162 / 193
未来のために
決着
しおりを挟む
「父上!!」
一番乗りでやって来たのは次男のダミアン。
魔塔の長、魔当主である彼は、以前自分も使用していたものと同じ馴染みのローブをひるがえしながら姿を現した。我が兄から団長職を引き継いだ長男ケインズ。そして、国政をある程度終わらせてやって来た娘のセレスティン。
まぁ、言いたい事はわかるがな…
「何で母上を引き留めてくださらなかったんですか?会ってほんのわずかでも声をお聞きしたかったのに。」
「父上ばかり狡いです。」
「必死で国政を任されてるのに!」
『まぁまぁ』と宥めながら苦笑いだ。
母親に会いたい気持ちもわかるからな。
身体はここで横たわって、まるで眠っているように…ここに来れば会えるが、実際に会話したい気持ちも理解できるのだから…
「サヤカも忙しいようだったからな。だが、後少しだ。例の扉を完全に閉め消失させる。そしてあの神にこの世界から去っていただく。その為に、今が最も大切な時期なんだ。しかも、君たちの従兄弟が窮地に晒されているからね。」
それだけ告げれば、子供達も理解できる。
彼等なりに情報を得ながら、お互いに情報交換し、いかに有利に事を運ぶか模索して実行支援しているのだから。
「今回現れた場所は、今まで継承して来た記録とは全く違いうからな。」
「今までは上空だっただろう?確か父上の時もそうだったはず。」
「あぁ、私の時も上空だったよ。海上であったけれどね。」
「確か、湿原や山脈地帯上空と言うのは有りましたが、洞窟内は初めてだと記憶しています。」
そう、今回出現したのは我が国南東部に位置するアルングスト山脈内の洞窟だ。
なぜそこに出現したのかはわからないが…
「現在、聖女の活躍で…と言うか、従兄弟殿の活躍のおかげで多くの地域が浄化されているから、魔獣被害はかなり減少されている。魔素溜まりが減って来たお陰だがな。だが、洞窟内は魔素が溜まりやすい絶好な場所であるから…」
「扉が開きかけているのか?」
「あぁ、報告では現在三割ほど開いているらしい。魔塔や騎士団から魔術師や魔導士。そして、騎士団からは、魔人族の者を重点に配備させてある。」
「あぁ、その方が良いだろう。もし急激に開いた場合にまず小悪魔供が飛び出てくるからな。そしてやがては大物が…魔人族の方が対処しやすいだろう。」
過去を思い出してそう伝えた。
あの時も急激に開き出した。
ユウリと沙也加のおかげで対処できたが、もし彼女達がいない時にあの様に開き始めていたら…
背筋がゾッとする。
「で、母上からの情報ですが…」
「あぁ、これだ。」
彼女が持って来た物から複製した物を懐から出して見せる。
彼女に以前渡しておいた記録を写す魔道具で、例のノートを取っておいてくれていた。
それを私が複製本とした。元はノートだったらしいが…今手に持つのは…立派な本だな。
「これは…」
ダミアンがペラペラとページを捲り速読していく。
それを横から二人が覗き込み、読み取っていく。
「不思議な内容ですね。実際に起こっていることと類似している箇所が多い。横に描き直しているのは、修正した箇所でしょうか?」
「あぁ、サヤカが言うには、カルロスの前世の記憶を先に年代別…時の流れの様に記録して、実際に起こったことなどを横に記録されているらしい。カルロスはサヤカと同じ異世界の知識を持つ『転生者』らしい。」
「『転生者』ですか?そう言えば、過去の魔塔の記録保管庫の禁書区域の中の一冊に『転生者』の記録がありました。その中に記載されていたのは、一つはこの世界の『転生』とされる物です。人生のやり直しと言いましょうか…後は、全くの異世界からの『転生』です。異世界で生まれ育った者がそこで亡くなり、その記憶を持ってこの世界に生まれ落ちた。ただ、従兄弟殿…カルロスの様に詳しくは記憶していなかった様です。まるで虫食いの様な感じで記憶されていて…そのおかげで魔道具研究や魔法陣研究が飛躍的に発展しましたが…」
そう言えば、そんな記録があったか…だが、今回のとは全くの別物と言えるだろう。
それぐらい大きな差があった。
「気になる箇所は数箇所ありますが…まず最初はこの未遂事件ですね。この通りにならずに済んで良かったと思いますよ。この様な事をしようと考えそうな人物ではありますが、実際に行われていたとしたら…そく極刑にしてやりたいぐらいです。」
