異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

未来のために

未来のために(エドワード)

「やっぱり残ったね…」

そっと上掛けから出した右手を見てそう呟く。

「この呪いの痕はこれ以上は薄くできなかった。私も、魔塔の者達にもどうにか出来ないかと試してみたが…解除できなかった。できらのは、少しだけ薄くしたぐらいか。このぐらいなら、薄手の服でも分かりにくいであろうぐらいに…」

自分の魔力でどうにも出来ず、魔塔の者達にも診せた。神殿の者達にもだ。
どうにか抗えないかと、あらゆる事を試すも、呪いの解除はやはり出来ず、唯一痣をうっすらと薄めただけだった。

そっと撫でて、唇をよこす。

「ちっ…ちょっと～」

彼女が恥ずかしさで手をすっこめようと動かすも、しっかり捉えておく。

「君たちのおかげでこの世界の脅威は一旦さった。残念ながら全て去ったわけではないが…それでも、ありがとう。心より感謝する。」

そう言って、感謝の意を示した。
残念ながら、あの神は取り逃したが…
あの時見た未来視の一つの通りに。

「そうだ。あの子は？優里は？妹はどうなった？今どこに？そうそう、ここはいったい？？」

そう言いながら、慌てて身体を起こそうとするから、彼女の背にクッションを敷き詰めていった。
余り無理はしてもらいたくないが…

「あぁ、ユウリは彼の国に共に帰ったよ。彼女も倒れたからね。急いで転移を二人だけ。他の者達もだ。ディアブロはどこに行ったかわからない。挨拶はしてくれたんだけどね。また会いに来るとは言っていたが…すぐでは無さそうだ。何年誤解何十年後って感じだった。」

「そうなんだ…」

あの男は不思議な雰囲気を持つものだった。謎が多い。だが、敵ではない事だけは分かっていた。
この先未来にまた会える。多いにそんな気がしてならない。
未来視でも見えていたし…それよりも…

「ついさっき、伝達魔法陣跡で、ユウリが目覚めた事も、体調が大丈夫な事も伝えてきたから、大丈夫だろう。こちらからも随時送っておいたからね。」

「ありがとう。そっか…で、ここは？」
「ここは、我が国の皇太子妃の部屋だ。隣は私の部屋。」
「えっと？？」

「ん？私の妃になってくれるんだろ？もう既に各国にも知らせておいた。君が目覚めて体調が整い次第婚姻式だ。まぁ、既に…」
「既に何？？」
「えっと…怒らない？」
「怒る様なことしたの？」

彼女の声が低くなる。まぁ、計画的犯行というか、もう囲っておいたし、すでに了承の言質は取っておいたのだが…

「仮の婚姻の書状は…提出した。」
「えっと？？」

『どういう事？』と呟く彼女。異世界からこの世界に来た彼女がこの世界の事を知らないのも当たり前。だから、言質は取っておいていたが、自分自身がサインしていないから不思議に思っているのかもしれない。
過去の聖女の記録にその様な事が記載されていたものもあったからな…

「私のサインと、君の義理弟になるアルホンス•セイクリオンのサインと、特別に『ヒト族の国』ロザリアン神聖国　皇太子フェリックス•ロザリアンのサインを頂いた。アリホンス殿は既にユウリと婚姻しているからもう君の身内。親族扱いだ。しかも高位貴族で公爵家の当主。そして、ロザリアン神聖国は君達をこの世界に召喚した筆頭国。その皇太子であるフェリックス•ロザリアンは浄化巡礼などに関しても全て任されているからね。彼らのサインがあれば仮婚姻届は受理される。」

「えっと…」

一気に畳みかけてしまおう。

「うん、君が想像している婚姻と同じ感じかな。だが、私は君を愛している。もう逃がしもしないし、奪われるつもりもない。それがたとえ君でもだ。もう諦めて？」

最後は彼女の好む笑顔で誤魔化した。撃沈した感じもかわいいね。
もうしっかり捉えさせてもらっている。
まだ油断できないけれど…逃さないよ。

「このまま君が眠りにつく様だったら、わたしが君に手をとって書かせるつもりだった。そこに血判を押せば仮でなくなるからね…」

「あ～～～…………、わかった。わかりました。もう、サインでも何でもするわ。その代わり…どんな運命を選び取っても守ってね。側に…出来たらいて欲しい…」
「うん、わかった。どんな事でも全力で守るよ。この呪いのせいでどうなるのかは…全ての文献を調べ上げて、神に願って、出来たら啓示をいただくよ。」
「うん、お願い…」

もう良いよね。このまま魔力譲渡で癒しながらなら…
そう考えにいたり、彼女の美味しそうな唇をむさぼることにした。

そうすると、彼女の雰囲気が少し変わる。
全てを許してくれそうだ。ならばと、愛し尽くす事に舵を切った。