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未来のために

未来のために

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相変わらずの綺麗に整った庭園だ。
美しく整っていると思う。
向こうでよくお金を支払って入る庭園のように、薔薇が咲き乱れているところもあれば、憩いの場のように噴水やベンチのようなものもある。
白い石畳を歩きながら、花々を愛でていく。

向こうの世界にあった桜や金木犀とかあれば良いなってふと思った。
春の桜が咲き乱れているのを見るのが好きだった。
金木犀の香りも…

「サヤカ様。こちらの方に行かれませんか?きっとお好みのものがありますよ。」

そう意味深あ事を言って案内してくれる。
この庭について偉く詳しい。
扉が閉まるまでは、ほぼ一緒に行動していたはず。それに彼女の母国はここではなかったような…

「サヤカ様がお目覚めになられたら、ぜひ心休まるように案内したいと思い、しっかりと散策させて頂いきました。後、神から聖女達が住まわれた世界の木を賜りまして、陛下の許可のもと育てさせていただいたのですよ。」

そう言って案内されたのは、少し小高い場所にある…

「……」
「神から『桜』とお聞きしました。後、あちらに『金木犀』と。」

この世界では、向こうの言葉が聞き取りにくく、発音しづらい事もある。私の『沙也加』が『サヤカ』となるように。だが、この神から賜ったと言われる木々の名は向こうと同じ発音で…

「神が教えていただいたからかもしれませんね。」

そう言って、エレンが楽しそうに話してくれた。

「そうそう、妹様も半月前にお目覚めになられたようですよ。お二人が扉が閉じた後で意識が途絶えて倒れられた時には驚きました。エドワード殿下もそうですが、アルホンス様も真っ青な顔をされてそれぞれを抱き抱えて大変でしたよ。」

どうも、私達二人はあの後意識が落ちて、お互いの伴侶に抱き抱えられて城に戻ったようだ。
妹の伴侶であるアルホンスは、扱いが難しい転移魔法を行使して自分の国の領土に戻ったようだ。
連れてきていた騎士達は急ぎ竜体で飛行して行ったらしい。
うん、壮絶だね…
見たかったなぁ…竜人が一斉に竜体になって飛び立つ姿。
きっとかっこいいと思うよ。

エドワードも転移魔法を使って私を城のあの部屋に連れ帰ったみたい。
兄君達を使って医師や魔塔の者達。神官職なども呼んで大騒ぎだったようだ。
原因は、意識が途絶えて倒れた事もそうだけれど、きっとこの左手に刻まれた刻印。
扉を閉じる時に発動した呪いのせいだろう。
これがいつ発動するのかは、実際はわからない。
知っているのは…未来の…

あの時取り逃したもの達が引き起こす事を阻止すれば、きっと消えてその後はハッピーエンドを迎えれるずだ。
それを目指そうと決めたのだから…

そっと刻印を撫でる。
時に凸凹しているわけでも、痛い訳でもない。
いつもの自分の肌に残っているだけ…

「これをつけませんか?」

そう言って渡されたのはロングの手袋。
よく貴族とかは手袋をしているイメージがあるけれど、この世界にはそれがなかった。
誰も使ったのを見たことがない…

「これも神から授けられました。」

そっと受け取り、手袋をつけると、肘の近くまであった。
白いレースのようだが、伸縮性もあり、滑らかで着け心地も良い。
手首のあたりに不思議な刺繍がされており、そっと触ると…
指先が出た…
「えっと??」

不思議なものですね。お食事をされる時に重宝しますね。

もう一度刺繍を触ると、指先まで覆う形になった。
不思議だ…
これも魔法陣なのだろうか??

まぁ、皆んなにあの痣のような刻印が見られないのは良いだろう。
気持ち悪がられるかもしれないしね…

サワサワと葉が揺れる。
あの神々は本当に不思議だった。
神は勝手気ままなものなのかも知れない。
だけど、せっかく縁を結んだこの世界の人たちが不幸になるのは嫌だと思う。
後、妹が幸せに…

「会いたいな…」

向こうの世界にいた時と姿が変わってしまった妹。
あの子もこの世界の者と大きな縁を結んでしまっている。

まぁ、あの伴侶が守り通すとは思うんだけれど…
でも…

後に起こる事を考慮して、自分なりに対処準備をしていこうと心に誓った。
例え神の意に従わない事態になっても…
場合によっては、神を使う事も…

「そろそろ戻られませんか?」
「そうね、うん、帰ろう…」

元きた道を戻り、自分の部屋へと歩いて行った。


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