異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

未来のために

未来のために

それから、月日は過ぎていく。

各国が安定して、魔獣被害も沈静化していき、日々幸せを噛み締めていた。
子供も、三人。
三人とも魔人族であった。

夫となったエドワード・ディールことエドは、皇帝として即位し、共に子育てを楽しみながらも、国政を頑張ってくれた。
そして…
そう、未来視で見た事が現実として…

足掻けれるだけ足掻いてはみたけれど…
うん、もうこれ以上は無理そうだった。

左腕にある呪いが発動の兆しが見え始めた。
だが、これは今発動させるわけにはいけない。
今はまだ…
そう、あの子が生まれてから起こりうる未来に必要だ。
今発動させてしまっては…望む未来を迎える事は…

子供達も大きく育ち、夫は長女セレスティン•ディールに、皇帝の座を譲ることにした。
家族からセレスと呼ばれる娘は『魔人の国』ディール帝国の女帝として即位した。
私の娘。可愛いあの子にこの国の未来を託して。
長男のケインズ•ディールは、セレスの兄であり、魔人族であるから、本来は継承権第一位だったが、皇帝位を拒否して、妹セレスに帝位を押し付けて騎士団団長としてディール国を守ると宣言。末っ子のダミアン•ディールは夫に似てか魔法研究者として研究に勤しみたいと、魔党の長に就任した。帝位拒否して、姉に押し付けんだ。

この辺りも未来視の一つであったから、やっぱりなと言う感じで受け入れた。

「疲れたか？」

左腕の呪いが徐々に体を侵し、体力はごっそりと奪われていた。
彼の魔力でなんとか…
でも、これも時間の問題だ。

「沙也加。」
「エドワード、大丈夫。きっと上手くいくから。だから…ね…」

そっと彼の奴れた頬に手を伸ばす。
魔族の彼と婚姻を結び、可愛い子供を三人も。
子供達の成長もある程度見てこれた。
今後に起こる世界のために、私はこの呪いのせいもあって一度深い眠りにつく。
これは必要不可欠なことだ。

あの時刻まれた呪い。
それは、あの神のイタズラだと言われるかもしれない。

あの時、あの短剣。
あの神はあえてわざと、きわきわで呪いをかけた。
私がその呪いを受けるであろうとわかっていたのだろう。
そう画策したとしか思えなかった。

未来視でも分岐点の一つだったのだけれども…
妹が呪いを背負うと、妹が呪いのために下手すれば永遠の眠りにつく。
それにより、運命の番であり、夫である竜人族のアルホンス•セイクリオンが魔力暴走。
妹を慕っている精霊や妖精といった類も暴走状態に陥り、悪魔降臨を阻止したとしても、結果的にはこの世界が崩壊一歩手前まで陥る。
何故一歩手前なのか。
それは私と言う存在が残されるからだ。
残された私が聖女の力を使い、自分の身体を糊代として世界維持を果たす。

エドワードは私の身体の守り人となり、この世界が大きく変わってしまうと言うものだ。

あの神的には、良いおもちゃを半壊させて満足という感じか…

呪いを発動させずに捉えてアルメルアと共にこの世界から去っていただくのが本当は良かったんだけどね…

それが直ぐに理解できたから、もう一つの選択肢をした。
そう、私が呪いを受ける。

聖女の力と、エドワードの魔人族としての力を行使して…
子供達の成長を無事に見守り、シルメールをアルメルアと共にこの世界から去って頂き、この世界自体を守るために…
訳がわからないのは重々理解できている。
普通なら…
でも、未来視でみたんだ。

妹の子供達の一人、末っ子が…
末っ子と、その周りの頑張りで、最終的には…
そこには、あのディアブロの姿もある。
今は眠りについてしまうが、私だって…


「エド…」
「わかっているよ。きちんと見守る。協力もする。勿論、君の身体も守り切る。奴が狙ってくる可能性だってあったからね。絶対に奪わせないよ。君は私のものだからね。君が望む世界のために。君が僕達のために選んでくれた世界だ。任せておいて。」
「うん、お願いね…」
「ただし、無事に私の元に、私の腕の中に帰ってきたら…」
「うん、その時は、もう離れないよ…」

意識が沈む。
神が破滅させようとかけた呪い。どうにか発動を引き延ばして…
神をこの世界から去らせるために、逆に使ってやると…

あぁ…あの子は…
妹の末っ子。
私にとっての甥っ子。
彼がこの世界に…

そこでぷつんと意識が途絶えた。