殿下に恋情でコナかけてきたら困る。
いくら自分の推しだからって、奪い取ろうって魂胆が気に食わない。
本人の意思がそうさせるのか、それともあの身体に潜んでいる神がそうさせているかはわからないけれどね…

それ以外にも、休憩中に魔物や魔獣が襲ってこないとも言い切れない。
扉に近づくに連れて、凶暴性を増して来ているし、数も増えて来ている感じがするから。
で、結果、聖女一行とこちら側の二つの結界が張られていた。
普通の結界なら、聖女達がこっちに近づこうと思えば近づけるんだけど、カルの事で彼女が色々やらかしていたから、特に彼女だけはカル達に近づけないようになっていた。

洞窟内に入る時には、そこまであからさまに毛嫌いはしなかったんだけど、洞窟内でのあの叫びが決定打になったのよ。ホント信じられないわ~。

聖女達巡礼メンバーがこちらに用事がある場合は、友人のスレインを通すように。彼の手が離せない場合はルディウス殿下がと言う風に窓口指定。伝達魔法陣を使っても良いけれど、枚数が減って来ていたからね。
スレインはカルの友人だし、ルディウス殿下は癒しの魔法が得意なロザリアン神聖国の第二皇子であり、光魔法保持者で聖職者として国に貢献している。以前、聖女の魅了にかかっていたらしいけど、今は大丈夫だと彼、スレインが太鼓判を押したから取り敢えず様子見で許したのよ。スレインは何故か魅了はかからないらしい。多分王族の何かを持っているんだろうね。
うん、今度教えてくれないかな?もしかしたら、エレン辺りが知っているかもしれない。
今度連絡して聞いてみよう。

「マスター。お茶をどうぞ。皆様も。」

そう言って、ディアブロがみんなに給餌をし出した。
一体どこから出してるんだか。異空間収納?そうなんだ。
あの時もそうだけど、今も規格外の男だ。

「ちょっと、どうして向こうはあんなに優雅なお茶タイムしてるのよ。私は聖女なのよ。私こそお世話されるべきじゃない!!」

向こうでまたそう言って怒り狂い出した。
召喚された時の可愛らしく活発な少女の姿だったと聴くけど、何処に行ったのか?
もう、遠くに飛んでいったんだろうね。
今では小学生低学年か幼稚園児の駄々っ子のようだ。

「ディアブロ、向こうにも少し分けてあげて。」
「え~っ、どうしてですか?」

優しいカルがそう言うのを、ディアブロが思いっきり嫌そうだ。
だが、聖女はアレでも、他のメンバーはマシかも知れないしね…
それなら…哀れだし…

「マスターがそう言うなら仕方ありませんね。では、少しだけお届けして来ます。」

ディアブロが折れたようだ。結界から抜けて向こうに籠を持って行った。
籠の中には簡単なティーセットとサンドイッチを入れているとも言っていたから、少しは小腹が膨れるだろう。
お腹がすけば、イライラが募るしね…

「それにしても、聖女ってあんな感じでした?」
「何だか幼子みたいですね。でも、確か十六歳ぐらいですよね。」
「そうだったと思うんだけれども…」

いつの間にか人数増えてるけど気にしない。
だって、元々この人数だったのを知っているから。一人足りないけどね…

元聖女の私達と妹で仲良くお茶会状態。
もちろんカルも引っ張り込もうと画策中。
それを見守りながら、蠢く魔物達に対して『鬱陶しい!』と言って夫達が周りで無双し出した。
息子達は魔石を拾い始めて…
何と言うか…さっきの緊張感どこにいった?
気分はピクニック•ダンジョン?

カルの英霊の一人であるアルストが向こうのメンバーを憐れみ出して、ガラとシェリルも仕方なく向こうが休んでいる間は周りに現れた魔獣と魔物を討伐するため重い腰を持ち上げた。

「聖女はどうでもいい気がするんですけどね。」
「メンバーがあまりにも哀れで…」

そう言いながら…狭い洞窟内も気にせずサクサクと討伐していった。
楽しんでるよね。絶対ウキウキしてるよね~
一緒に行動もしていたから、私は知っているのよ…

「ふぅ~、良い運動ができた。」
「あぁ。」

向こうで良い汗かいたみたいな雰囲気に、巡礼メンバーのマルクスとマリエットが反応した。
あの男は、カルが抜けた後に騎士から選抜された竜人族だ。
彼の名前は?そうそうグレナダだ。彼は後から印が浮き出て来たとか?
アカリが神殿の方に調べ物に行ったついでに情報を得て来てくれて、みんなに教えてくれたんだった。
カルが抜ける前に刻印の様な印が薄らと浮かんでいて、抜けた途端にくっきり浮き出たらしい。
付けたのはあの二神のはず。聖女の愛は、自分の推しであるジャディールにその刻印が現れる事も期待してたみたいだけどね。残念でした~。


「さて、そろそろ先に進みましょう。」

向こうの茶器等も片付けた後、ディアブロはさっさと私達の元に戻って来た。
愛も、もう諦めたのか、渋々立ち上がり、先頭メンバーと一緒に歩き出す。
時々こちらをみてるけどね。諦めが悪いなぁ…

「後、もう二箇所ほど分岐点を過ぎれば目的地です。」

先行調査で調べてくれていた忍者マスターのガラと、戦闘エルフのシェリルがそう伝えてくれて、『よし!』と皆んなで気合を入れ直した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...