「あぁ、そうだな。」
「後、他にも気になる点は多いにありますが…この洞窟。これは例の?」
「多分そうだろう。」
「こちらの掴んでいる情報では、従兄弟…カルロスが現在濡れ衣を着せられて姿を隠している…と言うか、消えてしまって消息が掴めておらず、それに関連して彼の国の王弟であるジャディール殿下が魔力暴走を起こして消息が途絶えています。その時、聖女アイが側に居たようですが…彼女の力は使われていない様です。その場面がこの文章の場面に類似していますね。」
そう言って指さしているのは、洞窟内でカルロスが魔に取り憑かれた行動をし、番であるジャディール殿下に打ち捨てられる場面だ。それにより魔力暴走を引き起こして、聖女の力で癒される場面。聖女を番とし、共に扉に向かうか…だが実際は、あのディアブロがカルロスを何処かに連れ去り、居なくなった番に悲観してジャディール殿下が魔力暴走。何故その場に姿を現せられたのかはわからないが、聖女アイが姿を現せた。ただ、聖女の力を使う前にジャディール殿下が姿を消したらしい。聖女アイは、同じ巡礼メンバーであるルディウス•ロザリアンと共に戻ったらしいが…
「だとしたら、この場面にかなり近づいていると言う事ですよね。なら、洞窟近くに私も待機して、いざという時の対応を!」
「いゃ、俺が行こう。お前は城で待機だ。女帝であるお前に何かあれば困る。」
「そうですよ。兄上の言う通りです。勿論私も行きますけどね。父上は?」
「そうだな…もしそうであれば…」
「そうであれば?」
確かあの未来視では…妻が、沙也加が目覚める…
「時が来れば私も行こう。テントにはクッション多めの休める場所…そうだな、ベッドが必要か~」
「え?ベッドですか??」
「あぁ、その辺りは私が準備して持っていけば良いか。ならば…」
ニヤッと笑って、各々ですぐさま行動する様に子供達に言い聞かせた。
少し不平不満な表情を見せたが、そこは父親としての権限を行使させてもらおう。
一番乗りでやって来たのは次男のダミアン。
魔塔の長、魔当主である彼は、以前自分も使用していたものと同じ馴染みのローブをひるがえしながら姿を現した。我が兄から団長職を引き継いだ長男ケインズ。そして、国政をある程度終わらせてやって来た娘のセレスティン。
まぁ、言いたい事はわかるがな…
「何で母上を引き留めてくださらなかったんですか?会ってほんのわずかでも声をお聞きしたかったのに。」
「父上ばかり狡いです。」
「必死で国政を任されてるのに!」
『まぁまぁ』と宥めながら苦笑いだ。
母親に会いたい気持ちもわかるからな。
身体はここで横たわって、まるで眠っているように…ここに来れば会えるが、実際に会話したい気持ちも理解できるのだから…
「サヤカも忙しいようだったからな。だが、後少しだ。例の扉を完全に閉め消失させる。そしてあの神にこの世界から去っていただく。その為に、今が最も大切な時期なんだ。しかも、君たちの従兄弟が窮地に晒されているからね。」
それだけ告げれば、子供達も理解できる。
彼等なりに情報を得ながら、お互いに情報交換し、いかに有利に事を運ぶか模索して実行支援しているのだから。
「今回現れた場所は、今まで継承して来た記録とは全く違いうからな。」
「今までは上空だっただろう?確か父上の時もそうだったはず。」
「あぁ、私の時も上空だったよ。海上であったけれどね。」
「確か、湿原や山脈地帯上空と言うのは有りましたが、洞窟内は初めてだと記憶しています。」
そう、今回出現したのは我が国南東部に位置するアルングスト山脈内の洞窟だ。
なぜそこに出現したのかはわからないが…
「現在、聖女の活躍で…と言うか、従兄弟殿の活躍のおかげで多くの地域が浄化されているから、魔獣被害はかなり減少されている。魔素溜まりが減って来たお陰だがな。だが、洞窟内は魔素が溜まりやすい絶好な場所であるから…」
「扉が開きかけているのか?」
「あぁ、報告では現在三割ほど開いているらしい。魔塔や騎士団から魔術師や魔導士。そして、騎士団からは、魔人族の者を重点に配備させてある。」
