異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

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扉から(エドワード)

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『そのまま閉めよ!我が力を貸す!!』

頭の中で声が響く。
この声は…あの時会った…

『このアルメルアが力を貸す。しっかり踏ん張って閉めるが良い!』

姿は見えないが、何となく彼女達の背後に存在している気配を感じた。
背後にアルメルア神が存在して、二人に力を分け与えているようだ。

ギギギギギッ

そのお陰か、びくともしなかった扉が、まるで錆びついた鉄の扉を閉めるような音を鳴り響かせて閉まっていく。
だが、後わずかという所まで締め切った所で、向こうも扉から出たいのか、急に悪あがきのように腕が出始める。

「また出てきた~~」
「引っ込め!!」

彼女達二人でガンと閉め切り、一部千切れた腕が下でピクピク動いていた。
何とか閉じられた~
一瞬ホッとするが、次が…
この方法しかないのは理解できている。
あの時見た多くの選択肢の中で唯一の…
だが、自分としては、してもらいたくないもの…


『ユウリ、鍵を挿すのじゃ!』

アルメルア神がユウリに指示し、彼女の掌から剣を具現化される。
あの小さな剣が、この扉の鍵だと理解している。
だが…
短剣を取り出して鍵穴に差し込もうとした時、見えてしまった。
そこから伸びる不吉なもの。
枯れた枝のような、蔓のような…
見ようによっては腕のような物が…
あれは、呪い。さっきアルメルア神と攻防していた対の神が扉に施したもの。
アルメルア神が対の神を捉えようとして、対の神が逃れるために施して行った。
あの呪いを解かなければ、あの神は捕えることができない。
どのようになっているのかはわからないが…

「ユウリごめん!!」

ユウリが握りしめていた手を沙也加叩いて短剣を下に落とす。
あの映像と同じ。
ここが分岐点であったが、やはり沙也加はこっちを選んだのか…

未来視で見たものを思い出す。
妹のユウリが鍵としてアレを挿し入れたらどうなるのか…
愛しい沙也加がやれば…
この二人のどちらかでしか出来ないこと。理解しているが、だが…

「沙也加!ダメだ。俺がやる!!」

沙也加の背後に剣を杖のようにして立った。
彼女より先に…

だが、沙也加は急いで転がった短剣を取り、あの時見た映像のように自分の手を傷つけて血を纏わせてから、思いっきり挿しこんだ。

ガチャンと鍵が施錠され、伸びてきていた蔓のような物が、沙也加腕に絡まっていく。

「ウッ…アァアアアアアアアアアアア!!」

彼女の魔力が勢いよく流れ出ていく。
巻きついていたものの先端が彼女腕に食い込んで…

抱きしめて彼女が魔力枯渇を起こさないように送り込む。
片手で剣を握りしめて、食い込んだ蔓を切り離そうとするが、切れない…

バチバチバチ

いきなり火花が散って、彼女に絡みついていた物が黒く燃え、粉々になって消えて行った。

「大丈夫ですか?」

燃やし切ったのは、ディアブロだった。
そして、シルバーが小悪魔を蹴散らしていく。
彼らの抑制が取れたようだ。
抑制したのは…シルメール神。
既に何処かに消えたようだ。気配がしない。

「チッ…逃したか…」

そう小声で呟き、そのまま彼女を抱きしめて魔力を流し込んでだ。ユウリは呆然と座り込み、アルホンス殿が抱き上げていた。他の者達は周りに飛び交う悪魔を寄せ付けないようにしながら討伐中。

「あぁ、何とか扉は閉じたようです。ですが…今はとにかくこれらを片付けましょう。ユウリ様、サヤカ様を連れて一旦下がりましょう。手当が必要ですから。エドワード様もアルホンス様もこの階段は崩壊しますから、降りながら討伐していきましょう!!」

ディアブロが無茶振りな指示を出し、それが今の最善と素直に従うことにした。
もちろん、愛しいものはお互いの伴侶となる者の腕の中に閉じ込めるようにして守りながら。
彼女は、かなりの苦痛か、冷や汗をかきながら腕を抱え込んでいる。少しでもと癒しの魔法もかけ続ける。
次第に彼女の意識が落ちていくのがわかった…
意識が落ちるのは、多少緩和してきたのか?
そっと顔色を確認するように覗き込み、とにかく急いだ。


『サヤカ。よくやった。が、残念だがあやつを取り逃してしもうた。』

悲しそうに響く声…
予測はしていたが…

なら、次に起こりうる事に対して最善を尽くそう。
とりあえずの最悪は免れのだから…

必ず、次こそ…
そう心に誓った。
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