異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

扉

障壁の向こう

準備が整ったからと、障壁に向かう事になった。
馬車で向かうのかと思っていたけれど、そこは馬なのね。

この世界で言う馬。
向こうの世界にはあり得ない、この世界ではお馴染みのユーデルという種類だ。
今目の前にいるのは、黒毛と赤毛の馬に翼が付いてて、額にツノが二本ある。

多少の乗馬訓練されてもらったけれど、ゆっくり散歩ならなんとか乗れるけれど、本格的に走らすとしたら…自信ない。

「サヤカ。こっちに。」

そう言って引き上げられた。

「うわっ…」

「くくくっ、大丈夫だから、大人しく。」
「そんなこと言ったって！！」

引き上げた腕はすでに私を支えていた。
器用な手綱捌きだ。でも、びっくりしたんだから仕方ないと思うよ！

「じゃあ、行こうか」

そう言うと、馬をかけさせた。
オーリスもキャラハンも同じようにかけさせた。
この二人、エドワードの兄であり、皇子であるが、聖女様に殿下呼びされるのは恐縮だと言って、呼び捨てでと言われてしまっていた。

他にも数名の騎士がついて来たけれど…
思っていたよりも少人数で驚いた。

ロザリアン神聖国とかではもっと多くついて来てたけど、これだけで良いの？

「我が国は魔人族が多いから、ヒト族と比べて多くの護衛を連れて行く事は少ないんだ。魔獣討伐や扉の方に配属させているのもあるがな。」

私が不思議に思ったことを直ぐに悟ったのか、エドワードが直ぐにそう教えてくれた。

「サヤカ、少し目を閉じて。」
「えっ？」
「大丈夫だから、目を閉じて。」

そう言われて、素直に目を閉じる。
背後で歌うように呟くエドワード。
身体に感じていた風が、一瞬…

「もう大丈夫。目を開けていいよ。」

香るのは磯の香り。
そして独特の…

目の前に広がるのは、そう、海だ。
日本海のような荒々しい感じではなく、穏やかに見えた。