異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

未来のために

未来のために

「父上…」

愛しい妻の身体を抱きしめて、そっと準備された台の上に寝かせる。

この世界の二神の力を十分に注ぎ込んだ神殿。
そして、もう一人の神に守護の結界を上書きして頂いた。

自分の全ての知識を行使して、神殿内にあらゆる魔術を発動もさせた。

「母上は…」
「あぁ、たかだか数十年だ。もう少ししたら生まれてくる運命の子。その子を守るように、護るようにして私達の元に戻ってくるよ。今度こそ、あの神にはこの世界から去っていただく。そして、望む未来を…」
「父上、その従兄弟どのが生まれたら、私は全力で応援します。協力いたします。」
「私も、父上や姉上達に協力して、母上を取り戻します。家族みんなでこの国や世界を…」
「俺もだ。母上の願いは必ず叶える。叔母上には秘密という事も守る。元魔塔のクズは、見つけ出して…」

横たわる沙也加。
まるですぐにでも『おはよう』って言いながら笑顔で起きてきそうだ。

それが今でない事は十分理解しているし…

「お前達は、それぞれする事を頑張って欲しい。私は沙也加の(身体の)側にいるから。」

それぞれの部下や侍従達に指示を出す。
子供達は、城や魔塔に戻った。

「沙也加。起きたら…覚えておいてね。この私にこんな思いをさせるのだから…」

そう言ってそっと唇を重ねた…




それから二十年後、運命が回り出す。
運命の子はこの世に生まれた。
未来視のように、あの国の現王弟であるジャディール•アステードの運命の番として。
そして、神々の力で…不思議な運命を歩むことになる。

神から与えられた力で、運命を切り開く。
その一部として、彼女、愛しい沙也加が霊体としてその子の守りについた。
その子、義妹ユウリの子としてこの世に生を得た、カルロス•セイクリオンの英霊召喚に便乗して姿を現し、カルロスを守護するものとして。
あの時見た未来視とは、やや違う事柄も多く見られた。
まぁ、あの未来視で見たものにも多くに選択肢があったのだ。多少の誤差はある。
それらの情報は子供達や子飼いの者達から得ている。
それを踏まえて…

私は彼女の身体を守るためにここから離れる事ができず、魔道具である鏡から見守り続けた。
子供達に少しながら協力もしながら…

そうこうする中、あの男の動向を探り…
あの男とは別の、ディアブロが姿を現せた。
あの時の協力者であったあの男はやはり…

そして、彼女は私の元にとりあえず帰ってきた。
今は霊体だけだと…
甥っ子であるカルロスをマスターと呼び、側について守っているとも言っていた。
霊体ではあったが、その子の魔力下での影響だろうか、肉体を持っていた時とほぼ変わらなかった。

ほんのひと時を実感して…
引き留めたかったが、まだその時ではなかったから、腕の中から…
それはまぁ良い。必ず取り戻すのだから。

例の脅威もまた動き出す。
だがそれは想定内。今度こそ…
そう強く心に誓い、そっと彼女の残された身体の頬にそっと触れた。