「あぁ、その方が良いだろう。もし急激に開いた場合にまず小悪魔供が飛び出てくるからな。そしてやがては大物が…魔人族の方が対処しやすいだろう。」
過去を思い出してそう伝えた。
あの時も急激に開き出した。
ユウリと沙也加のおかげで対処できたが、もし彼女達がいない時にあの様に開き始めていたら…
背筋がゾッとする。
「で、母上からの情報ですが…」
「あぁ、これだ。」
彼女が持って来た物から複製した物を懐から出して見せる。
彼女に以前渡しておいた記録を写す魔道具で、例のノートを取っておいてくれていた。
それを私が複製本とした。元はノートだったらしいが…今手に持つのは…立派な本だな。
「これは…」
ダミアンがペラペラとページを捲り速読していく。
それを横から二人が覗き込み、読み取っていく。
「不思議な内容ですね。実際に起こっていることと類似している箇所が多い。横に描き直しているのは、修正した箇所でしょうか?」
「あぁ、サヤカが言うには、カルロスの前世の記憶を先に年代別…時の流れの様に記録して、実際に起こったことなどを横に記録されているらしい。カルロスはサヤカと同じ異世界の知識を持つ『転生者』らしい。」
「『転生者』ですか?そう言えば、過去の魔塔の記録保管庫の禁書区域の中の一冊に『転生者』の記録がありました。その中に記載されていたのは、一つはこの世界の『転生』とされる物です。人生のやり直しと言いましょうか…後は、全くの異世界からの『転生』です。異世界で生まれ育った者がそこで亡くなり、その記憶を持ってこの世界に生まれ落ちた。ただ、従兄弟殿…カルロスの様に詳しくは記憶していなかった様です。まるで虫食いの様な感じで記憶されていて…そのおかげで魔道具研究や魔法陣研究が飛躍的に発展しましたが…」
そう言えば、そんな記録があったか…だが、今回のとは全くの別物と言えるだろう。
それぐらい大きな差があった。
「気になる箇所は数箇所ありますが…まず最初はこの未遂事件ですね。この通りにならずに済んで良かったと思いますよ。この様な事をしようと考えそうな人物ではありますが、実際に行われていたとしたら…そく極刑にしてやりたいぐらいです。」
「あぁ、そうだな。」
「後、他にも気になる点は多いにありますが…この洞窟。これは例の?」
「多分そうだろう。」
「こちらの掴んでいる情報では、従兄弟…カルロスが現在濡れ衣を着せられて姿を隠している…と言うか、消えてしまって消息が掴めておらず、それに関連して彼の国の王弟であるジャディール殿下が魔力暴走を起こして消息が途絶えています。その時、聖女アイが側に居たようですが…彼女の力は使われていない様です。その場面がこの文章の場面に類似していますね。」
そう言って指さしているのは、洞窟内でカルロスが魔に取り憑かれた行動をし、番であるジャディール殿下に打ち捨てられる場面だ。それにより魔力暴走を引き起こして、聖女の力で癒される場面。聖女を番とし、共に扉に向かうか…だが実際は、あのディアブロがカルロスを何処かに連れ去り、居なくなった番に悲観してジャディール殿下が魔力暴走。何故その場に姿を現せられたのかはわからないが、聖女アイが姿を現せた。ただ、聖女の力を使う前にジャディール殿下が姿を消したらしい。聖女アイは、同じ巡礼メンバーであるルディウス•ロザリアンと共に戻ったらしいが…
「だとしたら、この場面にかなり近づいていると言う事ですよね。なら、洞窟近くに私も待機して、いざという時の対応を!」
「いゃ、俺が行こう。お前は城で待機だ。女帝であるお前に何かあれば困る。」
「そうですよ。兄上の言う通りです。勿論私も行きますけどね。父上は?」
「そうだな…もしそうであれば…」
「そうであれば?」
確かあの未来視では…妻が、沙也加が目覚める…
「時が来れば私も行こう。テントにはクッション多めの休める場所…そうだな、ベッドが必要か~」
「え?ベッドですか??」
「あぁ、その辺りは私が準備して持っていけば良いか。ならば…」
ニヤッと笑って、各々ですぐさま行動する様に子供達に言い聞かせた。
少し不平不満な表情を見せたが、そこは父親としての権限を行使させてもらおう。
2
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる