異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

文字の大きさ
上 下
161 / 193
未来のために

未来のために

しおりを挟む
沙也加を通して義兄弟となったアルホンス•セイクリオンに伝達魔法陣を飛ばす。
神から得た情報や、子飼いから得た情報などだ。

妻が眠りにつく前から幾度か会ったり、このような方法でやり取りはしていた。
妻が眠りについてからは、ほぼこの方法だが。

何せ、あの時取り逃した男がいつ妻の身体を奪いに来るか、もしくは同じ考えの者が現れ、奪おうとするかわからなかったからだ。

あの男、マルクスは、『聖女』や『異世界人』にかなりの執着を示していた。
つい最近では、甥っ子であるカルロスに手を出して、あの子の英霊達に返り討ちにあっていた。
カルロスに手を出したのは、異世界人の母親の血を注いだ黒髪ヒト族の子供であるからだろうが…
黒髪の子供達は、魔力が多い。しかもヒト族で、母親が異世界人であるから、他の子供に触手を伸ばさなかったあの男が興味を持ったのだろう。
ヒト族をまるでモルモットのように研究する魔術師は魔塔に多かった。
現在では禁止されているが、それでも闇市で奴隷のように売買して買取…
気に食わぬが…

まぁそれらによって、今眠りについている妻の身体を奪いに来る可能性が高いと、私が守り人をかってでているのだ。
過去にも、彼女達の力や生態を研究したいとする者達は過去にも多くいた。
力を求めて奪い合う事も過去にはな…
まぁ、それなりの神の制裁もあったようだが…

だが、あの男の執着は異常のように思っていた。
もしかしたら、例の神シルメールとも関与している可能性も…

神アルメルアの双子神。
厄災を楽しむ厄介な神だ。
あの時も、障壁を一部破壊しての惨事もあの神が関与していたし、扉の件も…
我妻の左手に残された呪いの刻印とされる痣も…

あの時からの呪いは…彼女の聖女としての力と、神の加護。そして、この神殿の守りと護りで…


「はぁ…………。後どのくらい待てば良いのか…」

そう呟いていたら、彼女が私の前に姿を現した。
あの時と同じ姿で…

「沙也加…」
「エド。ちょっと緊急事態なの。力を貸して。」

そう言って近づく彼女に手を伸ばし、抱き締める。
あの子の力によって受肉された身体であるが…魂は彼女のまま…

そっと頬に手を伸ばし、唇を奪う。
何か言いたげにしたが…素直に口を開いて受け止めてくれる。
彼女の口内を蹂躙して、その先を…

トントン背中に回されていた手で叩かれる。
今はそのまま流されてはくれないようだ…

「ん…はぁ~~~。もう!今はまだダメ。嬉しいけど、こんなことしてる時間ないの。また今度…ね!」

そう言って、腕の中から逃れられてしまった。
残念…

「あの聖女、愛…いゃ、アイと言った方がいいよね。あの子のせいで、カルロスの立場がかなり困ったことになっているの。大体、浄化の際にあの子の体を媒体にして、しかも力まで奪って使い捨てにするように酷使しておいて、役ただずのレッテル貼ったうえに、更なる悪態をついてくるんだから。しかも、あの子の運命の番であるジャディール•アステードに手を出そうなんてね。あの子が描いていたノートにもそれっぽい事は書いていたけれど…」
「ん?我が甥っ子がノートに何を書いていたって?」

『あっ、しまった…』そんな表情をしている沙也加。その表情も可愛いけれど、それはとても大切な情報なのでは?

「詳しく聞かせてもらおうか?」

そう言ってまた腕の中に閉じ込めて問いただした。

問いただした情報には、驚きの事実があった。
運命の子である彼は、妻が言うには『転生者』。この世界で知識を持ったままの生まれ変わりではなく、彼女がいた世界と類似した…今回召喚された聖女がいた世界からこの世界に転生してきた者だと判明した。

『今回の聖女と同じ異世界』と感じた沙也加からの情報と、子飼いが集めてきた聖女の行動と言語からだ。
もしかしたら沙也加と同じ異世界かも知れないが…彼女の知らない情報が多く、別次元もしくは別の時間軸なのかも知れない。彼女が言う『ゲーム』や『アニメ』が何かはよくわからなかったが、この世界のボードゲーム等とは異なるものだとは理解できた。彼女がいた世界では、甥っ子がノートに記載していたような『ゲーム』『小説』『アニメ』の内容は公開されていなかったらしい。
何ともいえない…理解に苦しむが、そこは何とか無理やり理解することにした。


更なる気合いが必要だ。そして、十分すぎるぐらいに準備をして対応していく必要性がある。

「なるほど…」

そう呟いてから、彼女に新たに得た情報などからも考えられること。そして、対応について伝えていった。
彼女はあまり時間がないのか、子供達に会う事もなく急いで戻っていった。

子供達は、前回も会えずに残念がっていたけれど…
また拗ねたり文句を言ってくるだろうが…取り敢えず、全ての内容を簡素化させて魔法陣に織り込み子供達に送った。
案の定、文句の返事が返ってきたのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...